横尾記者横尾記者の読書歴

平成10年1月26日

横尾記者
「犯罪エリート集団」中島河太郎編(角川文庫)
 義理の妹の書棚から失敬。いずれ返す。この妹はなかなかの美人である。
「リヴィエラを撃て」高村薫著(新潮文庫)
 肩の凝らない本として何気に購入。有名な高村薫だが、初めて。上下2巻 をあっという間に読了。緻密な構成。ただし結末にやや不満。100点満 点では72点
「黄金を抱いて翔べ」高村薫著(新潮文庫)
 リヴィエラに続いて購入。数回に分け、県警本部記者室の仮眠室で読了。 さらりと読め良。ただ再読はしないだろう。
雑誌「ブブカ」(コアマガジン発行)
 取材相手と待ち合わせた際、時間つぶしに購入。ドトールコーヒーで読む 。巻頭グラビアは黒田美礼(胸が大きいことで有名なグラビアモデル)の昔のトップレス写真。さらには「最新裏ビデオ事情」「裏風俗の真実」や合法ドラッグ特集など。サブカルチャー系のフリーライターの雑文中心で、いわゆる、おげれつ系雑誌である。しかし私がこれを買ったのは以前扶桑社の「週刊スパ」(以前より愛読)で連載していた松沢呉一氏が、編集部ともめたあげく連載打ち切りとなり、活躍の場所をこの雑誌に移したことを知っていたからである。黒田美礼のファンだからでも裏風俗好きだからでも裏ビデオを宅配で頼んでだまされた経験を持つからでもない。断じて否。清廉潔白な私の人柄を見聞きしている人なら言わずと知れたことだが、不特定多数の方がアクセスする場所柄を考え、申し述べておく。ちなみに私の尊敬する松沢呉一氏の連載タイトルはずばり「萬珍楼」。初回のテーマは、バラバラに置かれた六人の男性の顔写真と、それぞれの局部の写真を神経衰弱方式で、風俗嬢に当ててもらうという企画だった。高尚なり。
別冊宝島「ザ・風俗嬢」
 1月22日夕、長崎市でバスジャック事件が発生。急遽応援取材に行く。一泊して23日午後、長崎市から帰る途中、JR長崎駅の本屋で購入。移動中読みふける。面白い。ちなみに私の担当は県警の中でも生活安全部と交通部。生活安全部というのは少年犯罪や消費者問題、覚せい剤、さらには風俗関連の事件(風俗店が未成年を雇っていたとか、裏ビデオを販売していたとか)を担う部署のため、こういった本も取材上の基礎知識を得るために必要なのである。ほんとなのである。
「ハンニム日本学研究第二集」ハンニム大学日本学研究所編
 日本について研究している韓国の大学の研究所の紀要。以前長崎原爆の連載のため韓国取材に行った時知り合った池明観先生が同研究所の所長をしており、国際郵便で届いた。

2月2日

横尾記者
「薬物依存症ハンドブック」(福井進、小沼杏坪編)
 仕事上の参考図書。取材相手から借りる。必要な部分だけ拾い読み。まじ めだね。
「図解 建設業界ハンドブック」
 同上。現在同僚に貸し出し中。うーん、まじめだね。
「竜馬がゆく」1巻と4、5、6巻(司馬遼太郎、文春文庫)
 1巻は、実家に帰った折り、書庫から引き出し寝る前に読んだ(習慣)。 456巻は自宅の書棚にあったもの。2、3巻を持っていないので中抜け状態。小生のいいかげんな読書姿勢を物語る。何度めかの再読で、内容は皆さんご存知。気が引き締まる思いである。チェストー。
「やっぱり危ない生保業界」(新美英男著、ぱる出版)
 やはり仕事上の参考図書。元生保外交員の不祥事を、業界の人から取材する前に、予備知識を得るために読んだ。こういった本の使い方は結構多い。私も結構まじめなもんである。
雑誌「太陽」2月号(平凡社)
 特集は「アジアのある暮らし」。アジアものの家具やうつわなどを生活に取り入れている人たちのお宅訪問b的記事。自身アンティークの家具が好き(洋もの、和もの共)で、アジア旅行の際に買った雑貨も結構あるので参考として購入。「太陽」「芸術新潮」「スタジオヴォイス」の3誌は特集次第で買うことにしている。この3誌は購入後永久保存版となるケースが多い(数年前の「ヴォイス」の故ゲンズブールの特集号など)。いずれもセンスは良い雑誌だが、安くはない。
「性器末コレクション」(山口みずか、イーストプレス)
 「はじめに断っておくと、これは「エロ本」でもまじめな「医学書」でもありません」(著者の前書き)。この言葉が全てを語っている。書名はワープロの変換ミスではない。中身は極めて単純。バクシーシ山下(抜けないAVを撮るので有名なAV監督ですね)や松沢呉一(著書にこの本と同じテーマを扱った翔泳社刊「魔羅の肖像」がある。私は持っている)や山田ゴメス(週刊スパの「バカはサイレンで泣く」などで執筆中のお間抜けライター)ら男性の「あそこ」を巻尺やカメラ、あるいはシリコン材による型抜きで測定し、それぞれの性遍歴と著者の一言をつけている。著者は東京都立大学を卒業後脱サラ(?)して風俗業界に入った人だが、自らの偏愛感情を極めてストレートな文章で語っていて好感を抱いた。人間は普通、両親のセックスによってこの世に生をうけている。でもそれにしてはセックスや生殖器といった、自らのルーツともいえる問題について語ることには、あまりに消極的だ。日ごろからそれがなぜだが疑問でしょうがない。というわけでクイズ。この本を読んだ後、私は自分の息子に巻尺をあてたでしょうか。正解者には横尾氏の特製プロマイドを進呈。う そ。

