2001/5/25

中古盤と雑貨とカフェ MOCHAJAVA

福岡市中央区赤坂3-12-13

 通りからウインドーをのぞくと、右の壁にはキッチュなプラスチック製雑貨、左の壁には中古のアナログ盤の棚が並んでいる。「MOCHAJAVA(モカジャバ)」は一見、セレクトショップっぽいが、カフェバーである。最近、アナログ盤を扱う店が増える中、真夜中でも買える珍しい店だ。
 「今泉や大名のショップは若い子中心で、私くらいの年齢の女性が行くと浮いてる気がして」と、オーナーの小澤いずみ。スタッフは全員女性。同年代の女性たちが仕事帰りに一杯やって、くつろげる空間を意識したという。中古盤は黒人アーティストによるソウルやヒップホップなど。雑貨はピンクや赤やペパーミントグリーンなどの色使いで、ゼリービーンズのよう。ヤシやバナナの植木鉢などを飾り、アメリカ西海岸風の明るい雰囲気を演出したという。
 実は、小澤はローラースケートのダンスチーム「東京ボンバーズ」の元メンバー。デビュー前の光GENJIに指導したこともあるらしい。八九年の博覧会「よかトピア」のショーに出て以来、福岡に住んでいる。開店は今年1月。「もう年だから、そろそろ落ち着こうと。年を取ってもできる店をと思った」。そういう小澤、まだ30歳になったばかりだ。(敬称略)

092(713)6610

2001/5/18

アパートで焼き鳥 〇弐

福岡市中央区大名1-15-26 大名マンション102

 福岡市中央区大名地区ではこのところ、古いアパートの一室を改造して作ったショップが増えている。大抵は雑貨や古着を扱うが、「壱〇弐(いちまるに)」は飲食店。それも、今はやりのカフェなどではなく、焼き鳥店である。屋号は「大名マンション102号」からそのまま付けた。
 3DKの部屋は、柱と天井を除いて全面的に改装。古い家を解体して出てきた欄間を用い、木を基調にした和風の内装である。オーナーの田中繁(44)は「自分が生まれた昭和三十年代の雰囲気を出したい」と、蓄音機に耳を傾ける犬の置物やちゃぶ台、黒電話など懐かしい家具を集めた。「僕の幼いころはモノは何もなかった。でも、テレビとか次々と新製品が開発されるたびに驚きがあった」。そこは、現代とは違う豊かさを感じられる空間だ。
 田中は両親が市内で営む焼き鳥店で十年ほど修行し、今年三月、店を開けた。「大名という旬な街でやる以上、今までの焼き鳥屋とはちがうイメージにしたかった」。男性たちでにぎわい、演歌が流れるような従来型の店だと、入るのをためらう女性もいるかもしれない。そんな女性たちでも入りやすい店づくりを心掛けたという。取材の日、客の七割が女性だった。脱オヤジ系―まずは成功のようだ。(敬称略)

17:00-翌1:00 日曜休、祭日は営業 092(713)4188

2001/5/11

2001年本の旅 ックス キューブリック

福岡市中央区赤坂2-1-12

 店内は木の床。天井からは白熱灯がともる。ブティックのような雰囲気だが、ここは本屋さんだ。ブックス キューブリックは福岡市中央区赤坂のけやき通りにある。代表の大井実(39)は天神の大手書店や、大きな駐車場のある郊外型書店との競合を避け、この地を選んだ。
最近は、新刊書ばかりをそろえた判で押したような書店が多い。小さいころから本好きの大井は、そんな現状を憂いて自ら書店経営に乗り出した。目指すは本の「セレクトショップ」。衣料、雑貨店などでは店主の趣味でいろんなブランド品を集めた店があるが、書店ではあまりない。
 一方で、特定分野に偏った専門店や、古書や希少本を集めたマニアックな店にするつもりもない。「あくまで“町の本屋さん”の間口の広さを保ちつつ、店の個性を」
 店名は、あの「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック監督から。「芸術志向でありながら、興行的にもそれなりに成功した」彼にあやかりたいのだ。もともと仕事はイベント関係で、書店経営は門外漢。でも、志は大きい。「月に一度、特定分野のブックフェアを」「地元著名人が、あるキーワードに沿って推薦する本をまとめて紹介したい」…。さまざまな実験で、人々を本の旅にいざないたいのだ。 (敬称略)

092(711)1180

2001/4/27

カードから夢を“発射”ポロ計画

福岡市中央区警固2-12-19松尾ビル3F

 「放置サイクルZERO宣言」と聞くと、いかにもお役所的なコピーだが、最近、福岡市内で配られている天神地区の駐輪場地図「チュー輪ナビ」はポストカード型でポップ。何よりイラストレーターの荒金祐子(28)が考えたキャラクター「チャリエンジェルズ」がかわいい。
 荒金と市役所の施策を結び付けたのがアポロ計画(福岡市中央区警固)。最近、天神や大名のおしゃれなカフェやショップで見掛ける、無料のポストカードが入ったビニール製ウォールポケット。あれを仕掛けている会社だ。気に入った人が自由に持ち帰る新しいスタイルの広告は、十年ほど前にヨーロッパで生まれたという。福岡では地元クリエーターがデザインしたFM局の広告や美容室のイベント案内などがラックに並ぶ。
 「道端で自分の作品を売っているような若者と、若い感覚を探している企業を結びつけたい」と社長の松山真介(32)。三年ほど前からポストカード作りにかかわり、今や登録クリエーターは約百人とか。荒金も「いろんな人に自分の絵を見てほしいし、新たな仕事が来れば…」と今年初め、作品を持ち込んだ。 社名は映画「アポロ13」に感動した松山が「失敗から学び、無理と思っても挑戦する会社に」と付けた。一五・四センチ×一〇・七センチの小さなカードから、大きな夢が発射されている。 (敬称略)
092(738)9099
http://www.boom-japan.net/
E-mail apollo@rainbow.plala.or.jp

