伝説の英雄たち・柔ちゃん


西日本新聞記事でふりかえる、あの選手の金鷲旗、玉竜旗。
[1989年7月24日掲載]
兄たちの夢、弟の手で。今年こそ大旗奪還。
東海大五の主軸 中村、本田選手 金鷲旗大会
「兄たちの夢だった金鷲旗。今年こそ、ぼくらの手で」――東海大五高(宗像市)主軸の中村行成、本田和之両選手(ともに二年)が燃えている。両選手の兄はともに昨年、優勝候補一番手に挙げられながら、三位に終わった同校主力選手。一年生として、目の前で兄たちの無念の敗退を見ているだけに、二人の弟は「今年こそ大旗を福岡に!」と意気込んでいる。

二人の兄は、中村佳央選手(現東海大)と本田勝義選手(同筑波大)。ともに大学でも柔道を続け、現在は全日本の強化選手としてバルセロナ・オリンピックをめざしている。二人を擁した昨年の東海大五高はインタハイなど全国大会を総ナメにし、金鷲旗奪還の切り札と期待された。だが、準決勝で大型ぞろいの東海大相模(神奈川)に敗れ、この瞬間から、弟二人の”雪辱戦”が始まった。

「兄に連れられるようにして柔道を始め、気がついたら同じ高校にいた」という二人。兄たちの跡を継ぐように中堅、副将としてレギュラーに座った。「スケールでは二年生だけに、兄貴二人にまだ及ばないが、精神面の強さは引き継いでいる」(山田剛部長)

シード校として登場した今年の同校は上宮(大阪)を退け、二十四日の3回戦では宇部工高(山口)に圧勝した。



[1991年7月16日掲載]
夏の大輪・金鷲旗高校柔道=「末弟」


●東海大五・中村兼三●

▼メモ
昭和48年10月18日生まれ。177センチ、71キロ、福岡市出身。得意技は内また、大外刈り。

高校柔道界で活躍を続ける東海大第五には、五年前の中村佳央(現東海大三年)以来、行成(同一年)、兼三と「中村三兄弟」が相次いで入学。ことしは末弟の兼三が、二人の兄の果たせなかった金鷲旗制覇を目指して、チームを引っ張っている。

長男佳央は一年生から金鷲旗に出場。2、3、3位が三年間の成績だ。二男行成は二年生のときに3位、三年生の昨年は、兼三も一緒に出場したがベスト8止まり。優勝の夢は兼三に託された。

兼三は、佳央が金鷲旗に初めて出場したときのことをはっきりと覚えている。

「出場校が多くて圧倒された。この大舞台に自分も出場したい」。当時中学一年だった兼三は、観客席で試合場に立つ自分の姿を思い描いていた。

兼三は、先を行く兄たちをしっかりした足取りで追っている。道程は決して平たんではなかった。同校のチームリーダーは一年の終わりごろから頭角を現すケースが多いという。兼三は”遅咲き”だった。

昨夏の金鷲旗には出場したが、インタハイではメンバーに入れなかった。秋から冬にかけての”全国転戦”で力を付け、正選手の座を不動のものにした。「この期間で一番伸びた選手」と森山誠監督を喜ばせた。

東海大の兄弟校などから約百人が参加した東海大相模高(神奈川県)での「年越し合宿」。兼三は、8キロマラソンでトップでゴールし、精神力の強さを示した。森山監督は「兄たちを見ながらコツコツと練習を積み上げた結果が出てきた」と兼三の頑張りを高く評価している。

神奈川県にある東海大の寮から、兄たちの激励の声が届いた。「金鷲旗で優勝し、目標にしていた二人を超えたい」。静かな語り口に末弟の闘志があふれていた。(手島)



[1993年7月22日掲載]
胸ときめいて…YAWARAちゃん、金鷲旗大会に初出場
「燃えました。あこがれの大会に出場できて、胸がときめきました」―バルセロナ五輪柔道の銀メダリスト「YAWARAちゃん」こと福岡工大付属高校三年の田村亮子選手(17)が、二十二日開幕した金鷲旗高校柔道大会に初めて出場、会場の国際センターの青畳を所狭しと動き回った。金鷲旗フアンで埋まった会場は、日本の女子柔道を背負う田村選手の軽快な技に大きな拍手と歓声を送った。

「金鷲旗大会は小さいころからテレビで見ていたあこがれの大会。高校最後の夏に夢がかなった」と田村選手は小さな体いっぱいに喜びを表した。高校一年の一昨年夏は世界選手権、昨年は五輪出場と大会日程が重なり、出場できなかった。

初戦では石川県・鶴来高校の谷内田選手(17)に抑え込まれそうになる場面もあり、一瞬ヒヤリとしたが、優勢に試合を進めて王者の貫録を示した。

チームメートの吉野千恵選手(17)も「高校生活最後の団体戦に田村さんと出られていい思い出になった」と、田村選手を狙う報道陣のカメラの放列に興奮気味。田村選手は九月にカナダのハミルトンで開かれる世界選手権への出場を決めており「金鷲旗大会の経験をバネに頑張ります」と笑顔でこたえていた。



[1993年7月23日掲載]
初陣田村、無差別級でも大技連発 金鷲旗高校柔道女子


”YAWARAちゃん”が登場するたびに観衆の、選手たちの、そして報道陣の熱い視線が第2パートに集中した。「相手が大きいのでいつもの倍以上の力が必要だった。力負けはしなかったけど、重く感じた」は本音だった。

金鷲旗初出場、しかも高校生相手とあって、先鋒の田村亮子(福岡工大付)にやや緊張感が走る。初戦の2回戦は鶴来(石川)。146センチ、48キロの田村に対し、相手の谷内田はひとまわり大きい158センチ、56キロ。小内刈りの有効に続いて、背負い投げで技ありだ。最後、谷内田の寝技にひやりとする場面もあったが「(絡めた足を)死んでも離さない」の気迫で、逃げ切った。

圧巻は3回戦。やや小柄な152センチ、55キロの小林(岡山東商)を開始8秒、鮮やかな背負い投げで仕留めた。「さすが」の声が飛ぶ。4回戦はシードの土浦日大。164センチ、56キロと見上げるような西部。やっと時間切れ寸前「思い切って足を出した」小内刈り。西部をあお向けに倒して、技ありだ。

「48キロ級の選手とは手の長さが違う。懐は深いし…」と田村。それでも、しっかり3連勝。「仲良しが他校にもいて、楽しかった」と笑顔ももれた。チームは土浦日大にその後、逆転されて、田村の最初で最後の金鷲旗は終わった。「悔しいけど、この悔しさを後輩が生かしてくれたら…」

バルセロナ五輪銀メダル。田村もその悔しさをバネに以来、フランス国際、全国高校選手権、東アジア大会、全日本体重別、そして金鷲旗と負け知らずの快進撃。「五輪の悔しさを忘れないことが大切だと思う」と言い切る。「前は頑張るだったけど、今は勝つという強い気持ちを持てるようになった」

一年で世界選手権3位、二年で五輪銀メダル。高校最後の三年で迎える八月の世界選手権(カナダ)。目標はただ一つしかない。(熊谷)

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