2月14日

横尾記者
「夜を賭けて」(梁石日著、幻冬舎文庫)
 ン・ソギル(梁石日)の新刊「血と骨」を丸善にて立ち読み。あまりの 面白さに思わず読み進む。「これは読まねば」と手にとるが値段2000円(税ぬき)をみて翻意。で、著者の文庫本の旧作を購入。本体724円。これまた痛快なピカレスクロマン。在日朝鮮人の生活を語る前半は「疾 走」とも言いたくなるようなスピード感のある筆運び。それが後半、突如として純愛物語に転調する。破綻すれすれの構成も奇妙な読後感を残しよし。傑作。
「ヘンなインターネット」(別冊宝島)
 インターネットではびこるマルチ商法、ねずみ講といった悪質商法から男女交際斡旋の実態までのルポ。福岡県警が、ねずみ講まがいの手口で会員集めを行っている「ペンタゴノ」の会員宅を捜索したので参考に購入。 別冊宝島はどれも面白いが、たまに筆者の力量にばらつきがある。この本も一部そういった傾向あり。
「タクシードライバー一匹狼の歌」(梁石日著、幻冬舎アウトロー文庫)
  映画「月はどっちに出ている」(いい映画でしたね)の原作として知られる著者の「タクシー狂躁曲」の続刊。原題「タクシードライバーほろにが日記」。一読、古本屋への売却決定。ここのところの私、かぜをひく、パソコン壊れる、いいことなし。
「血と骨」(梁石日著、幻冬舎)
  はり買ってしまいました。在日朝鮮人金俊平の数奇な生涯。著者の力業といいたくなるような筆力がぐいぐい読みつかせる。各所に書評も出ているので詳細略。戦前から戦後までの大阪の在日朝鮮人をとりまく環境も知 れ、ルポ的な魅力もあり。ヤン・ソギル、おそるべし。ぜひ。

3月3日

記者1
「フィッツジェラルドをめざした男」(デイヴィッド・ハンドラー、講談社文庫)
  再読。ミステリー。かつて才能あふれる若手作家としてデビューを飾ったものの挫折、今はスターの回想記を書くゴーストライター稼業の「ホーギー」。彼を主人公としたシリーズ作の一つ。わきを固める愛犬ルル、元妻の女優メリリーなど登場人物の性格描写がすばらしく、洒落た会話には思わずうならされる。現在日本では4作品が翻訳されているはず。最近、佐藤倫子記者と無駄話をしている時、ハンドラーの話が出たので読み直す。なにを隠そう隠すまじ、佐藤と私は実は同期の桜なのである。(ちなみに歳は違う)
「戦争の犬たち」(フレデリック・フォーサイス、角川文庫上下巻)
 風呂に入りながら本を読む。上品とは決していえないそんな習慣を持つ人が、世の中には時折いる。私もその一人である。この日は服を脱いでさあ湯船につかろうという時に、突如としてこの習慣を実行したい衝動にかられ、全裸のまま書棚に急行。「世界の宗教総解説」とこの本という何の脈絡もない2冊を天秤にかけ、結局こちらに決定。何度目かの再読を始める。それにしても書棚の前で悩む全裸の30歳男。客観的に見れば、たいそうけったいな姿であったことだろうなぁ(詠嘆)。
雑誌「九州版ManMan」(クスオ出版)
 知っている人は思わず顔を赤らめ、知らない人は一生涯知ることはないだろうという一冊。中身はまるごと、福岡の中洲を中心とした風俗店情報で、風俗嬢が顔出ししている写真も多い(親バレとかをまったく気にしない若い人は増えている)。本来は、欲望の街中洲に繰り出す若人達の道標。だが今回は、中洲の風俗店に対する取材のガイド本として購入する。取材は、大半が、客引きや経営者という男性相手だったが、ある店では、風俗嬢に直接話を聞く機会に恵まれた。ただその場所が営業用の個室のベッドに並んで、という状況で、つまりそういうことをなす場所なのであり、さすがにちょっと妙な気分に。いや私とて。で、取材後、再びこの雑誌を見ていたら、偶然、その女の子に再会。ありがとう。

3月9日

記者1
「官能本大全」(別冊宝島)
  こんな本ばっかり読んでるのかと思われそうですが、すいません、こんな本ばっかりです。サブタイトルは「細分化と過激化を極める『エロ雑誌』徹底ガイド」で、中身もその通り。ただ、「エロ雑誌界の講談社と小学館」英知出版と白夜書房など、出版社の特徴を紹介する「出版社の傾向と体 (ママ)策」のページは面白く、資料的価値もあり。かつてアラーキーも活躍していた『写真時代』の版元白夜書房には私自身、特別の思い入れがあります。すいません。
「さかさま世界史怪物伝」(寺山修司著、角川文庫)
 高校生のころに買ったなつかしい本。久しぶりの再読。やはり面白い。ラスプーチン、写楽にサド侯爵、サン・テグジュペリ、ネロ、などなど世界の偉人、天才を、寺山が斬る。偉人達のストーリーと自身の体験(フィクションも含む)を絶妙の間で織り込む技に脱帽。とりわけ、谷川俊太郎の 詩集『二十億光年の孤独』からの引用と、新宿の名も無き人々の挿話をクロスさせる「ニュートン」の項は絶品。 「万有引力とは ひきあう孤独の力である。宇宙はひずんでいる それ故みんなはもとめ合う」かっこいいのである。

3月23日

記者1
「秘密結社の手帖」(澁澤龍彦著、河出文庫)
  昔見たアメリカのコメディ映画。主人公が知人の車のグローブボックス(ダッシュボードの物入れ)を指差し「何が入ってんだ?」と言いながら開ける。すると、中から出てきたのは野球用の「グローブ」。画面はカメラ目線の主人公にパーン…なんともおまぬけ、かつアメリカーンなお笑いの一場面である。実はかつて本気でこの真似をしようと考えたことがある。が、グローブボックスという単語の認知度の低さに気付きやむなく断念した。うーん甘酸っぱい思い出ですね。で、私の車のグローブボックスはというと、今は澁澤龍彦の本が入っている(強引)。数年前に玉名温泉に行ったときに買った文庫版の1巻ものの全集で、湯船でいい湯だなとばかり途中まで読んで、その後ほったらかし。気分的には、何を守るんだが分からんが、お守りのようなものである。

もとい…澁澤龍彦である。この人ほど多彩な顔を持った人も珍しい。サド侯爵をはじめとするフランス異端文学の紹介者にして翻訳家。魔術・悪魔学の権威者であり、晩年は幻想文学の書き手でもあった。その交友関係も親友の三島由紀夫をはじめ、四谷シモン、横尾忠則などなど、各界の異才、お歴歴と、とにかくゴッつかっこいい人なのである。著者近影の写真でサングラスをかけているのがちょっと、ではあるが、同様のスタイルで写真におさまるので有名なあるジャーナリストのおっさんが私全く肌が合わないのに比べ、グラサン組でも澁澤は許す。いや積極的に認めたい、というぐらいのもんである。で「秘密結社の手帖」はといえば、著者があとがきで触れているように「秘密結社についての本格的な研究書が、日本ではほとんど出ていないので、例のごとく蛮勇をふるって一気に書いた…」という一冊。グノーシス派、薔薇十字団、フリーメーソンなどなど、秘密結社の系譜を語るその博覧強記、流麗な文章は「知的好奇心が満たされる」というよりはやはり「かっちょいいー」の仲間。俗に手帖3部作といわれる残り「黒魔術の…」「毒薬の…」もおすすめ。最近ここの読書録をみたわがS支局のK田記者から「それにしても延々とあいも変わらずエロばっかり読んでますねぇ」などと言われたもんだから、今回はまじめに書いたぞ。K田貸した金返せよ!何借りてない?そうか。ほんなら今日はこれくらいにしといたろ。