2001/4/22

女性も「軽く一杯」こみ

福岡市中央区平尾1-12-22

 小さな路地に「煮こみ」と大書されたネオンサインが、うっすらと浮かぶ。外観からはそれ以外に店の情報はうかがい知れない。何の店なのだろう。きっと煮こみ料理は扱っているだろうが…。
 ここはそのものズバリ「煮こみ」(福岡市中央区平尾一丁目)と名のついた煮こみ料理専門店。ネオンの字は、大将の萩原一彦(30)の母、鈴子が書いた。「素人ですよ。だれかおらん? って母ちゃんに尋ねたら、何を思ったか練習ばし始めて」
 メニューは少ない。和牛煮こみ、もつ煮こみなど十前後の品目で「少数精鋭主義」なのだ。長時間の冷凍肉はいっさい使わず、その日に仕入れた鮮度の高さが売りである。年配客の中には、メニューの少なさに「え、これだけ?」という反応を示す人もいる。「内臓肉」中心の煮こみ料理に、戸惑いもあるようだ。
 客は若い女性が多い。次の日の口臭を気にしそうだが「意外と女性は平気。男性の方が駄目」。そういえば、大名、今泉などの「おしゃれスポット」で、従来なら中年サラリーマンが行きそうな造りの店が最近、目立つ。
 若い女性も会社帰りに「軽く一杯」立ち寄る店を欲しはじめた。かといって、おじさんの多い店には行きたくない。ここは、そんな女心をつかんだ店の一つだ。 (敬称略)

092(525)1166

2001/4/13

ソウルから福岡ドリーム

福岡市中央区桜坂1-4-17 エスポワール桜坂1F

 ソウル出身の韓国人、李恩周(32)は新天地を福岡に求めた。幼いころから母が営む食堂を手伝い、いつか自分も店を…と夢を抱いていた。実現へ踏み出したきっかけは十年ほど前、会社の仕事で学び始めた日本語。「韓国で食堂をやってもありふれている。商売するなら日本で」。会社を辞め、韓定食を学校で学んだ。
 「知り合いが多く、ソウルに近い」から福岡。それも中央区桜坂に梨羅(りら)を構えた。昨年六月のこと。「将来、近くに地下鉄が通るから」としたたか。「今は厳しいが、地道にやれば道は開ける」
 メニューはハングルで書いていないなど、店内ではあまり韓国っぽさを感じない。「韓国語の雑誌も置いたけど、だれも見ない。韓国の女優の写真集でも持ってこようか」と恩周は冗談を言う。が、メニューからは「韓国の家庭の味を伝えたい」という熱い思いが伝わってくる。ソウルに住む母手作りのキムチや、ソーセージを入れた「軍隊なべ」。日本ではまだなじみのない料理も多い。
 店名は造語。「梨(ナシ)」はキムチを始め韓国料理では隠し味によく使われる食材だ。そのナシの有名な産地が全羅南道羅州。「ここに来ればおいしいものが食べられると評判になれば」。かわいい響きの店名には恩周の福岡ドリームが込められている。 (敬称略)
092(762)8588
17:00-23:00(オーダーストップ22:30)

2001/4/6

肩の力の抜けた共同作業 VER FREE RECORDS
     ABLE

福岡市中央区今泉1-16-14

 二軒の店は、細い路地沿いのビル一階でひっそりと向かい合っている。お店がじわじわ増える福岡市中央区今泉地区だが、この付近にはまだあまり見当たらない。
 その二軒とは、山村孝幸(31)の「EVER FREE RECORDS」と、吉村朋之(25)の「FABLE」。二人は長年の友人だ。山村が大学生、吉村が高校生のころからのつきあいで、二年前に同時にここを借りた。でも、互いの店は脈絡がない。山村はクラブミュージック中心のレコード店。主に英国から買い付けている。吉村はアメリカン・カジュアル服・靴を中心とした店である。
 両店のドアは大抵、開けっ放しで、気軽に行き来できる。が、「ほとんど客層はかぶっていない。一応、両方のぞく人はいるけど」(吉村)。
 唯一の共通点は、流行を追わないことだ。山村が一九七〇年代後半から九〇年代前半の十二インチシングルばかりを集めれば、吉村は「着ているうちになじみ、二、三年後もつきあえる」服をそろえる。
 互いにこだわりを主張しあう二人。だが、気負いは全くない。けだるい昼間、二人とも路地に出てのんびりたばこを吸っている光景もよく見かける。だが、その肩の力の抜けたコラボレーション(共同作業)がこの空間の魅力である。(敬称略)
EVER FREE RECORDS=092(732)5799
FABLE=092(732)9987

