【復刻】ソフトバンク初Vは2010年 試合中に朗報 ホークス優勝へM5

リーグ優勝を決め、胴上げされる秋山監督=Kスタ宮城
リーグ優勝を決め、胴上げされる秋山監督=Kスタ宮城
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西武のサヨナラ負けで優勝を決め、ガッツポーズする秋山監督=Kスタ宮城(当時)
西武のサヨナラ負けで優勝を決め、ガッツポーズする秋山監督=Kスタ宮城(当時)
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 怒濤の勢いで優勝マジックを減らし「5」としたソフトバンク。目前に迫ったリーグV奪回の前に、これまでの歓喜の瞬間をプレーバック!

 【復刻ソフトバンクV】

 残り6試合で西武に3.5ゲーム差をつけられながら逆転し、優勝マジック1として敵地仙台に乗り込んだ2010年9月26日。レギュラーシーズン最終戦の最中、ソフトバンクに歓喜の瞬間が訪れた。ダイエー時代の03年以来で、ソフトバンクとなって初の優勝。ダイエー時代の04年、ソフトバンク元年の05年も勝率1位だったが、プレーオフ敗退で「リーグ2位」扱いだったのだ。就任2年目だった秋山監督は試合中にガッツポーズを繰り出し、小久保主将は守備中に涙した。

(2010年9月27日の西日本スポーツから)

 福岡ソフトバンクが球団創設6年目で悲願のリーグ初制覇を果たした。前身の南海、ダイエー時代を含めると7年ぶり14度目の優勝。秋山幸二監督(48)は就任2年目でチームを前年の3位から頂点へ導いた。西武がデーゲームで日本ハムに敗れ、ナイター楽天戦の最中に吉報が届いた。わずか9日間で3.5ゲーム差を逆転した球史に残るミラクルV。10月14日から日本シリーズ出場権をかけ、本拠地ヤフードームでクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージを戦う。

 うまく笑えない。唇が震えた。秋山監督の目から涙がこぼれ落ちそうになる。敵地のマウンド付近に広がった戦士の輪。仙台の夜空に向かって、背番号「81」が6度舞った。「1試合も気を抜かず勝ちにこだわった。その積み重ねがこの日だった」。ホークス7年ぶり、ソフトバンク初の歓喜。九州出身の将が、奇跡に日付を打ち付けた。

 午後6時44分、西武が敗戦の報が届いた。球史に残る逆転優勝-。高山投手コーチの手を握りしめた。3回の攻撃中にもかかわらず、ベンチの最前列で右手の拳を何度も突き上げた。「ホッとした…」。球宴明けにトップに立ちながら、8月上旬には6連敗。9月にも4連敗。望みは絶たれたかに見えた。139試合目からの4連勝で奪首に成功し、144試合目でゴールに飛び込んだ。
 
           ◇       ◇

 「おれは徹しないといけないところがあるから」と封印していた感情を9月18日からの西武3連戦で爆発させた。退場も辞さなかった、審判への8分間にわたる猛抗議、ピンチでは初めてマウンドに足を運んだ。自ら唯一無二の守護神と認めた馬原の目を真正面からにらみ、魂を吹き込んだ。寡黙な「仮面」を脱ぎ去った瞬間だった。

 「同じメンバーで戦うのが理想」と言い続け、ホークスの黄金期を築いた王監督(現・会長)からチームを引き継いだ。だが、王政権を支えた主力の移籍や高齢化に加え、投打に故障者が続出した。栄光の舞を支えたのは、新しい芽だった。小久保や川崎、杉内、和田だけではない。救援トリオの「SBM」に続いた森福や甲藤。守備や走塁のスペシャリストとして台頭した城所や福田。優勝経験のない彼らも、掲げた「全員野球」の紛れもない一員だった。

 「選手には伸び伸びさせたいと思っている。ベンチの顔色を常に気遣いながら、野球をしてほしくなかったから」。固定メンバーで圧倒したかつての戦いはできない。王野球からの「脱却」は、一芸に秀でた控え選手の潜在能力に新たな光を与えることでもあった。「最近思うようになった。生きる道というより、プロは『生き残る道』なんだよな」。生存競争を勝ち抜くための手段を自覚させようと明確な方向性を定め、モチベーションを与えた。グラウンドだけに集中させた。

 全員で戦うからこそ、実績ではなく、実力主義の用兵を押し通した。球宴明け。左手首を痛めて調子が上がらない松中を「感情は要らない」とのひと言で、先発から外した。かつての三冠王、同郷の後輩でも考えは曲げなかった。だが、優勝争いが佳境に入った9月。2軍で再調整中の松中に、直接電話をかけた。「頼むぞ」。これも初めてだった。「信彦には、自分で『よし、やるぞ』という強い気持ちがある。勝負の世界だから、気持ちの強い人が最後は結果を出す。おれたちは戦闘集団、戦う気持ちを持っている人に、チームも元気づけられる」。2軍戦の映像を自らの目ですべて確認した。眼力は、西武を3連破した最後の直接対決で証明された。

           ◇       ◇

 選手で10度のリーグ優勝、7度の日本一を経験した。勝つ味は十分に知り尽くした、はずだった。それでも、口のまわりには発疹(ほっしん)ができた。食欲の落ちた夏場。「元気が出るように」と、大好きな筑豊のホルモンを胃に詰め込んだ。それでも、ユニホームの臀部(でんぶ)と太もも部分を、2センチ絞り込んだ。9月には、運気を高めるとされる針水晶の数珠も左手首に巻いた。

 自宅の庭には、実家から株分けされた杏子(あんず)の木が植えられている。2軍監督の立場で、再びホークスのユニホームを着た5年前。「日本一の実をつけてほしい」との願いを込めて、母のミスエさんから贈られた。3年ほど前から実がつきだし、今では杏子酒として愛飲する。「育つのは早いんだよ」。今秋は成長を遂げた選手からも“大きな果実”がもたらされた。

 リーグ最下位から、わずか2年での覇権奪回は常勝復活を予感させる。「おれは、触れ合ったすべての人に幸せになってほしいんだ」。秋山幸二、48歳。監督就任718日目の大願成就。名のごとく生き、さらなる頂を目指す男の生きざまを貫く信念でもある。

 【ソフトバンクの最終成績】

 76勝63敗5分 勝率.547

 【ソフトバンクのタイトル獲得者】

 最多勝利 和田毅 17(オリックス・金子千尋と同数)

 最高勝率 杉内俊哉 .696

 最優秀中継ぎ投手 ファルケンボーグ、摂津正 42HP

 最多盗塁 本多雄一 59(西武・片岡易之と同数)

 最優秀選手 和田毅

 【ソフトバンクのチームスローガン】

 今年はやらんといかんばい!

 【2010年のスポーツ界】

 プロ野球日本シリーズはロッテが中日に4勝2敗1分けで勝ち優勝。レギュラーシーズン3位からの日本一は初めてで「下克上」と呼ばれた。米大リーグ、マリナーズのイチローは自身の大リーグ記録を更新する10年連続200安打を達成。サッカーのW杯南アフリカ大会では岡田武史監督率いる日本が02年大会以来の16強入りを果たした。バンクーバー冬季五輪ではフィギュアスケート女子で浅田真央が銀メダル。大相撲は横綱朝青龍が不祥事の引責などで引退、野球賭博に関与した現役力士と親方が解雇されるなど揺れた。

=2017/09/12 西日本スポーツ=

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