4月6日

記者1
「教科書でおぼえた名詩」(ネスコ/文芸春秋)、「風俗の人たち」(永沢光雄著・筑摩書房)、その他
  「教科書でおぼえた名詩」(ネスコ/文芸春秋) そもそも私、詩とは相性が悪い。人にたとえれば、「ワタシはあんたたち とは違うのよ」的な雰囲気を漂わせている頭のいい上にべっぴんの女、と いった感じ(分かります?)。確かにそそられはするのだけれど、その過 剰な自意識の匂いに、どうも反発を覚えるし、「こいつぁレベルが高いぜ 」と実は気おされてもいる、という風。今回は谷川俊太郎の詩集を買おう と珍しく一念発起したのだが、書店でその価格を見てあっさり翻意(こう いうの多い)、結局こんな「お得」本を買ってしましました。中学、高校 の教科書に載っている名詩を集めたもので、最初はなんと高村光太郎の「 道程」。僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる 懐かしいぞ。

「風俗の人たち」(永沢光雄著・筑摩書房) 「横尾さん、ほらあの『AV女優』を書いた永沢光雄の『風俗の人たち』 って本がいいですよ」。昨年まで同じ社会部にいて、今はT豊総局にいる A塚記者(女性)からそう教えられたのは結構前のことだった。読もう読 もうと思いつつ、肝心の題名を忘れ困っていたら、今度は友人でA新聞に いるM記者(ちなみに男性)が偶然「貸したげる」と持ってきてくれた。 類は友を呼び、エロスはエロエロ人間のネットワークを築く。というわけ でこの本、中身は女装プレイ、ホストクラブ、個室割烹などなど性風俗に まつわるルポ。厚い本だが読了はあっという間。乾いた筆致は賛否両論か 。ところで著者の永沢氏は30歳でフリーになったそうだが、前出のM記 者も実は今春A新聞を退社した。私もうすぐ31歳。考えさせられること が多い今年の春である。

その他 ▽「郵便局のゆくえ」(別冊宝島) 全国的に相次ぐ郵便局強盗。調 べてみるとそのほぼ全てが「特定郵便局」。とまあそんな取材にからんで 買った一冊。▽「対話 快楽の技術」(伏見憲明、斉藤綾子・ 河出文庫) 新刊で出たときに買おうかどうか迷った本。文庫化さ れたので購入。中身は今となってはさほどのインパクトはない。が、斉藤 綾子。性を語る言葉の「ナマっぽさ」にはやはりうならされる。きっと、 いい女なんだろうなぁ。バイセクシャルらしいけど。

▽「知らないと危ない『犯罪捜査と裁判』基礎知識」(河上和雄著・講談 社文庫) 毎日の岩松さんも書いていた。よくできた本。

▽「ロストワールド」(手塚治虫・角川文庫) 漫画史上に名高い名 作。最初の試作は手塚が中学生のころ。その冒頭には「これは漫画に非ず 、小説にも非ず。」とわざわざことわってあったそうだ。


4月27日

記者1
「快楽主義の哲学」(澁澤龍彦、文春文庫)、「秘太刀馬の骨」(藤沢周平、文春文庫)
  「快楽主義の哲学」(澁澤龍彦、文春文庫) 柄にもなく、哲学という言葉にあこがれた一時期があり、自分に合う哲学 者は誰だろうと探していたらエピクロスという人がいた。享楽主義などと いわれる哲学である。その時の私には「これだ」という確信がありました ね。勢い込んで大学の図書館に走った。ところが、そこには彼の著作は一 冊もなかった。今考えるとここが人生の分かれ道。そして私は哲学を追い 求めるのをやめ、ただのスケベえになった。なんとも悲しい物語である。

本書は、マルキドサドやカサノバら快楽追求界の巨人達の軌跡と、快楽主 義についての澁澤の自説を述べたもの。かなり昔の文章だが、今もその鋭 い指摘は魅力を失ってはいない。オレは守りに入っていないか、と改めて 考えさせられるのである。

「秘太刀馬の骨」(藤沢周平、文春文庫) 著者の藤沢周平は、前任の長崎を去る直前、いきつけの飲み屋のママさん から十冊ほどの文庫本を餞別としてもらい、初めて出会った作家。一読、 それまで「おっさんの読み物」とみなして「時代小説」を敬遠していた自 らの誤りに気付かされる。その作風は、英雄的人物の成功ではなく、市井 に生きる庶民を、上士ではなく下級武士の哀歓を。その点で司馬遼太郎と は好対照という気がしますね。今はぞっこん。相変わらず本の紹介にはな ってないが、まだお読みでない方はドラマ化もされた「用心棒日月抄」( 新潮文庫だったかな)から、ぜひ。


5月7日

記者1
「若きサムライのために」(三島由紀夫、文春文庫)
  「東京大学法学部⇒大蔵省⇒自殺」。一見「ノーパンしゃぶしゃぶの人たち」を想起させるこの経歴は、実は三島由紀夫の軌跡でもある。彼が自衛隊に突入し演説の上で切腹という道を選んだのは昭和四十五年。本書はその一年前に発行されたエッセー、対談集である。メインの部分は、伝説的週刊誌「平凡パンチ」(末期にはパンチザウルスというのもありました私愛読者でした)の姉妹誌「PokcketパンチOh!」という月刊誌に掲載されていたらしい。「オレは未来のために生きてんじゃねエ、オレのために生き、オレの誇りのために生きてる」。ベランめえ口調の三島がいかしてます。

5月11日

記者1
「Z(ゼット)」(梁石日著、幻冬舎文庫)、「宇宙の戦士」(ロバート・A・ハインライン著、早川文庫)、「最後の将軍」(司馬遼太郎、文春文庫)、「夏の闇」(開高健、新潮文庫)、「性人伝」(いその・えいたろう、徳間文庫)
  「Z(ゼット)」(梁石日著、幻冬舎文庫) 文庫版としては新刊。植民地時代から現代までの日韓両国を舞台に、歴史の裏側でうごめく闇の集団「Y組織」となぞの虐殺者Z、そしてひょんなことからこれに巻き込まれる主人公。展開はやや強引な感じもするが、物語が進むにつれ、どこまでが史実でどこからが小説なのか判然としなくなるところがまた読みつかせる。いいぞヤン・ソギル。

