<閉校覆した中学生>(4)「逃げ恥」恋ダンスにオタ芸 文化祭本番、照れがない後輩たちに驚き

文化祭の劇中で侍を演じる生徒たち。照れは感じられない
文化祭の劇中で侍を演じる生徒たち。照れは感じられない
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一心不乱にオタ芸を披露する生徒
一心不乱にオタ芸を披露する生徒
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力強い太鼓を披露する佐志生地区の代表
力強い太鼓を披露する佐志生地区の代表
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下ノ江地区のメンバー。記者の同級生の桑野さんは左から6番目、センターで歌っていた
下ノ江地区のメンバー。記者の同級生の桑野さんは左から6番目、センターで歌っていた
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笑顔の絶えない文化祭
笑顔の絶えない文化祭
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クイズ大会では、正解発表に一喜一憂
クイズ大会では、正解発表に一喜一憂
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クイズ大会では小坂校長(左)がインタビュアーを務めるなど、生徒も教職員も総動員
クイズ大会では小坂校長(左)がインタビュアーを務めるなど、生徒も教職員も総動員
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 11月19日土曜日、午前9時の体育館。豊洋中学校最後の文化祭が始まった。教室などで撮影されたオープニングムービーで、11人の生徒はもちろん、教員も全員が紹介された。校内のイベントで映像を多用するのは今風なのだろうか。バックに流れるのはバンド「Alexandros」の「starrrrrrr」。文化祭にテーマソングを設定し、繰り返し流すのも20年前は考えられない、今っぽさだ。

 オープニングは生徒による和太鼓の演奏。続いて文化祭実行委員による開会宣言や、実行委員長のあいさつなど。冒頭15分ですでに生徒の半数がステージに立った。客席は最前列に3年生、その後ろに保護者、さらに後ろが一般席。高齢者や幼い子ども連れ、20代ぐらいと思われる卒業生の姿もあり、一般席は朝から50人近くの人出。徐々にパイプ椅子が足りなくなり、追加された。

 国語や英語の弁論ののち、最初の目玉と思われる、クラス全員登場の劇が始まる。冒頭は11人が席を並べた教室での、最後の文化祭に向けた準備の様子。「絶対成功させようね」とのせりふも。実話に近い話が描かれるのか、と思いきや、江戸時代にタイムスリップして、伝統の「豊洋ダンス」を侍に習うというストーリー。うーん、あんまり脈略がない。そもそも、そんなダンスとか、伝統があったっけ? 私が思い出せないだけかもしれないが。

 演じている後輩たちには、あまり照れが感じられない。「エトウさんだぞ!」「俺たちゲーマー3人集」「どすこい!どすこい!」。時折、生徒の個性を生かしたような、ギャグが入る。自分が中3のころにやれと言われたら、ものすごく恥ずかしかっただろう。

 劇の最後のシーンで、「伝統」のダンスを披露。一目見て思わず吹いてしまった。どこかで聞いたことのあるイントロ。力の抜けた星野源の歌声。完全にテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の「恋ダンス」だった。どこが伝統なんだ…。男子も女子も、全員がリボンを頭につけて踊る。ノリノリの男子もいる。自分なら、あんなに踊れるだろうか。後輩たちよ、本当に照れとか、無縁なんだね。

 男子生徒の中には、ソロダンスを披露するつわものも。「和楽器バンド」のアニメソングに合わせて、1人でサイリウム(ケミカルライト)を一心不乱に振る。踊りながら、色違いのサイリウムを折って持ち替える。交換もスムーズだ。いわゆる「オタ芸」だが、相当完成度が高い。インタビュアーの生徒から「苦労したところは」と聞かれ、「(サイリウムを)いっぱい買ったので、お小遣いが少しなくなったところ」と大人たちの笑いをさらりと誘うところも、なんだかスマートだ。時代は変わったなあ。

センターで歌う、記者の同級生

 体育祭など他の行事と同じように、文化祭も当然のごとく、住民の活躍の場になっていた。中学校の校区の北側に位置する佐志生(さしう)地区は、閉校していく学校に感謝の気持ちを込めて、OB4人が力強い「佐志生太鼓」を演奏。校区南側の下ノ江地区は、有志の男女が正装し「ふるさと」など合唱3曲を披露した。冒頭、歌とピアノのテンポが合わず、やり直しになったが、指揮者が「これもプログラムの流れです」とのアドリブで笑いが起こる。この日は学校に子どもを連れてきている教職員もおり、親子で笑顔が絶えない。本当にアットホームな文化祭だ。

 下ノ江地区のメンバーには、私の同級生の姿もあった。フェイスブック投稿で、この文化祭の取材のきっかけをくれた、臼杵市職員の桑野竜永さん(35)。
 「(合唱の)事前練習のために音楽室で歌った時に、中学時代のことをいろいろ思い出したわ。夏休みの暑い日に登校して、音楽会のために練習したこととか」。あー、それ私も行ってました。

 「閉校については、意外と悲しかったりとかはないんよね。多分、地域にまだ下ノ江小学校が残ってるからやと思う。今の3年生には、少人数学級でしか味わえなかった体験で感じたことを大切にしてほしいわあ。これから、高校で荒波にもまれるやろうし」。先輩としての忠告だった。

 文化祭の後半には、地域住民を楽しませるクイズ大会が、突然始まった。「分かった人はAからDまで、それぞれの(選択肢の)前に並んで下さい」。生徒に交じり、先生もアルファベットを掲げている。校長先生も登壇し、出題をしたり、正解者へインタビューしたり。生徒も教職員も総力戦だ。「(正解して残って)恥ずかしいんやけど。早く外れたいわ」。律儀に回答を続ける男性は照れながらも、どこか楽しそう。ほほえましい光景だった。

 そんな地域の人々を前に、文化祭の最後には生徒11人が壇上に整列し、決意表明した。

「きょうはお忙しい中、足を運んでいただき、本当にありがとうございました」
「11人でどうやって文化祭をつくるか、とても不安でした」
「でも、たくさんの方のおかげで、この文化祭をつくりあげることができました」
「豊洋協奏曲(コンチェルト)、奏でろ11人の音色」
「地域の方、保護者の方、先生方、そして11人」
「みんなで一つになって奏でることができました」
「私たち11人、残り少ない中学校生活を」
「豊洋中学校最後の生徒としてプライドを持って」
「精いっぱい、がんばります」
「これからも引き続き、応援よろしくお願いします」
「今日は本当にありがとうございました」

11人が深々と礼をすると、大きな拍手が送られた。楽しそうに会話しながら会場を後にする住民たち。生徒たちももちろん、笑顔だった。

一人のOBとしては、少し寂しい気持ちもあった。ただ、体育館を後にする時には、温かい気持ちになれた。そんな取材だった。中学校を卒業して、社会に出た彼らにいつか会って、あらためて聞いてみたい。

「あの時、11人だけで学校に残るのを選んで、良かったことは何ですか?」。(三重野諭)

 閉校式の参加呼びかけ 豊洋中学校は、来年3月19日に同校の体育館で開く、閉校式への参加を募集している。卒業生や地域の関係者ら、誰でも当日参加できる。午前10時半から午後2時ごろまでの予定。午前は市教育委員会主催の式典、午後からは閉校実行委員会主催の式典がある。簡単なオードブルの昼食も準備している。

=2016/12/07付 西日本新聞=

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