切断障害者、生きがいだったサッカーと再会 アンプティのいぶし銀、3度目W杯狙う

つえを支えにシュートを放つ野間口さん
つえを支えにシュートを放つ野間口さん
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アンプティサッカー選手兼強化委員、野間口圭介さん(44)=福岡県宇美町

 片脚や片腕を切断、もしくは先天的にない人たちがプレーする「アンプティサッカー」の世界で、いぶし銀の輝きを放つ存在だ。昨年11月の同サッカー日本選手権決勝。2本のつえを使って体勢を整えながら、味方のパスを右足でピタリとトラップ。正確なキックで貴重な先制点を奪った。九州を拠点とする強豪クラブ「FC九州バイラオール」の主力として、2年ぶりの優勝に貢献した。

 34歳で左脚を切断する前から、サッカーは生きがいの一つだった。福岡県志免町の小学校のクラブ活動で「敵や味方の動きを見渡して、パスを通すのが喜びだった」。サークルなどで毎日のようにサッカーに明け暮れた大学4年生のころ、左膝に骨のがんと呼ばれる骨肉腫が見つかった。死の恐怖もよぎる中、その年に膝周辺の骨を摘出して人工関節を入れた。その12年後には左脚を切断して義足を着けた。2度の手術の前に抱いた「サッカーができるようになるかも」というかすかな希望は、いずれも打ち砕かれた。軸足は安定せず、義足は歩くのも苦痛だった。「もうキックができない」。

 15年間遠ざかっていたサッカーとの“再会”は2011年。新聞記事でFC九州の結成や競技について知った。試しにつえをついてボールを扱うと、思った以上に動けた。FC九州の試合を観戦しパスをつなぐ鮮やかさに魅了され、チームに加入した。つえの動きを普段から身に付けるために、飯塚市の職場に義足を外して通うように。切断した左脚を恥ずかしい、隠したいという気持ちもなくなった。

 12年のデビュー以降、相手ゴール前で隙をついて得点したり、敵のエースを守備で封じたり、「いやらしい選手」として活躍を続ける。日本代表にも選ばれ、ワールドカップ(W杯)に2度出場。自らの2ゴールで強豪トルコ戦の勝利の立役者にもなった。

 「強豪国は健常者と戦っているような強さだった」。世界との差を埋めるために週2回、志免町にある健常者の社会人チームの練習に交じる。国内大会や代表を運営する「日本アンプティサッカー協会」からは後進育成でも期待されており、競技力向上策を考える協会の強化委員5人のうちの1人に就任した。「選手人口の拡大に貢献したい」としつつも、今は現役にこだわる。「3度目のW杯代表になり前回を超える4強を狙いたい」。10月にメキシコで開幕予定の舞台に立つことを渇望している。 (三重野諭)

=2018/01/21付 西日本新聞朝刊=

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