「宇宙の戦士」(ロバート・A・ハインライン著、早川文庫) ポールバーホーベン監督(結構好きな監督の一人)がこの本を元に映画「スターシップ・トゥルーパーズ」(原題通り)を制作、現在公開中、ということで久しぶりの再読。映画の予告なんかからすると、宇宙を舞台にした冒険活劇、といった感じだが、少なくとも原作に関していえばこれは全くの誤り。この本はハインライン先生の道徳教育書で、少年が軍隊に入り一個の人間として成長していく過程を追った書である。「暴力は歴史上、ほかの何よりもまして、より多くの事件を解決している。その反対意見は希望的観測に過ぎぬ。この事実を忘れた種族は、その人命と自由という高価な代償を払わされてきた」……保守反動的思想を持ったSF作家として知られるハインラインの主張ばりばり。初心者の方は名著「夏への扉」(この小説をモチーフにした同名の曲が山下達郎にあります)をすすめます。

「最後の将軍」(司馬遼太郎、文春文庫) 寝る前に必ず本を読むという私の習慣を知っている母が、実家に帰った際「NHKの今の大河ドラマ慶喜の原作よ」とうれしげに持ってきた一冊。特に言うことなし。

「夏の闇」(開高健、新潮文庫) ナイトキャップとして。

「性人伝」(いその・えいたろう、徳間文庫) 「てかけ(妾)13人半のa女極道b黒田政治」「おとこ一筋のはみだし男色人生 永登元次郎」などなど性の巨人たちの聞き書き。再読。


5月18日

記者1
雑誌「ランキング大好き」(asAyan6月1日増刊号)、「昭和・平成 家庭史年表1926ー1995」(家庭総合研究会編、河出書房新社)
  雑誌「ランキング大好き」(asAyan6月1日増刊号)  雄々しく、毅然と、そして貴族的とさえいえる態度。本屋でエロ系書籍を買う際の、私の立ち居振る舞いに関しては、すでに定評がある。そーんな私にとって、たとえコギャルが表紙でにっこり微笑んでようが、女性誌コーナーがめちゃ混みな上に、隣の女から冷たい視線を送られようが、この程度の雑誌を買い求めることなど、「ヘ」のようなもんである。そうなのである。  サブタイトルは「売れてるイケてる女子高生1万人がつくるなんでもランキング」。実に中身そのまま。何の工夫もないぞ。「今日はキスをキメるぞという時につけるリップベスト5」(1クレージュ。2M.A.C。3マリークワント。4ピエヌ。5シャネル)(知ってどうする) 「女子高生に大人気のお菓子総合ベスト5」(1メンズポッキー、2トッポ、3紗々……)(だから知ってどうする)「Hの時に聴きたい曲は」1位夜空ノムコウ(明日から覚える)……などなど、なんでもあり。実際、だからどうなんだの世界ではあるし、統計の信憑性もかなりアヤシイ。極めてあやしい。多分うそだ。が、にしても結構へらへら読んでしまうのである。定価390円。なんとも微妙な価格設定。あと100円高かったら買わなかったけどね。

「昭和・平成 家庭史年表1926ー1995」(家庭総合研究会編、河出書房新社)  昭和という激動の時代を年表形式で記した本は数あれど、これは政治、経済、というありがちなマクロな視点でなく、「家庭」という視点から歴史を読み解く珍しい本。編者は「歴史は日常の蓄積であり、その日常は家庭を基軸にして回転している。とすれば、家庭という視点を抜きにしては生きた歴史は語れないのではないか」と語る。定価税抜き4900円。高い。実に高い。しかも平成2年の初版の内容に、戦後50年の節目を含む平成分を増補した改訂版なのである。が、実はこの初版本を前任地の長崎時代の先輩が持っていて、その内容のよさに「くださいくれませんかちょうだい」と言い続けていたにもかかわらずその先輩がくれず(当たり前か)、しかも書店でも見かけることがなかったせいで、このたび丸善で発見した時には思わず速攻レジまで走ってました。「昭和22年 都庁が職場結婚を公認、祝儀も6000円」「昭和37年 完全週休2日制が下関の町工場から始まる」「昭和44年 ナマ肉ブームで馬さし・鶏さし・牛さしも」……見てるだけで勉強になります。


5月25日

記者1
危険な思想家」(呉智英著、メディアワークス発行)、深夜プラス1」(ギャビン・ライアル、早川ミステリ)、実録『仁義なき戦い』戦場の主役たち」(洋泉社MOOK)
  「危険な思想家」(呉智英著、メディアワークス発行)
呉智英(くれ・ともふさ 「ご・ちえい」も可)は私の大学生時代の恩師である。もちろん直接教授を受けたわけではない。が、彼の著作はおそらく全て読んでいる。その影響は大で、読書の仕方という意味でも、1982年に出た「読書家の新技術」(現在は朝日文庫で文庫本化されているのでぜひ)からかなりの影響を受けた。おかげで歴史学でいえば網野善彦「無縁・公界・楽」、阿部謹也「ハーメルンの笛吹き男」など良書と知り合うことができた。(ただ理解はいまいちしていない。していたら学者になっている)
今回久しぶりにでた新刊を読んでも、やはり刺激的な言説は変わっていない。たとえば オウム事件の評価。 「宗教について、政治について、我々はその本質を見据えることなく、安定した市民社会の論理で解釈してきたのだ。しかし、宗教の本質は狂信なのだし、政治の本質は統治なのである。それを忘れてきたことへの宗教からの復讐がオウム真理教事件なのだ」。
シンプルである。ここから、「人権イデオロギーに酔いしれ惰眠をむさぼってきた寝ぼけインテリども」への痛烈な批判が続く。容疑者や被告人の人権を擁護すべきだとあれほど喧伝してきたいわゆる「人権派」の弁護士や評論家たちが、オウムの坂本弁護士事件においては、警察は「もっとはやく突っ込むべき」だったとのたまうことを、これでもかと批判する。痛快である。
呉は週刊文春などで「私の暴論」などといったタイトルの挑発的な雑文を書いているせいで、毛嫌いする人もいる。1946年生まれ、早大を71年に卒業した全共闘世代。おんぼろアパートに住み、独身で、しかも頭の方もかなりさびしくなっているし、血液型はと問われても「尾張藩士型」と答えるひねくれものである。加えて、あの中島みゆきの熱狂的ファンときている。が、まんが評論を含めその該博な知識は相当なものだし、日常の中で忘れられがちな物事の本質を、直言する切れ味はかなり鋭い、と私は思う。批判資料としてでもいい。ぜひ1冊読んでいただきたいものである。私はこの人が好きだ。