2001/3/30

ファッションと書が融合 DICE&DICE

福岡市中央区今泉2-1-43

 入り口前に白いパネルが一枚。墨で「櫻(さくら)」の一字が大書されている。さらに店内に入ると、書の一部を拡大して写し取った巨大なパネル版画三枚がどーんと目に入る。いずれも、福岡市の書家・西本聰二(48)の作品。一見、ギャラリーだが、店内全体を見渡すと、「YMC」、「ネペンテス」などのブランド服がずらり。ここは洋服中心のセレクトショップ「DICE&DICE」の新店舗なのだ。今月、福岡市中央区大名から今泉の真新しいビル二階に移転してきた。
 売り場責任者の泉栄一(29)は洋服の“本家”欧米で買い付けを続けてきた。その長年の経験から「物まねで終わらない日本人の感性が通うものが作れないか」と考えるようになったという。新店舗に書を掲げたのは、そんな思いからだった。
 西本の書に出会ったのは数年前。その躍動感に「日本人の感性」の一端を見いだした。以来、西本と共同作業に取り組んでいる。ショップ独自のブランドのブルゾンは西本揮ごうのロゴマーク入りだ。
 服も書も根っこは同じである。着物の柄はいわば「身につける芸術」。逆に書はファッションと同じ「感覚を表現できる媒体」だ。この店を服とか書道とかの枠組みを忘れて楽しめる場にするのが泉の当面の目標だ。(敬称略)
092(722)4877

2001/3/23

ステッカー広告 IN-DY

 表紙には「特典・ステッカー付き」。そのステッカーはアルファベットのロゴが並ぶ。大名や今泉(福岡市中央区)で人気の美容室やカフェの名前だ。
 「それ、広告です」と最近、創刊されたこのフリーペーパー「IN―DY(インディー)」(編集部・同区薬院)編集長の落合次郎(29)は言う。ショップ名とイラストだけ。宣伝くさい言葉も入れていない、小じゃれた広告。それも、ステッカーばやりに合わせて、携帯電話に張れるようなサイズにしている。
 デザイン専門学校講師も務める落合が強調する。「広告が取れればどんなデザインの広告も載せていい、みたいなフリーペーパーが多過ぎる。そうはしたくなかった」
 ページをめくると、映画コラムや歌手デビュー前の若者のインタビューもあるが、赤や黄のカールした髪の毛を乗せたくしを並べたりしたアート感覚の写真も登場し、ビジュアルを強調した誌面になっている。
 対象は二十二―二十七歳の女性と言うが、コンセプトがいまひとつ見えてこない…と落合に指摘すると、答えは「気になることをまとめたスクラップだから」。大名今泉付近では、混とんとした街の風を受けて、どこか漠とした情報誌が次々と生まれている。(敬称略)
092(586)0183

2001/3/16

自分だけのアオザイ eye's◎eye's

福岡市中央区大名1-8-25

 アジア雑貨を扱う店はもはや珍しくないが、アイズアイズ(福岡市中央区大名一丁目)はベトナム雑貨を集めた珍しいショップ。しかも、福岡で唯一、現地の職人と提携して民族衣装アオザイのオーダーメードを受けている。
 「今年は、卒業式の謝恩会や結婚披露宴で着たいという人が増えている」とスタッフの栗本幸子(25)。チャイナドレスと違ってスリットが腰までと深いものの、パンツをはくので肌を露出しないですむ。何より、鮮やかな色彩や細やかな刺しゅうが好まれている。ほかに、人気が出始めた「安南焼」の茶器セットや水牛の角を使ったバッグ、仏様の絵を描いた電光壁飾りなど見慣れないものが並ぶ。
 オープンは一昨年四月。栗本の兄が友人の転勤先のベトナムを旅して雑貨に目を付けた。「フランス統治時代の影響で、洗練されたデザインや色彩が織り込まれているのが魅力的だった」からだ。ベトナムの開放政策も手伝って、一通りアジアを旅した若い女性たちが注目。雑誌でも度々特集が組まれ、ベトナムブームになった。
 「アジア雑貨を扱うところは増えたけど、この辺りはショップによってインド、タイ、バリ、韓国と扱う地域がうまく分かれている」。昨秋にはそんな店が集まってクラブイベントを開催。ずいぶん盛り上がったようだ。(敬称略)
092(738)2062 11:00-21:00 http://www.eyeseyes.com

2001/3/9

遊べる美容室 HYPER・HYPER

福岡市中央区大名1-3-46 2F

 ドアを開けると左手にパソコンが四台並んでいる。この空間だけ見ると、インターネットカフェのようだ。さらに奧にはDJブースが…。一体、ここは何の店?
 HYPER・HYPERは美容室。しかも、ここはヘアカットはもちろん、ふらりと訪れてただインターネットだけして帰ることもできる「遊べる美容室」なのだ。閉店後、イベントスペースとして使われることもある。十日夜も、デザイナーの卵たちによるファッションショー的なイベントを開催予定だ。
 今や同業店が乱立する福岡市・大名地区でも人気店の一つだが、最初、オープンした場所は同市・警固だった。ちょうど昭和から平成に変わるころのことである。当時はまだ、「カリスマ美容師」という言葉もない。
 「この十数年で美容師のステイタスはもちろん、全体の技術力も上がった」と、オーナーの松下弘信(37)は振り返る。「ただ、優等生的な人も増えつつありますが」
 美容師は単に「髪を切る人」ではだめで、ファッション全体、ライフスタイルをも提案できるような人でないと務まらないようにもなった。店が「遊べる場所」になったのも、店の意思というよりは、時代の要請なのかもしれない。(敬称略)
092(731)3435

