
株式会社エアーズ
代表兼クリエイティブ・ディレクター
吉﨑 和郎さん
今年の夏、シズル感いっぱいに3つの焼酎の飲み方を提案する高橋酒造(人吉市)の米焼酎「金しろ・しろ・銀しろ」の広告が目を引いた。これまで焼酎に縁がなかった女性にもファン層を広げて販売実績を上げた裏には、広告クリエイティブを販売現場に生かす戦略があった。今回は企画を担当した(株)熊日広告社の松岡賢一郎氏にも加わっていただき、クリエイティブ・ディレクターの吉崎氏にお話を伺った。
ー この広告について消費者やクライアントからどのような反応がありましたか。
吉﨑 高橋酒造の営業部門の方から「店頭での反応がいい」と評価していただいています。
新聞広告と同じ頃に流れたテレビCMでも、「金しろハイボール」「しろかき氷ショット」「銀しろちょい水」といった新しい飲み方を商品に合わせて紹介していました。新聞ではお酒が入ったグラスがメインビジュアルですが、内容はテレビと同じです。酒販店の棚でも同じように金、しろ、銀が並んでいて、お客様は広告を想起して手にとりやすかったのではないでしょうか。
夏のギフトや帰省のおみやげ需要も追い風になって、金・銀の「2本入セット」はパッケージの資材調達が注文に追いつかないほど売れたそうです。今は広告と営業の現場が連動してないと、なかなかモノは売れない時代だと思います。その点で成功した例だと言えるでしょうね。

松岡 広告と販促との連動はビール業界ではよく行われていますが、地方の焼酎メーカーではなかなかそこまで手が回らないという現実があります。その中で、高橋酒造さんは広告と営業の現場との連動性をずっと重要視されていて、我々からの提案も当然そこを意識したものになります。
3つのお酒があって、3つの違った楽しみ方があるという広告表現がシンプルでわかりやすかったので、酒販店さんもお客様にすすめやすかったそうです。これまで焼酎党じゃなかった方、とくに焼酎の男っぽいイメージを敬遠していた女性のお客様のご注文が増えているという声が聞けて、私たちも嬉しく思っています。
ー 広告が販売の現場で生きていると感じます。広告掲載にいたるまでのエピソードを聞かせてください。
松岡 この広告を出すことになったきっかけは、営業サイドから「これまでになかった商品だから、お客様に新しい飲み方を提案したい」という相談を受けてのものでした。
実は当初、新聞は予定されていなかったのですが、高橋社長(代表取締役社長 高橋光宏氏)をはじめ営業の皆さんと打ち合わせを重ねながら、より多くの方に商品を知っていただいて販売に確実に結び付けよう…と、広告出稿に至った経緯があります。

吉﨑 今年の夏は、節電を意識した広告が飲料業界でも多く見られました。企画当初はそこを意識したプランで進んでいたのですが、結果はそうでない表現に落ち着きました。というのも、広告の作り手は得てして時機を捉えた表現を使いたくなります。しかし、打ち合わせの中で、今年の節電が必要な社会背景にまで思いを至らせると、「あえてお酒を楽しむ場面と節電を結びつけなくてもよいのでは?」という意見があったからです。
高橋酒造さんの広告にディレクターとして携わってから15年ほどですが、学ぶことが多いですね。打ち合わせには社長も同席されることもあり、「売る側の主張や考え方を広告で押しつけない」というスタンスは私のクリエイティブのベースになっていて、高橋社長はいわば私の師匠です。
ー 高橋酒造のホームページで広告アーカイブを見てみると、東京のクリエイターもよく制作に加わっています。
松岡 高橋社長は常々、広告の質(クオリティ)は絶対に落としてはならないとおっしゃっています。そのために、東京で活躍するアートディレクターや映像クリエイターのキャスティングについてはかなり気を遣います。
先ほど吉﨑さんが師匠と言われましたけど、トレンドを商品開発や広告に採り入れていくセンスや、買う側の心理を読んだ細やかな配慮にはいつも驚かされます。我々はその要望に毎回応えていかなければなりませんから、気が抜けないです。
吉﨑 我々が東京のクリエイターと組んで仕事をするときは、ディレクションやプロデュースといった制作面だけでなく高橋酒造さんとのパイプ役、広報部的な役割を担います。会社の考え方や求めていることを彼らと共有することで、いつもいい結果を生んでいると思いますね。
トップクリエイターと組んで仕事ができるのは刺激になりますし、熊本にいながら新しいことにチャレンジする機会を作ってもらって感謝しています。