「深夜プラス1」(ギャビン・ライアル、早川ミステリ)
何度めかの再読。かつてレジスタンスの闘士だった主人公はある人物をパリからリヒテンシュタインまで護送する役目を請け負う。タイムリミットは午前零時。相棒はアル中のガンマン。追いすがる暗殺者は業界では彼らのさらに上を行くプロフェッショナル達。やがてこの深夜行をめぐる秘密が解き明かされて……といった内容。味わい深いエンタテインメントの名作。しかも主人公が駆るのはシトロエンDS。私元々シトロエンが好きだった(かつて乗っていたこともある)もんで、よけいによろしい。
「実録『仁義なき戦い』戦場の主役たち」(洋泉社MOOK)
戦後やくざ抗争史上最大の広島抗争を元にした映画「仁義なき戦い」。その第1作上映から25年ということで、本屋にいくとあやかり本が結構置いてある。この本は、映画の原作となった飯干晃一の小説「仁義なき戦い」の視点とあわせて、当時抗争の渦中にあった人の新証言、日記を元に事件を再検証しようという本。映画の登場人物の本物と、それを演じた役者の写真がならべてあったりして、映画、小説ともに大好きな私にはよい。資料価値もある。


6月1日

記者1
「不夜城」(馳 星周著、角川文庫)、「修羅を生きる」(梁石日著、講談社現代新書)
  不夜城は、文庫本が本屋に平積みしてあったので何気なく買ったのだが、単行本は'96年8月の発行というから大概遅ればせながら。でまぁ感想を一言でいうとめちゃくちゃ読みつかせる本で、夜中から読みはじめて、結局朝方まで 一気読み。ああまたやってしまった、というやつ。新宿歌舞伎町を舞台に、台湾人と日本人の間に生まれた主人公が、チャイニーズマフィアの間に抗争に巻き込まれるクライムノベル。たしかに第一級のエンタテインメントとは思うが「上質なエンタテインメント」かというとどうかなという感じ。誰にも心を許さず、平然と嘘をつき、「孤独」の意味さえ知らない。そして生き残るためにはどんな冷酷なことでもできる……登場人物に共通しているこの人物設定の「ざらざら感」がやや単調というか、私にはちょっと……。まあ好みの問題ですが。とまれ、この面白さは文句のつけようがないし、特に安価な文庫本で、ということでなら万人にお勧め。なお作品はこの夏映画化。監督は『世界の涯てに』の李志毅(リー・チーガイ)。主演は日本でも人気の金城武。大ヒットした映画『恋する惑星』の、というか、「LIFEカード」CMのあのハンサム君ですな。なお「修羅に生きる」の方はこの発展版というべき「夜を賭けて」「血と骨」の2冊を読んでいるので特にコメントすべきことなし。

追伸1
ところで「不夜城」の作中、主人公がねぐらにしている店の奥にある小部屋を語るくだりで、私の好きなミステリー作家ジェイムズ・クラムリーの「酔いどれの誇り」(早川ミステリ)からと思われる引用 部分があったので、ちょっと調べてみると、この馳星周。冒険小説に造けいが深く書評家としても有名な内藤陳経営の酒場「深夜+1」で昔バイトをしていたらしい。ちょうど私「深夜プラス1」を読んだばかりだったので妙な縁を感じる。

追伸2
最近ちょっと手元に未読の本がありすぎる。今も、70年代からの朝鮮現代史を描いた「二つのコリア」(ドン・オーバー・ドーファー、共同通信社)を買い、M社の友人からは話題の「三本の矢」(まずは上のみ)を借りてしまっている。が、最近、ここに書いてる原稿量の方が本業を完全に上回っているような気がするし、どうも気のせいではなさそうなので、職業人としての自覚を取り戻さなくてはならぬ。しばらく本業に精を出そう(クビになる)

クビにはならない!←編集部注

大量の読書量に裏打ちされた少量高濃度な原稿を書けば解決する問題なのでは?どんどん読書して、このコーナーに余徳を与え、さらには本業にも還元されますように!がむばれ、雑学魔王・横尾記者

6月17日

記者1
「知的障害者の恋愛と性に光を」(障害者の生と性の研究会編著、かもがわ出版)、「オンナたちの『体験取材』」(双葉社好奇心ブック)、「ウラ東京観光レ」(別冊宝島)、「三本の矢」(上)、大衆食堂の人々」(呉智英)
  「知的障害者の恋愛と性に光を」(障害者の生と性の研究会編著、かもがわ出版) 障害者の性の最前線をルポした「障害者が恋愛と性を語りはじめた」の第二弾。前作(まだ手に入れていない。重版の予定なしという。困る)が身体障害者を主題としていたのに対し、今回は知的障害者。私が読むてえと、ただの猥本と勘ぐられそうであるが、失礼なことをいっちゃいけない、これはまじめな本です。だいたいタイトルの野暮ったさ(失礼)に、書き手の誠実さというか、巧まざるズレ具合(これまた失礼)がにじんでるでしょ。障害者がAV男優として出演するアダルトビデオの作り手「V&Rプランニング」(以前出てきたバクシーシ監督もここですね)への取材や、セックスサービスを行っているオランダのボランティア団体「SAR」(公的補助がある!)の紹介などなど、めっちゃ濃い内容。いいです。さらにこの本のいいところは、書き手の側が、くだんのAVを見たり、有償で障害者のセックスの相手をするSARのボランティア女性にインタビューするんですが、そのたびに真摯に悩むんですな。書き手はほんとは批判的な立場に立ちたい。立ちたいんだけど、一方では健常者のように、たやすく恋愛できない、ソープランドに通うことだって難しい、そんな障害者の現実がある。それを知っていて、その現実に向かい合いたいからこそ、良識派の喜びそうな画一的な判断を下すことには躊躇してしまうのです。実にいじらしい。この本は「恋愛と性」というきわどい角度から、障害者が抱えている問題に切り込みます。「性」というジャンルを避けがちな社会の風潮に対し、リアルな現実をもってする強烈なカウンターパンチ、と言えばちょっと誤解を招くでしょうか。健常者にとっての「売春」が必要悪(あるいは不必要悪)だとすれば、障害者の場合はどうか。むしろ障害者にこそ、「売春」は必要なのではないか。そも、売春とは何か。ぎりぎりの問いかけが、読後も長く残ります。貴重な仕事。脱帽です。

「オンナたちの『体験取材』」(双葉社好奇心ブック) 舌の根も乾かぬうちに、またもや猥本(バカ本)です。あいもかわらず。男ならよくある風俗レポートものを女性ライターにやってもらおうじゃないの…という一冊。「テレクラ男を片っ端から引っ張り出す」だの「横浜『カップル喫茶』で見たコトやったコト」だの「誰が考え出したのこんなすごいテクニック『講習』を受けて初めて知ったソープ嬢の真実」だのといった気持ち良さソーな企画てんこ盛りで、面白いです。すいません。慾を言えば、女性ライターの顔写真入りだといいのに、という個人的感想もあります。すいません。