2001/3/2

31歳でもギャル服大好き ッピーガールズ

福岡市中央区大名2-9-15 上野ビル402

 中山瞳の指にはハイビスカスのシルバーリングが輝いている。それも、四つ。どれもアルバローザだ。テンガロンハットと超ミニに黒の厚底ブーツ。その派手好きが高じて昨年、中山はギャル服リサイクルショップ「ハッピーガールズ」を福岡市中央区大名の雑居ビルにオープンさせた。
 「服のリサイクルショップって、おばちゃんか赤ちゃん向け。若い子向けってなかなかない。ギャル系は福岡で初めてだと思う」。扱う服のブランドはエゴイストやアルバなど。原色やハイビスカスなどの柄物を使った派手めのものが目立つ。グッチやシャネルのバッグも置いている。
 二十代半ばに差し掛かる客が「(ギャル服は)そろそろ着れんくなる」と嘆くのを聞くと、中山は「別にいいじゃん」と励ます。中山自身、十年ほど前のジュリアナブームで踊りまくり、青春時代を派手派手で駆け抜けて現在、三十一歳。「年相応の服って言うけど、自分の着たいものを着なきゃ」。
 というわけで、二十五歳以上のギャル系の人々と「ババギャルサークル」を結成し、クラブやカラオケへ遊びに行く。それにしても、ババギャルとは…。「卑下してるんじゃない。愛きょうがありません?」と、駆け出しオーナーはどこまでも元気なのである。(敬称略)
092(713)1502

2001/2/23

ナンを手に公園へ ラムナン

福岡市中央区古小烏72

 店のすぐ前は公園。そこに戦略がある。
 店内は狭い。いすは十席にも満たない。でも、天気のいい日なら…。「テイクアウトしてすぐ公園で食べてもらえる」。ナン専門店「ナラムナン」の共同経営者の一人、土器修三(46)は言う。「正直、そんな物件は(福岡市)中央区内にはないかも、と思った」。が、西鉄薬院駅から徒歩約五分の同区古小烏に見つけた。
 土器の本業はイラストレーター。昨夏、ネパールカレーを紹介するイベントで、ネパール人のバリ・バドゥラ・カンデル(37)が作ったナンを食べた。あまりおいしかったものだから「専門店があればいいのに」と思わず友人二人に言ってしまった。それが店を開くきっかけとなった。「じゃあ、三人で一緒にやる?ということになって…」
 準備が始まった。料理人はもちろんバリだ。バリと相談しながらメニューを作った。メーンはナッツ、ガーリックなどがそれぞれ入った七種類のナン。内装も知恵を出し合った。ドアを開けるとすぐ左手にタンドール(ナンなどを焼く窯)。これは「作り手の顔が見える店に」との願いからだ。注文した客はバリの作業を眺めながら待つことができる。そして、でき立てのナンを受け取ったら、公園へGO!なのだ。(敬称略)
092(521)8076

2001/2/16

アパート奥のおもちゃ箱 ナナ・チョップ

福岡市中央区大名1-11-27 松風荘2F

 天神バナナならぬ大名バナナである。目印は、ちょっぴり怒り顔のペコちゃんの看板。それから細い路地に入って古い二階建てアパートの一番奥の階段を上がると、「バナナ・チョップ」(福岡市中央区大名)にたどり着く。「おずおずとのぞき込む人、多いんですよね」と、店主の青木由行(26)は苦笑する。
 まず玄関に「マックトーイ」。ハンバーガーチェーン店の景品である。それに、スヌーピー人形などのヴィンテージものから、カルトな人気の「オリエンタルカレー」の人形まで、1DK十二畳の部屋におもちゃがひしめく。好きなのは「目が丸いもの」という青木らしく、愛らしいキャラが目立つ。
 青木は書店「ヴィレッジヴァンガード」で働いた後、昨秋、念願の自分の店を出した。店名は前の職場でレジ前にあったバナナチップを見て思い付いた。語路がよくて特に意味もないのがいいからだ。大名では古いアパートを利用した店が増えているが、「人が探していくような奥まったところ」を三カ月探し回り、ここ「松風荘」にたどり着いた。
 「あったよ」。客の喜ぶ声が聞こえると、青木の顔もほころぶ。「もっとゴチャゴチャさせて掘り出して見つけ出す、みたいな店」が目標だ。(敬称略)
092(731)5670

