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性暴力の実相・第2部(2) 認知のゆがみが助長

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 九州の地方都市に住んでいた40代のヤマグチ=仮名=は数年前、通り魔的に強制わいせつ事件を繰り返し、懲役10年以上の判決を受けた。

 通りすがりの少女を脇道や田んぼに引きずり込んで、体を触る。女子高生の後をつけ、帰宅した自宅に忍び込んで、わいせつ行為をする。カッターナイフを突き付け、脅す手口だった。
 
 これほどの犯罪にもかかわらず、当初は罪の意識がそれほどなかったという。

 頭の中では、「脅迫」は女性に近づくための入り口で、その後、話して和ませ、口説いたことになっていた。「女性が涙を流して嫌がれば、犯行を思いとどまった」というヤマグチは「(被害者の中には)携帯電話に保存している写真を交換したり、雑談したりして、楽しい時間を過ごせた人もいた」と思っていた。

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 性犯罪者の多くは、女性に対し「認知のゆがみ」と呼ばれる誤った思考を持っているとされる。

 警察庁科学警察研究所で主任研究官を務めた内山絢子目白大非常勤講師(犯罪心理学)の調査では「女性は『嫌だ』と言っても本当はそんなに嫌がっていない」と答えたのは一般男性(対象688人)の2・5%に対し、性犯罪の容疑者(対象553人)は21・1%。10倍近い開きがあった。

 ヤマグチは、若いころにやっていたナンパの延長線上で事件を考えており、震え上がって抵抗できない少女を「自分を受け入れてくれた」と都合良く解釈していた。

 性犯罪で有罪となったのは、今回で3度目。犯罪を繰り返した理由もまた、自分勝手なものだった。「派遣社員として必死に働いていた会社の正社員になれそうになかった」ことを理由に挙げ「社会のやつらは相手をしてくれん。全てが嫌になった」。脅してでも、女性に近づきたいと思い立ったという。

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 「一生刑務所に入れ、私の生活する世界に戻さないでください」-。被害少女やその保護者のヤマグチに対する憤りは激しかった。

 その被害者全員にヤマグチは逮捕後、謝罪の手紙を書いた。裁判を通して、被害者の受けた苦痛を「完全ではないが、理解できたから」という。

 今春、勾留中に1人の女性から返信が届いた。楽しい時間を共有できたと思い込んでいた相手だった。「怖くてたまらなかった。いかに刺激しないで帰ってもらうかだけをずっと考えていた」と記されていた。

 「当たり前ですよね…。当時、どれほど怖かったことか…」。ヤマグチは記者への手紙にそう書き、「被害者のためにも、必ず生まれ変わる」と結んだ。

 その言葉は本物なのか。

 ◆認知のゆがみ 内山絢子目白大非常勤講師の調査では、「女性は襲われたいと思っている」「関係を持てば女性は自分のものになる」「トラブルが生じれば女性は性犯罪と言い立てる」-などの誤った認識を持っている性犯罪の容疑者は多く、一般男性に比べてその割合は7~15倍に上るという。日常生活の中で、自身の行為を正当化する傾向などから生じていると考えられる。

=2015/11/11付 西日本新聞朝刊=

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