「ウラ東京観光」(別冊宝島) 東京に行く機会があったので、なにかないかしら、という思い付きで買った本。役立たず。

「三本の矢」(上) 前回告知した借りた本。話題作で、各所で書評は出ているので、特に説明はなし。ストーリー自体はなかなか面白いし、官僚の世界の内幕をリアルに描くという意味では(私は知らないが)よくできているんでしょう。ただ、あんまり好きになれませんでした。書き手の鼻持ちならない感じが漂ってます。過剰反応かもしれませんが、これは直感だからしょうがない。そういうもんです。

「大衆食堂の人々」(呉智英) この本かなり前に買ったんです。で、私、実は恐ろしいことに気付いたんです。とにかく中身をほとんど覚えていないんです(以上、川上宗薫風に)。つまりこれは、本を読んでも私の頭には何も残っていない。私の場合の「読書」は実は瞬間的快楽に過ぎないのではないか、という恐ろしい仮定につながります。おおこわ。タイトルの柔らかさに比して、中身は結構ちゃんとした評論。ダダ漏れの脳みそを両手で押さえながら、本日も終了。


7月12日

記者1
「異端の笑国<小人プロレスの世界>」(高部雨市著、現代書館)、「タイソンはなぜ耳を噛み切ったのか」(井上一馬著)、「ポケットに名言を」(寺山修司著、角川文庫)、「性技実践録」(下川耿史著、河出文庫)
  「異端の笑国<小人プロレスの世界>」(高部雨市著、現代書館)
 小人プロレスを初めて知ったのは中学生のころ、エロ雑誌であり、サブカル雑誌でもあった「写真時代」の写真グラフの中であったと記憶している。成長ホルモン異常で身長の伸びの止まった彼らは女子プロ巡業に帯同して、正規の試合の合間に小人同士のコミカルな試合をみせる。アラーキーらの扇情的な写真の中で、モノクロの小人レスラーたちの姿は異彩をはなっていた。本書はその小人プロレスもののルポ。ただし、読後感はめっぽう重い。というのもこの本は小人プロレスという素材をかりつつ、自身の差別意識に悩む高部の内的葛藤を記した本なのだから、である。たとえば高部が自分は双子の片割れであることを語るくだり。高部は双子として、自身を「異端」と感じ生きてきたのだという。読者の私からすれば「そんなこたあどうでもいいぞ」の世界なのだ。しかし高部にとっては、自分を小人たちと同じ「異端」の世界の住人とみなした上でなければ、小人プロレスという「見世物」に向かい合うことができなかったのだろう、という事はわかるのである。類書がなく、貴重な本だが、白木みのるが異常に好きだとか、映画「ブリキの太鼓」が異常に好きだ(私だ)といった好事家にしかお勧めはできない。初版1990年。現在も重版はない。
「タイソンはなぜ耳を噛み切ったのか」(井上一馬著)
 題名通り、この本は「マイク・タイソンはなぜイヴェンダー・ホリフィールドの耳を噛み切ったのだろうか」という一文から始まる。1997年6月、世界ヘビー級タイトルマッチのリング上で、タイソンは何と、対戦相手のホリフィールドの耳を食いちぎった。長いボクシング史上でもおそらくは初めてという前代未聞のアクシデントに、私自身当時、仰天した記憶がある。この「なぜ」を著者は「喪失」というキーワードで解き明かそうとする。タイソンの少年時代、ボクサーとしての育ての親カス・ダマトとの出会いと死別、結婚生活とその破綻、レイプ事件と収監、イスラム教との出会い……破滅向かって突き進んでいくタイソンの人生の軌跡を冷静な筆致で積み上げる。問題の日に向かい、きりきりとしぼりあげていく手法は、意外性はないもののかなり手堅い。題名にまずひかれ、著者略歴に私の好きな映画監督ウディ・アレンに関する著書をみつけて購入を決めたのだが、結果は正解。7月1日初版。文庫書き下ろし。 「ポケットに名言を」(寺山修司著、角川文庫)
 どうせあたしをだますなら 死ぬまでだましてほしかった(西田佐和子「東京ブルース」)、貞淑とは情熱の怠惰である(ラ・ロシュフコオ伯爵)、花に嵐の例えもあるさ さよならだけが人生だ(井伏鱒二「詩集」) 「性技実践録」(下川耿史著、河出文庫)
 「スワッピング歴30数年、セックスメートの名で知られ、交際したカップルは2千組を超える」。そんなとんでもないじいちゃんの聞き書き。河出文庫はこの分野の文庫出版に意欲的で非常に好感が持てる。俺だけか。

8月6日

記者1
「ナイトホークス」「ブラックアイス」「ブラックハート」「ラストコヨーテ」「ザ・ポエット」「トランクミュージック」(いずれもマイクル・コナリー著、扶桑社ミステリー)、「トラブルバスター」(景山民雄著、たぶん角川文庫)
  「ナイトホークス」「ブラックアイス」「ブラックハート」「ラストコヨーテ」「ザ・ポエット」「トランクミュージック」(いずれもマイクル・コナリー著、扶桑社ミステリー)
 久しぶりに「引き当てた」といった感じですなこれは。おそらく海外ミステリーの紹介本や書評ではよく知られてるんでしょうが、私の場合の出会いは偶然でした。7月中旬に行った沖縄の空港の売店でふと手に取ったのがきっかけ。で、ところがこれが、一度読みはじめるとめちゃくちゃ面白いんですわ。読み付かせるのなんの。1作目からはまってしまい、あっという間に読破、読破。2作目の「ブラックアイス」以外は全て上下2冊本という長編揃いだというのに。現在最新作「トランクミュージック」(今年6月末刊行)に突入。これが最後かと思うと惜しくて、思わず読む速度をスローダウン状態。で、シリーズの主人公ハリー・ボッシュはロス警察刑事。殺された売春婦の母親を持つという生い立ち、組織になじまずトラブルばかり起こす孤独な男、そしてベトナム帰り、という設定でハードボイルドの主人公としてはありふれてます。しかし、この作家の場合、プロットの綿密な構成がすごいんですな。特に上にあげた中で唯一の単発もの「ザ・ポエット」にそれが顕著。犯人のモノローグと三人称話法を使い分け、かつ話の後半では真犯人推理を二転、三転、いや四転、五転させつつ最後まで破綻なく読ませまる。力技です(同じ警察ものの「新宿鮫」シリーズを思い出させる)。蛇足ながら、作中ハリーと愛し合うことになる女性がいずれも魅力的。なぜか全員小振りな乳房。知性的な人物設定の影響なのか、作者の好みか。私なら……それはどうでもよい。とにかく読んでいないかたはぜひどうぞ。大おすすめ。