2001/2/9

遊び心あふれるオアシス クラフトファクトリーSOHO

福岡市中央区大名1-12-26-2F

 古着の「リフォーム」と「リメーク」は何が違うのか。
 「最大の違いは遊び心。リメークにはそれがある」。福岡市中央区大名一丁目のビル二階にアトリエ兼用店舗・クラフトファクトリーSOHOを構えるデザイナー、宮崎淳三(40)は言う。最近、宮崎はこのリメーク商品に力を入れている。パンツがスカートに、洋服がバッグに…。店内には生まれ変わった商品がずらり。自作の商品には既にブランド「Sleep」があるが、それ以外に昨夏、リメーク商品用のブランド「Spy」を新たに作った。
 ファッションのデザインはこれまでにやり尽くした感がある。だから、古い物を見直そうというわけだ。「でも、昔のものをまんまやるわけじゃない。そこからまた新しいものを作っていくんです」
 店は今年一月、店名に「SOHO」と付け足して改装オープン。「SOHO」は、最近よく聞く「在宅勤務ができる小規模オフィス」とは関係ない。造語「Sleep original handmade oasis」の略。店内にイスを置き、来店者と語らえるオアシスのような空間を作った。若手芸術家との共同作業による商品化にも取り組む。さまざまな人との交流から「古くて新しい何か」の発信を目指す。(敬称略)
092(732)3331

2001/2/2

変ぼうするホテル街で Cafe Xando

福岡市中央区今泉1-19-17

 福岡市中央区今泉のファッションホテルの斜め前に、内装も外装もいすもテーブルも白で統一されたまばゆいカフェがある。名前は「カフェ・ザンドゥー(Xando)」。ビル一階の駐車場だったスペースに昨秋、オープンした。
 チーフの山添春樹(24)が強調する。「好きな人に抱き締められるくらい心地よい空間に、という願いを店名に込めた」。英語でXは「キス」、Oは「抱きしめる」という意味があるらしい。
 ドアを開けると、ワインボトルが並ぶ棚が出迎える。壁には、写真集や映画「ヴァージン・スーサイズ」のパンフレットが飾られている。カフェだが、ドリンク中心のメニューではない。ランチタイムが午後五時までとゆっくりで、夜はイタリア料理をベースに多彩な料理が並び、若者たちでにぎわう。
 それにしても、つい最近まで今泉といえば「天神に最も近いホテル街」というイメージが強かった。「でも、それを意識した店名じゃありません。それに、カップルもホテル自体もオープンになってきているから気になりません」
 店の北側にホテル。西側には通りをはさんで公園があるためガラス張りにし、暖かくなればオープンカフェにもなる。ホテル街のどこかわい雑なにおいが薄れ、こぢんまりとしたおしゃれな街に変ぼうしているこの街の一つの象徴でもある。(敬称略)
092(737)9515

2001/1/19

ちょこちょこと手作り a petits pas(ア・プティ・パ)

福岡市中央区今泉1-14-24

 部屋番号は105。福岡市中央区今泉にあるごく普通のワンルームマンションの一室に、オーナーは昨年夏、自分のショップ兼工房「ア・プティ・パ」を構えた。西鉄福岡駅から歩いて三分という距離を感じさせない都心の隠れ家といったような静かな空間だ。
 「手作りの小さなものが好き」というオーナーが店名に付けたのは、「ちょこちょこと」という意味のフランス語。
 棚にはアンティークビーズのアクセサリーやチャイナドレス用の布地を生かしたバッグなどが並ぶ。アクセサリー類などはオーナーの手作り、バッグや洋服はオーナーのデザインで、ヨーロッパや香港で買い付けた生地を用い、製作だけ発注している。
 もともと、東京のアパレルやアクセサリーメーカーで企画や販促などさまざまな分野で働いてきた。一昨年、離婚を機に退社し十年ぶりに故郷福岡へ戻ってきた。
 「これからは自分一人で生きていく確率が高い。ちょこちょこと作るのは好きだったし、マイペースでやれる空間を作りたかった」
 自分の世界観を表現できるショップを持つ―そんな長年の夢をわずか六畳のスペースから始めた。店名からは、商品のかわいらしさもさることながら、そんな高濱自身の生き方もうかがえる。(敬称略)
092(737)6812 12:00-20:00

2001/1/12

アートな委託販売店 IAF SHOP

福岡市中央区薬院3-7-19

 小学校の教室後方にあったランドセルを置く棚を思い出す。あんな感じの奥行きのある棚の升目ごとに「商品」とも「作品」とも言いがたい、境界のあいまいなものが陳列されている。
 福岡市中央区薬院の高宮通り沿いにあるIAF SHOPは、ショップ、ギャラリー、カフェの機能が一体になった不思議な空間だ。「ポストペット」の原案者として知られる八谷和彦など有名アーティストから、地元の芸術家の卵までが出品している。バッグや小物入れなど実用的なものもあり、「アートな委託販売店」と考えると分かりやすい。
 福岡市で隔年で開かれているイベント「ミュージアム・シティ・プロジェクト」。その事務局(博多区に移転)があった場所を改築して昨年十一月にできた。造形作家の江上計太(49)を中心に地元の若手作家たちが運営しているが、運営メンバーの一人、菅大雅(31)は作家ではない。
 「アーティストの活動に魅せられて」。彼は三年前に脱サラ。裏方のアートプロデューサーを目指している。
 現在は作家たちが交代で、無償の店番。人手不足で木―日曜日の夜の時間帯しか開けられない状況だ。菅のような裏方の協力者が多く現れると、ここはますます面白くなるだろう。(敬称略)
092(521)6772

