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性暴力の実相・第2部(3) 過激なAV「お手本」に

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 強制わいせつの常習犯だった10代後半のシミズ=仮名=が“お手本”としたのは、アダルトビデオ(AV)だった。

 見始めたのは中学生のころ。女性が男に襲われる過激なビデオに、すぐにのめり込んだ。「暴力的でも女は実は嫌がっていない」「撮影した監督も捕まってないし、同じようなことをやっても大丈夫なはずだ」。現実と仮想の世界の区別がつかなくなっていった。
 
 九州の地方都市に住むシミズは、深夜、親の目を盗んで家を抜けだし、一人歩きの女性を尾行。人けのない場所で、背後から抱きつき、体を触って逃げた。繰り返すうちに逮捕され、少年院へ。今年、仮退院した。動向を見守る保護観察官は言う。

 「AVに触発されたと言うのは彼だけではない」

 作品のまねをして、電車やバスで痴漢をした少年。無職で日がな一日、過激なAVを見て、女性を次々に襲った20代の男。「AVが性犯罪のリスクを高めているように感じる」。観察官は顔をしかめる。

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 福岡市都心部にあるアダルトショップの一角には、女性を力ずくで襲ったり、虐げたりする作品が並ぶ。店によると、毎月の売り上げのうち、約3割をこうした作品が占めるという。

 東京のAVメーカーは、作品に臨場感を出すため、実際の犯罪を参考にしていると打ち明ける。「『女性を襲いたい』という欲求に応えようと“現実”に近づけている」と説明する。

 ただ、これが性犯罪を助長しているとの指摘には「顧客の欲求を発散させている。むしろ犯罪の抑止に役立っている」と反発する。

 福岡市のAV観賞施設から出てきた60代男性も「月に2、3本は暴力的なAVを見るが、フィクションと分かっている。理性があれば大丈夫」。作り手側に問題はないとの立場だ。

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 犯罪とAVの関係性を示す一つのデータがある。

 警察庁科学警察研究所が1997~98年、強姦(ごうかん)や強制わいせつの容疑で逮捕された553人に行った調査では、33・5%が「AVを見て自分も同じことをしてみたかった」と回答した。少年に限れば、その割合は5割近くに跳ね上がる。

 ポルノ問題に詳しい中里見博徳島大准教授(憲法)は「女性や子どもを『モノ扱い』する過激なAVは、性暴力を容認する価値観を、見る者に植え付けかねない」と指摘。それらを簡単に見られるインターネットの普及で、危険性は高まっていると警鐘を鳴らす。

 それを象徴するような発言が今年3月、福岡地裁での公判であった。

 「簡単に見られる環境にも問題がある。自分も被害者だ」。女児にわいせつ行為をした20代のアルバイトの男は、高校時代にネットで児童ポルノを見て小児性愛に目覚めたと主張。「環境」のせいにした。

 倒錯した考え方に、性が氾濫する社会の病巣がのぞく。

 AV業界、暴力的表現を自主審査 違法動画がネット流出も

 アダルトビデオ(AV)は、映像倫理機構(東京)などの自主審査団体が審査し、内容や表現などの適法性をチェックしている。「公権力の介入を防ぐためにも、メーカーに厳格な自主規制を求めている」(審査団体関係者)が、過去には撮影時の暴力的な行為が刑事事件になった作品もある。

 関係者によると、主な自主審査団体は五つ。最大手の映像倫にはメーカー115社が加盟、昨年1年で約1万2千作品を審査した。ほとんどの作品で、映像処理を強めるようメーカー側に要求。暴力的表現の場合「実際に行うと犯罪になります」などの字幕を入れるよう求めている。

 2004年には、女性を暴行する作品が問題化。制作会社の社長らが強姦(ごうかん)致傷罪で有罪判決を受けた。事件を受けて暴力的AVの規制強化を求める声が上がったが、実現しなかった。

 性描写と規制に詳しい山口貴士弁護士(東京)は「表現の自由のためにも法規制には反対。自主規制で対処すべきだ」と指摘。販売差し止めは「民事訴訟での対応が望ましい」という。

 近年は、ネットで違法なわいせつ動画や画像が流通。多くは海外のサーバーを経由しており、国内の刑法では取り締まりが難しいという問題も出てきている。

 一般公開される映画は、任意団体の映画倫理委員会(東京)が内容や描写について脚本の段階から審査。内容によって小学生の視聴に注意を促す「PG12」や年齢制限を示す「R指定」をしている。

 ◆AV撮影での人権侵害 アダルトビデオの出演を断った20代の女性が、所属していたプロダクションから違約金2460万円を請求された訴訟で、東京地裁は9月、「本人の意に反して強要できない性質の仕事」として会社側の請求を棄却した。関係団体にも「自分の意思に反して出演させられた」という相談が寄せられており、女性の代理人弁護士は「重大な人権侵害が横行している」と指摘する。

 =2015/11/12付 西日本新聞朝刊=

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