「トラブルバスター」(景山民雄著、たぶん角川文庫)
 先日、kazu三浦氏の歴史的な無罪判決を聞いた時、私の脳裏にひらめいたのは、判決の重さとはまるで逆ベクトルにる「フルハム三浦」の名前だった。かつて放送していたフジの「おれたちひょうきん族」。「フルハム」はその番組の中で、景山民雄が名乗っていたリングネームなのである。芸能人がまじめにプロレスをやるというくだらないコーナーで、景山は当時はkazu三浦氏のものまねをする出たがり構成作家としてリングにあがった。確かまじでわざをかけられ、肋骨を折った。至極感心した(もしかしたらそれは紳介だったか)。で、ちょっと古いが景山本。フルハム三浦よ永遠に、というひとりよがりの思いと共に。

「カフカのかなたへ」(池内紀著、講談社学術文庫)
 学生時代に、全集を図書館で読破しようとして(予想通り)見事失敗した、というほど思い入れがある作家なのである、私にとってカフカは。だって書簡集ばかりなんだもの。で、この本の中身は素人にも読みやすい随筆風のスタイルをとったカフカ研究といった感。たまにはすぐに読み切ってしまわないようなまともな本を読まねばと思い購入。予想通りなかなか読み切らず。自らの眼力のすごさを改めて認識する。実に後ろ向きな特殊技能。ところで俺は変態ではないぞ佐藤。だけどくれるというものは全部もらうぞ槌田女史


8月16日

記者1
「誰が新井将敬を殺したか」(大川豊著、太田出版)、「科学捜査の現場」(須藤武雄著、講談社+α文庫)、「犯罪小説集」(谷崎潤一郎、集英社文庫)、「愛の試み」(福永武彦著、新潮文庫)
   「誰が新井将敬を殺したか」は、あのお笑い集団「大川興業」の大川総裁の本であるが、これが爆笑。久しぶりに政治がらみでこんな笑わせてくれる本に出会ったという感じですな。とりわけ大爆笑は大川いわくの「インディーズ候補」の項。主に参院選を舞台にした、いわゆる「電波系」のきっつーい候補の選挙公報コレクションなんだがこれがごっついです。たとえば平成元年7月の参院選に出馬した三井理峯候補(東京都)。主張の中身は「三井理峯はドン底で病気になって医療費がなくても選挙買収のサグリの世論調査を突っぱねた。この立候補の最大の目的は後生掛温泉を命からがら逃げ、こんな暴力団旅館をNHK・秋田放送をやられ知らずに行って毒殺されるといけないからである(ママ)」。がはっは。意味がわかんねえぞ。さらに最後のキメは「東京が恋しく、街頭でお目にかかれるのを楽しみにしている」。いいねえ。さらに三井先生、平成3年の東京都知事選では「夏休みの学習は有害禁止」「公立料理教室 栄養素=病名=道※と大巾に改革する 例 にしんを食べると怒らない」(※は判読困難)との主張を展開。くっくっく。とにかくこの本、こんなとんでもない面々の公報をしっかり集めてます。

 私もかつて「オカマの東郷健」とか、選挙公報は面白がってみてたくちですが、大川の「政治おたく」ぶりは徹底してます。たかがお笑いとなめてはいけません。結構鋭い指摘もそこかしこに。元々は「政治家プロファイリング」という題名で出すはずの本が、新井氏の事件で、こんなキャッチーな題名になってしまったよう。いいです。「科学捜査の現場」はこれ全編、陰毛の話です。あまり夏向きではないですな。著者は元警察庁の科学警察研究所室長。毛髪鑑定のエキスパートがとにかく毛について語ってます。軽い読み物で飲み屋での話のネタにはなります。原題は「マリリンの毛はなぜちぢれていたか」だそうで、こちらの方がしゃれてましたな。ちなみに陰毛は毎日0・2ー0・3ミリ伸びるけれど10ミリ以上あるのはまれで珍品とされるらしいです。皆さん、うつむいてみてください。

 「犯罪小説集」は、たまにはこういった本も読むか、といった程度の本。「愛の試み」は福永先生が愛について語った本。愛について考えてます、私。(そうくるか、おい)

今度読書録の面々と、オフ会といういうか飲み会を一度やってみたいですね

(メディア部返信→いいですね。このページの発案者にも声をかけて、歴代出場者を含めて、総決起集会←何を決起するのか。開きましょうか。その模様は、このページを見てくださるみなさんにも公開するつもりです)

9月14日

記者1
「風俗バンザイ」(松沢呉一著、創出版)、「ルパン三世」(中公文庫コミック版)、「LAコンフィデンス」上下巻(マイクル・コナリー、)、「宇宙の小石」(アイザック・アシモフ、早川SF)、「黒い憂鬱」(シェルビー・スティール著、五月書房)
  なんとなく仕事が気ぜわしく、更新が大変遅くなりました。「風俗バンザイ」は敬愛する松沢氏の本。雑誌「創」の連載「魔境の迷路」のボツ原稿を中心にまとめたもので、当然ここでいう風俗は性風俗。趣味と実益を兼ねつつの自腹をきっての風俗取材、3年間の蓄積がどばっと吐き出されております。「ルパン三世」は、最近「パンチザモンキー」というCDを買って、ルパン三世ばかり聴いてたもんだから、つい、という購入理由。「LAコンフィデンス」は映画を見る代わりに。「黒い憂鬱」は現在アメリカでは最も著名な黒人作家であり英文学者というスティールの黒人問題についてのエッセイではありますが、正直いって今の私には基礎知識が不十分で、楽しむというところまではいきませんでした。人種差別解消政策と反比例するように黒人の大学生の中退率が上がり、犯罪率も上昇する皮肉な現実を、黒人の立場から説得力のある筆致でみせてくれます。ほんと、もうちょっと基礎知識があればいいのになあという思い。そのうちまた読み返したい。