2001/1/5

コンセプトは「生意気」 Sassy(サッシー)

福岡市中央区薬院3-13-20 共立ビル1F

 年が明けても世は不況というのに、やけに元気で明るい空間だ。コスモス柄の、あるいはウニのような刺々しいランプシェード。おまけにサックスブルーをベースに壁が赤、山吹色、ふじ色のサイケなペインティングとくるのは、福岡市中央区薬院の「Sassy(サッシー)」だ。
 西鉄薬院駅から徒歩五分。高宮通りに面した雑貨店。「とにかく目立たなきゃってデザイナーさんにお願いしました。じゃないと、人も車も通り過ぎる」と店長の椛嶋あかね(23)。椛嶋は天神のファッションビルにある雑貨店で三年間働いた後、昨年秋、オープンしたこの店に移った。
 「天神だといろんな店があるからお客さんも目移りする。逆にこのあたりは、若い女性をターゲットにしたショップがあまりないから、お客さんと密に会話ができる」と魅力を強調する。「こんなところにこんな店があったなんて」と、言われるのがうれしいという。
 近くには高校が数校あるため、流行のヘビ柄グッズやカメリア(ツバキ)のコサージュなどのほか、星、アニマルの柄物やラメを使った、やや挑発的なものが多い。「天神の店に負けたくないから、安さで勝負」という椛嶋の心意気。英語で「生意気な」という店名を付けたのもうなずける。(敬称略)
092(534)3310

2000/12/29

店内はスニーカーだらけ Snail

福岡市中央区大名1-12-41

 マンション前のコインパーキング、車二台分スペースに銀色の箱が置いてある。二トントラックの荷台を改造したそれが「Snail」の店舗だ。窓からのぞく、さまざまなデザインのスニーカーの陳列がカラフルである。
 洋服や靴の卸売りをしている副島雅士(28)が、仲間とこのスニーカー専門店をオープンしたのは今年五月。「服と違って靴なら場所を取らないでしょ。あと、福岡にはないタイプの店を、と思ったから」
 品ぞろえの大半はいわゆる“レアもの”だ。同じブランドでも、日本にはない色や柄のものが米国にはある。そうした「日本未発売」を直接輸入している。向こうではレディース用でも、こちらでは男性がはけるサイズのものがある。それを男性用として売ることも多い。
 店員と客のやりとりは、従来の靴店のそれというよりは、洋服店に近い。客がただ好みのシューズを選び、店員がサイズを探すだけではなく、最近の流行について、客と店員はお互いに情報交換をし、店員も「こんなのはどう」と提案する。
 一時期のブームは落ち着いたが、そのやりとりを見ていると、若者のファッションの一部としてスニーカーが完全に定着したことが分かる。(敬称略)
092(724)4177

2000/12/22

布でめぐる世界の旅 PAITITI(パイティティ)

福岡市中央区赤坂1-2-1 シャンポール赤坂1F

 インドのカディ(手織り物)にインドネシアのバティック(ろうけつ染め)。鮮やかな色遣いはグアテマラの、大胆な柄はアフリカの布である。衣料・雑貨店「PAITITI(パイティティ)」(福岡市中央区赤坂)にはアジア、中南米、アフリカ各地から色とりどりの布が集まっている。
 「今の日本の布は仕上がりがきれい過ぎる。逆に、外国の布は不ぞろいでデコボコ、その風合いがいい」とは店長の南元由美子(52)。
 一九六〇年代に世界各地を旅したオーナーが、まずペルーの人々が編むアルパカのセーターとインドの手織り物に着目。現地の女性たちに技術指導しながら、オリジナル商品を開発してきた。
 開業は十九年前。「当時、脚光を浴びていた」赤坂けやき通りで店を出した。エスニックものを扱う店としては福岡では先駆的存在だが、南元は「私たち自身はあまりエスニックって思っていない。天然素材を使ったいろんな国のもの、という意識の方が強かった」という。
 店名はアンデス地方のインディオが話すケチュア語で「理想郷」の意味という。世界各地で絶えず繰り返されてきた争い。その争いのない平和な時代への願いも込めた。今や商品の原産地は三十カ国以上に。百四十平方メートルほどの店内をめぐると、ささやかな世界旅行ができる。(敬称略)
092(715)0533

2000/12/15

10代を引きつける音楽 POX RECORDS

福岡市中央区今泉2-4-39-401

 福岡市中央区今泉のビルの一室に、所狭しとレコード、CDや、Tシャツ、バンダナなどのグッズが並んでいる。いずれもパンク、ハードコアと呼ばれるロックのジャンルに関連するものだ。「POX RECORDS」は、このジャンル専門のレコード・CD店なのだ。
 坊主頭で耳にピアス、無精ヒゲの店長城戸一彦(27)は、自分自身がこの手の音楽の大ファンだった。だが、決してメジャーではないジャンル。好きなレコードを入手するには、いろんな店を探し回って購入しなければならない。「いっそ自分で専門店を」と、約二年前に店をオープンさせたのである。
 高校生のころ「FUCK」という英単語だらけの曲が好きだった。「政治もクソッ、宗教もクソッ、みんなクソッ」。日本語にすればこんなデタラメな詞。だが、フラストレーションをストレートに歌う彼らがかっこよく思えた。
 何か漠然とした不満を抱えていたあのころの自分。ここにくる客の大半もそんな十代だ。この音楽は、感性が鋭敏なこの世代だけを引きつける何かがある。今、店に来る少年もほとんどは、成人したら聞かなくなるだろう。でも、また新しい十代が、きっと入門してくる。常に若者の不満に共鳴する音楽を提供したいと思う。(敬称略)
092(732)6618

