性暴力の実相(4)ネット 画像、一度載せると

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 福岡県内に住むケイコさん(19)=仮名=は高校生だった2年前の8月、インターネットの匿名掲示板で、山口県防府市に住む派遣社員の男(28)と知り合った。ネットのテレビ電話「スカイプ」でやりとりし、しばらくして、こう持ちかけられた。

 「アニメのキャラクターのコスプレをしてくれない? 電子マネーを1万円分あげるから」

 それを引き受け、報酬を受け取ったケイコさんは約束を守らず、そのまま連絡を絶った。「身元はばれない」と思っていた。

 だが、甘かった。ケイコさんについての情報を求める書き込みがネットにアップされるとともに、過去のネット上の会話なども徹底的に調べられた。

 この年の11月、男から来たメッセージには、ケイコさんの実名や大まかな住所などが書かれていた。「これ、ばらすぞ」「(許してほしければ)50万円払うか。それとも奴隷になるか」

 怖さに加え、電子マネーの件の負い目もあったのだろう。ケイコさんは連絡を取り、スカイプで命じられるがまま、裸になって動画を録画された。脅しはエスカレートし、次は裸の保存動画を材料に性行為を迫られた。ケイコさんは昨年3月、警察に駆け込んだ。

   ◇    ◇

 男は昨年11月、強要などの容疑で逮捕され、有罪判決を受けた。同じ手口で20人以上の少女の動画を入手、拡散させており、ネット仲間から「カリスマ」と呼ばれていたという。

 ネットには、過去に流出したとみられる女性の画像や動画があふれている。全国webカウンセリング協議会(東京)の安川雅史理事長は「拡散すれば完全消去は不可能」と言う。

 安川氏によると、プロバイダー(接続業者)やサイト管理者に要請すれば削除でき、検索できなくすることはできる。ただ、その数から、全てに削除を求めるのは事実上不可能。海外サイトならば、法律や言語の違いもある。消しても、画像などが再度アップされれば、振り出しに戻る。

 「少女たちはネットの世界で、素性の分からない男と安易に交流を始めてしまうが、実際には現実社会よりも危険だ」。捜査に携わる福岡県警サイバー犯罪対策課の的野史孝課長補佐の実感だ。

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 「セックスのビデオを売る。許可してほしい」。10年ほど前、関東に住む30代のハルカさん=仮名=の勤務先に、突然手紙が届いた。悪夢がよみがえった。

 学生時代のこと。初めて交際した相手に「1人の時も楽しみたい」と性行為の撮影をせがまれ、好意から許した。後に別れを切り出すと、男の態度が一変した。侮辱するようなメールを何度も送り付けられた女性は、メールアドレスや住まいを変え、逃げ切ったはずだった。

 思い当たったのはネット上の就職情報サイト。勤務先を紹介するために登場し、実名も写真も掲載していた。「また付きまとわれる」と怖くなり、退職した。

 「ずっと隠れて暮らさないといけないのか」。ネット社会の怖さが今はよく分かる。

◆児童ポルノ摘発1248件

 警察庁によると、少年少女の裸の画像などをインターネットに流出させたなどして、2014年に摘発された児童ポルノ事件は全国で1248件。09年(507件)の約2・5倍にまで増えた。元交際相手などの画像を公開する「リベンジポルノ」の被害相談は、リベンジポルノ防止法が施行された昨年11月末から同12月末までで110件。被害者の約6割は20代以下だった。

◆性暴力の証拠、民間が管理 大阪府が制度化

 大阪府は、性暴力を受けた女性から採取した加害者の毛髪や体液を、病院内にある被害者支援団体に保存してもらう制度をスタートさせた。事件直後には、警察への相談をためらう人が多く、将来、警察への被害申告を希望したときに証拠物を提出できるようにするシステム。証拠物を警察以外で管理する制度を整えた自治体は全国で初めて。

 大阪府によると、被害者が協力病院を受診した際、警察に届けない意思を示しても、同意を得て体液や毛髪を採取。阪南中央病院内(大阪府松原市)にあるNPO法人「性暴力救援センター・大阪」が一括保存する。後で被害者が刑事告訴などを希望した際に警察に提出する。

 制度は、7月からスタート。現時点で協力するのは8病院で、証拠物の保管に被害者の金銭的負担はないという。警察や検察と作成したマニュアルに従って厳重に保管し、証拠能力を担保する。

 被害者から証拠を採取できるのは事件後3~5日とされる。性犯罪の捜査では、加害者の遺留物のDNA型が有力な証拠となるが、被害者が警察への通報をためらい、証拠が乏しくなるケースが多いという。2014年度に内閣府が行った「男女間における暴力に関する調査」によると、被害者117人のうち、警察へ届け出た割合はわずか4・3%にとどまっていた。

 大阪府は「制度を活用してもらうことで潜在的な被害者の救済につなげたい」と強調。協力医療機関も増やしていきたい考えで「他の自治体にも参考にしていただければ」としている。

=2015/09/01付 西日本新聞朝刊=

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