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性暴力の実相・第4部(5)やまぬ不祥事 現場萎縮

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 夕日が差し込む高校の校舎に、管楽器の音色が響いていた。姿を現した管理職の男性教諭は帰宅する女子生徒に「さようなら」と張りのある声を掛け、記者を応接室に招き入れた。若いころ、教え子に性暴力を振るったことがありますね-。教諭は組んだ両手を震わせて答えた。「その事実はございます」

 約20年前。教諭は、この高校の寮で当直勤務に入ると、女子生徒を部屋に呼び出してわいせつ行為をしていた。連載の1回目に登場した教諭だ。「当時は自暴自棄になっていた」。教諭は慎重に言葉をつないだ。家庭のトラブルや職場の上司によるパワハラ。追い詰められてどうでもよくなり、身近にいた生徒に手を出したという。

 「先生だから抵抗できなかった」と被害者は話していた。教諭は、生徒との間にある大きな力の差に考えが至らず、拒絶しないから嫌がってないと思っていたという。「(自分に)ブレーキをかけられなかった」

 問題は表面化することなく、管理職まで上ってきた。「ずっと罪悪感にさいなまれてきた」と言ったが、話を聞くうちに被害者の数は1人から数人に増えた。

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 教え子と恋愛関係にあると思い込むなどして、教師らが簡単に一線を越えるケースもある。

 北部九州にある塾の30代講師は数年前、教え子の女子中学生にわいせつ行為をした。「学校になじめない」と悩みを打ち明けられ、相談に乗るうちに勘違いした。空き教室に連れて行って「好きなんだろ?」「俺はもてるからなぁ」と迫り、体を触るなどしたという。「親に内緒でデートしよう」という内容のメールも送り付けた。気付いた女子中学生の両親が弁護士に助けを求めるまで、被害は続いた。

 福岡県の小学校で校長まで務めた後、不登校の子どもが通う「相談室」の室長をしていた男(66)は昨年末、通っていた少女にわいせつ行為をした罪で有罪になった。男は捜査の過程で「『頑張れよ』と励ます思いからだった」と話した。教師の性犯罪に詳しい東敦子弁護士(北九州市)はため息をつく。「先生は、従順な子なら、目だけで意のままに動かせる。それだけの力を持っていることを認識できない人がいることが怖い」

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 繰り返される不祥事を受け、児童生徒との誤解されるような接触は避けようと、現場は細心の注意を払っている。

 福岡市立小学校の30代の男性教諭は、教室で女子児童と2人きりになることにも気を使う。「水泳の授業で泳ぎ方を教える際に手を握るのも心配。スキンシップで子どもの頭をなでたり、肩に触れたりすることにも躊躇(ちゅうちょ)する」。40代の女性教諭も、児童の体に触れる時は「ごみが付いとるけん、今から取るからね」と理由を必ず伝えるようにしているという。

 可能性や能力を引き出そうと、多くの教師は熱意を持って子どもたちと向き合う。そんな教育現場が、一部の教師の行為によって窮屈になっていく。

 法制審議会の議論 性犯罪の厳罰化などを議論する法制審議会(法相の諮問機関)の部会は6月、親などの「監護者」が影響力を利用して18歳未満の者にわいせつ行為などをした場合、暴行や脅迫がなくても罰することができる規定を新設するなどした刑法改正案の要綱をまとめた。性暴力の被害者らでつくる市民団体は、教師やコーチなど指導的立場にある者からの子どもへの性暴力についても、同様の規定を設けるよう要請していたが、反対意見が多く、盛り込まれなかった。要綱は秋にも法相に答申される。

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