2000/12/8

キッチュなプラスチック BLANC de ZINC(ブラン・ド・ザンク)

福岡市中央区薬院1-14-9 金生ビル1F

 世界地図がプリントされたワンピース。あるいは、洋ナシ型のアイスペール(氷入れ)。福岡市中央区薬院の家具雑貨店「BLANC deZINC(ブラン・ド・ザンク)」に並ぶそれらの商品の素材は、布でもガラスでもない。プラスチックである。
 主に一九六〇―七〇年代に西欧で流行したデザインものを扱う。「当時、木や金属に代わる画期的な新素材として注目したデザイナーたちが、こぞって使った。だからおもしろいものが多い」と店長の森あや子(25)は強調する。
 また、リサイクルできる今どきのプラスチックにはない色や質感が、年代ものにはあるという。「たとえばオレンジはベタッとした色で光沢がある。でも、今のは光沢が消えてザラザラしている」
 商品は福岡市出身でパリ在住のオーナーが買い付ける。店内には、見る角度で絵柄が変わるギャグっぽいポストカードを使ったバッグなど、キッチュなものへの愛着があふれている。
 「フランス人って無駄なことにも情熱を注ぐ。その感覚、ユーモアこそ本当のフランス、というノリです」
 福岡市の中心地天神から少し外れた場所に四年前から店を構えているのも、一風変わったものを探し求める姿勢と似ている。(敬称略)
092(781)6288

2000/12/1

野草のようにさりげなく 花(ミンファ)

福岡市中央区赤坂2-1-27

 福岡市中央区赤坂二丁目の古着屋の横に、車一台分スペースの駐車場がある。そこが隠塚民夫(34)の花屋「民花(ミンファ)」の店舗だ。看板はまだない。目印代わりの大きな白い和紙の日傘は、どこからか飛んできたタンポポの種のようだ。
 花屋といっても、男性が女性に贈る花を買っていく中洲のそれとは全然違う。バラ、カサブランカなど見た目が派手な花がないのだ。ここは、ダイモンジソウ、サギソウなどの山野草や、ハーブを中心に扱っている。
 隠塚が職を転々としていた二十代のころ、園芸店でバイトしていたときに、花と出合った。特に、店の片隅にあった山野草が咲かせる地味だがしおらしい花にひかれた。
 勉強すると、都心部に山野草を専門とした店は少なく、好きな人は山間部の園芸農家まで買いにいくか、通販で購入することが多いことが分かった。「山野草を中心に、育て方など知識を売る花屋になろう、と思ったんです」
 駐車場分の使用料を払っての営業。今はまだ土日のみ。平日に土木関係の仕事をしてお金をためている。十二月中旬から平日の営業も始め、店の仕事一本に絞るつもりだ。さりげなく、しかし、しっかりと根を張って、この街で商売しようと思っている。
 (敬称略)
090(1165)2346

2000/11/17

「香港」をもっと近くに WayToHongKong

福岡市中央区薬院4-6-22-604

 「WayToHongKong」(福岡市中央区薬院)のドアを開けると、壁には香港映画「花様年華」のポスター。来年、日本で公開されるウォン・カーウァイ監督の新作だ。廊下も部屋も輸入した香港映画のDVDやビデオテープであふれる。
 「香港映画のファンって濃い。言葉が分からなくても日本未公開作品を買って、一生懸命訳しておられる」と、社長の神屋伸子(46)は驚く。主な業務は、香港カルチャーのソフトの通信販売。全国各地から注文が寄せられる。
 神屋が香港映画に目覚めたのは三年前。「カンフー、アクションのイメージが強くてどこか偏見を持っていた。ところが…」。ある日、テレビのチャンネルを間違って香港映画「欲望の翼」を録画。見てみると、意外とおもしろい。いろんな作品を見ていくうちに、見る目が変わった。「まずアート系フィルムがあるのに驚いた。しかも、ヒューマンドラマが多い」
 趣味をビジネスに変え、月一回は香港へ出向く。「福岡でも上映して」と市内の映画館支配人も引っ張っていく。来年一月には大スター、レスリー・チャンの初の福岡公演が開催される予定。チケットの先行予約受付に追われている。薬院のマンションにある3LDKの自宅兼事務所。香港をもっと近く、神屋はここから夢を発信し続ける。
 (敬称略)
092(526)3509 http://www.wayto-hk.ne.jp

