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性暴力の実相・第2部(1) 「自分を抑えられない」

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 勤務先は、だれもが知るような大手。周囲から“お堅い”と思われていた男には、裏の顔があった。

 西日本に住んでいた40代のタグチ=仮名=は数年前、アパートの一室に無施錠の玄関から忍び込み、寝ていた若い女性に馬乗りになった。「騒いだら殺す」。女性が抵抗するそぶりを見せると顔面を殴りつけた。凶器を近づけると、女性の体から力が抜けるのが分かった。「これで、この女は思いのまま」。女性のTシャツを顔にかぶせ、自分の顔を見られないようにした。写真も撮った。

 「耐え難い苦痛を与えているときこそが、私にとって至福のときだった」

 タグチには結婚歴があり、子どももいる。堅実な仕事ぶりは、地元の新聞にも取り上げられた。その一方で、同様の卑劣な事件を何件も起こしていた。乱暴し、「記念品」として下着や同窓会名簿などを奪って帰ったこともある。複数の女性への事件でタグチは逮捕され、強盗強姦罪などで懲役20年以上の刑を受けた。今も服役している。

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 タグチは、「ムラムラして」突発的に犯行に走ったわけではなかった。

 仕事を終えると、バス停やコンビニで「おとなしそうな女性」を探し、尾行した。自宅を突き止めると、洗濯物や郵便受けを確認し、家族の存在を見極めた。勤務先や帰宅時間、就寝時間なども把握。少しずつ女性に近づいていくスリルがたまらなかったという。

 そうして完成させた「リスト」には、常に10人以上の女性の名前があった。証拠が残らないよう軍手や目出し帽を準備し、夜が明けるまで、リストにある複数の女性宅を見て回ったこともある。隣人が留守など「絶対に捕まらない」と確信すれば部屋に押し入った。

 「女性を蹂躙(じゅうりん)し、支配することで自分の心が満たされていくのを感じた」。服役中のタグチから記者に届いた手紙には、きちょうめんな字が並ぶ。妻は大事な人で、暴力的な行為はできなかったという。

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 「性暴力が性欲のみで行われるという考えは間違い。女性を『支配したい』『優越感を得たい』などの欲求が背景にあり、犯行のほとんどは計画的に行われる」。こう話すのは、30年以上、性犯罪者と向き合ってきた藤岡淳子大阪大大学院教授(非行臨床心理学)。「快感が伴うため他の犯罪より習慣化しやすく、思春期前から問題行動を重ねている例が多い」とも言う。

 タグチも中学に入ったころから、のぞきを繰り返すようになった。初めて女性宅に侵入したのは就職し、結婚して子どもを授かったころ。「いつか身の破滅につながる」と不安を抱きながら、自分を抑えられなくなっていったという。

 タグチ自らの説明では、両親に大切に育てられ、成人しても仕事や家庭に不満や強いストレスがあったわけではない。女性に対する強烈な支配欲はどこからきたのか、「何度考えても分からない」という。

 「過去のトラウマや衝撃的な体験が原因ではなく個人の意思ではコントロールできないものだと思います」。手紙には女性を思うままにしたい気持ちが今も消えないとあった。

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 性犯罪を防ぐには、どうすればいいのか。連載「性暴力の実相」第2部では、加害者の行動などから、対策などを考えたい。

 ◆性犯罪者が被害者を狙った理由 警察庁科学警察研究所が1997~98年に性犯罪事件の容疑者553人を対象にした調査(複数回答)では、容疑者が被害者を狙った理由は(1)「おとなしそうに見えた(抵抗されないと思った)」37.4%(2)「警察に届け出ないと思った」37.2%(3)「1人で歩いていた」26.5%-の順。「好みのタイプだった」は11.9%、「挑発的な服装をしていた」は5.2%にとどまった。

=2015/11/10付 西日本新聞朝刊=

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