2000/11/10

日常に溶け込んだカフェ CAFE SONES

福岡市中央区薬院1-16-18

 ドアを開くと、コントラストのはっきりした空間が広がる。白い壁と天井に、黒系の暗めの床。手前に鉄製の長テーブルが置かれ、奧にカウンターがある。そこで人々はとりとめのない会話をしたり、読書をして過ごす。
 CAFE SONES(カフェ・ソネス)を経営するのは、木下恵深(28)、雄貴(27)の姉弟。室内は、二人のアイデアを基に、福岡市のアーティストYABUがデザインした。昼は自然光で明るい雰囲気。夜は暗いバー風で、お酒も出る。
 「劇的ではなく、日常の延長のような、人の生活の一部に溶けこんだ場所にしたかった」と姉弟は言う。場所は普通のマンションの一階で、居住空間にさりげなくカフェが入り込んでいる。
 福岡市中央区薬院一丁目に店をオープンしたのは二年前。当時、天神の商圏を考えると「こういう店を出すのにぎりぎりの場所」と思ったが、今は周囲に飲食店や美容室などがぽつぽつと現れている。天神のエッジ(周縁)が南へ伸びているのを物語る。
 二人はここをサロン的な場所にしたいと考えている。若手のアーティストや役者などもよく集う。月一回ペースで、自主上映会や芝居などのイベントスペースとしても活用されている。(敬称略)
092(741)8287

2000/11/3

NYテイストを伝える ューヨーク・ヘルス・キッチン

福岡市中央区大名1-7-8

 ニューヨーカーの食生活は外食がベース。多忙な彼らがさっと食べられるよう、ランチの料理はすべて大皿一つに盛り付けるという。ニューヨーク・ヘルス・キッチンのシェフ椛島浩二(35)=北九州市出身=はそのスタイルを福岡に持ち込んでいる。
 「ヘルス=健康」といっても、店内には説教くさい文言や宣伝めいた言葉は見あたらない。ただ、一日に必要とされる三十品目が取れるようにし、化学調味料はいっさい使わないと決めている。ジャズの流れる店内は白塗りのレンガ壁だが、それも健康に配慮した塗料を使ってもらったという。
 椛島は昨年までニューヨークの日本総領事館のシェフだった。滞在十年を機に帰国。そのころ当地では、産地や栽培方法のはっきりした食材を使うヘルシー志向の店が「ファッショナブル」として、若者に受けていた。
 「あんな店が福岡にもあったら」と福岡市中央区大名に店を構えた。大名を選んだのは「都会の中心で成功しなければどこでやっても同じ」と思うからだ。
 ニューヨークの魅力を「他人の目を気にせず、やりたいことができる場所」と語る椛島。NYで体感したその精神をここ大名で伝えている。
 (敬称略)
092(724)5573

2000/10/27

肝心のお店はどこ? 琲束(かひたば)

福岡市中央区大名1-4-28

 「香琲束(かひたば)」という店名と、午後五時半から午前零時までの営業時間、そして電話番号が書かれたボードがブロック塀に立てかけられている。だが、肝心の店が見当たらない。駐車場と細い路地があるばかりだ。見渡すと右斜め約三十メートルほど向こうに、ほのかな明かりのつく一軒家がある。
 「気付いたお客とだけつながればいい。もうけようと思ったら、違う立地の方がいいのでしょうが」。店のオーナーの瀬口一彦(35)は言う。福岡市中央区大名のこの店以外にも周辺地域に数軒の飲食店を持つが、いずれも場所が分かりにくく「隠れ家」的だ。今でこそ、この地域にこうした店が増えたが、約五年前、瀬口が始めたころはまだ少なかった。
 新築ではなく、もとからある建物を改装している。瀬口は、開店するための物件を探しはしない。古い建物を見ると、たまに「お客さんが笑顔で食事する風景が見えてしまうことがある」のだという。「霊感がある人なら幽霊が見えるんでしょうね」
 建物の柱の一部に大正時代からのものも残るという木造民家を改修したこの店。「(この家)いいなあ」と常々思っていたら、たまたま知人の所有だった。人との出会いと同様に、建物とも不思議な縁がある。(敬称略)
092(716)7125

2000/10/20

真っ赤な美容室 店員は1人 ANCH(アンチ)

福岡市中央区赤坂1-14-15赤坂共同ビル2F

 深夜二時、静まり返ったオフィス街で、バス通りから入り込んだビルの二階が赤く光っている。美容師の本田義晴(26)が、女子高生の髪にハサミを入れ始めた。彼女は自分でカットして失敗し「あした学校に行けない」と、方々を探したあげく、この店「ANCH(アンチ)」に駆け込んできたのだ。「困ってる人がいるのに、僕が眠いからと断れない」
 本田は店のポストカードにもこう書いた。「営業時間・体力と集中力の続く限り」
 別の店で働いていたころ、流れ作業での接客に疑問がわき「髪を洗いながら、その人の髪質を確認してカットしていくべきだ」と思い始めた。「何でも本田さんがやってくれたら」という客の一言で、三年前に独立。天神から徒歩十分の赤坂に店を構えた。
 店内に洗髪いすとカットいすが一脚ずつ。洗髪もブローも店の掃除も、すべてを本田一人でやる。「反対」を意味する「anti」からつくった店名、「革命」を想起させる赤一色にした内装にも、彼の挑戦的な姿勢が強く出ている。そしてそれが、この街に似合う。(敬称略)
092(725)8886