10月9日

記者1
「Cの福音」(楡周平、宝島社文庫)「幼年期の終り」(アーサー・C・クラーク、早川SF)『照柿』(高村薫)「性女伝」(いそのえいたろう、河出書房)「夜消える」(藤沢周平、文春文庫)
   「Cの福音」・・・・・ 最高のクライムノヴェルといういうふれ込み。大藪春彦の「野獣死すべし」そして「新宿鮫」をひきあいに出したべた賞めの解説と帯びの宣伝文。信じた私がばかでした。こけおどしの駄作と断定させてもらいます。主人公は、おのれの力のみを信じる一匹狼、朝倉恭介。物語は、朝倉がアメリカのイタリア系マフィアと結託、日本に構築したコカイン売買のネットワークをめぐり進行します。ところがそもそも、主人公の朝倉恭介がなぜ、アウトサイダーの道に飛び込んだのか、その平板な文章ではさっぱり理解できず、人物描写はあまりに薄っぺら。主人公にまるで魅力を感じられないのだからどうしようもありません。しかも、物語の肝となるコカイン売買ネットワークにしても、登場人物がしきりにいうほど「完璧」「安全」とはとても思えないしろもの。つまり物語は完全に破綻しとります。中国系マフィアやドラッグ、銃器、パソコン通信など物語を支える重要な脇役の描写にも何の新鮮味もないというありさまで、こんなもんに、引き合いに出された大藪春彦も気の毒。しかもよく考えてみれば主人公の名前も大藪の「蘇る金狼」の主人公朝倉哲也と「凶銃ワルサーP38」衣川恭介の合成人間状態。続編もあるようだが、誰が読むかっちゅーねん。あー腹立つ。

 「幼年期の終り」・・・・・ある日、宇宙船群が現れ、地球の空を覆う。地球に降り立った、高度な文明を持った異星人。彼らの真の的は、そして人類の運命は…… まさに人類の「幼年期の終わり」というべき怒涛の結末。圧倒的スケールと漂う詩情。クラークといえば「2001年宇宙の旅」。しかしこちらが最高傑作との声も根強い。数年ごとに読み返してます。うーん名作。

 「照柿」・・・・私にとっては、ようやく高村薫の真髄に触れたかなという感じの一作。ストーリーを破壊しかねないきわどさで、ほとんど描写だけが「暴走」してます。私の嫁はんの言葉を借りれば「太陽がいかに黄色かったかを、延々としかも濃密に書いた作品」。すごい本ですな。

・・・・・・・祝「極私的なストレス発散の場」復活・・・・・・・


10月23日

記者1
「トンデモ一行知識の世界」(唐沢俊一著、大和書房)、「ナイトドッグズ」(?、ハヤカワ文庫?)、「笑う山崎」(花村萬月)、「裏モノの本3」(三才ブックス)、「愛より速く」(斉藤綾子)
   「トンデモ一行知識の世界」(唐沢俊一著、大和書房)、「パソコンについているマウスの移動距離の単位を『ミッキー』という」「象の発情期は5年に1回である」といった実にどうでもいい、何の役にも立たない短文情報を寄せ集めた本。会社のバイト君が読んでいたのを無理矢理奪い読んだ。面白い。(梶野君こんどジュースをおごってやるからな。特別に2本サービスする)。一番感銘を受けたのはこの一文。「白系ロシア人とは、白人とは関係なく、ロシア革命のとき反革命側についた人、つまり赤でない人のこと」。

「裏モノの本3」……特集は「サルでもわかるカード詐欺」。「10分で2万8000円!原発の超危険ゾーンで働く」「日本海N港でロシア女性が五千円で売春している」「新薬実験モニターで暮らす方法教えます」などの体験ルポ満載。面白い。しかしこの三才ムック。いつもこんなくだらない本を出している。なんとも好ましい出版社である。

 「ナイトドッグズ」(?、ハヤカワ文庫?)、今本屋で平積みされている。解説を書いていたのが、私の好きなジェイムズ・クラムリー。しかも、べた賞めしていたのでついつい購入。前回紹介した駄作「Cの福音」とは違ってこちらは期待通りの力作。主人公はまたもやベトナム帰りのロス市警パトロール警官。しかも元グリーンベレー。この設定だけを聞くとかなり荒唐無稽な感じがするが、中身は極めて渋めでリアル。重大事件を中心にすえた物語展開ではない、というよりもパトロール警官の日常が、延々と続くのだが、これが読みつかせる。おすすめ。

 「笑う山崎」(花村萬月)は気になっていたのだが、読む機会がなかった作家。この本でようやくお近付きに。読むにつれ故神代辰巳監督で映画化もされた北方謙三「棒の哀しみ」(かなり好きな小説)を思い出す。全体としては面白く、実は夜中に一気読みしてしまったのだが、なんとなく、作家に対する評価は保留したくなる感じ。もうちょっと読んでみよう。斉藤先生の「愛より速く」は文庫化されたから手に入れておくか、といった購入理由。再読。エッチですな。


11月5日

記者1
「現代英米 性俗語辞典」(B・マコンヴィル/J・シアロー、河出書房新社)、「探偵物語」(小鷹信光)、
  「現代英米 性俗語辞典」(B・マコンヴィル/J・シアロー、河出書房新社)  以前劇場で見たアメリカのコメディ映画(確か「裸のガンを持つ男」の続編だったと思う)で、こんなシーンがあった。主人公が夜中に人の家に忍び込み、探し物をする。次々とクローゼットを開けていく主人公。するとある引き出しでついにお目当てのものが見つかった。主人公、思わずにやりとカメラ目線、そして一言大声で叫ぶ「ビンゴ!」。ところが引き出しから取り出されたのは「ビンゴカード」……「bingo」という単語が口語で「やったぁ」という歓声を意味する事をもじったジョークでした。偶然意味を知っていたその時の私は「タイミングよく笑え」、思わず一人「知っててよかった」と暗闇の中で胸をなで下ろしました。とまあそういうことで、今回は「現代英米 性俗語辞典」です。さきほどの映画の話と「性俗語」の本との間には飛躍があるのではないかと感じたあなた。細かい詮索ばかりしていると将来孫に嫌われます。すっとばしていきましょう。で、この本は英米で使われている性に関係したスラングを集め、解説をつけた本です。一読、まあとにかくどんな言葉でもスラングになるもんだねやという感じ。「french kiss」程度ならそりゃ知っとるし、私も嫌いじゃないが「french letter」が「コンドーム」を意味するとは、そりゃ知らんぞなもしという感じ。フランス人も迷惑だろうと思っていたら、実はフランス人の方も「capote Anglais」(イギリスの縁なし帽子)という言葉で避妊具を表現して仕返ししているらしい。にやりとさせられます。猫大好き「frisky」の元々の意味は(快活な)だが、スラングでは「しきりにセックスをしたがっている」という意味に。このあたりはさすがによく分かりません。あと、日本人は大概「brown eye」ですが、これもスラングの世界では「肛門」あるいは「おっぱい、乳首」になってしまうのだという。なるほどという感じもするが、これじゃ危なくてうかつに英語も使えないという感じですな。うかつじゃなくても使えんだろうがおまえは、というツッコミはぐっと抑えて。それでは次に。

  「探偵物語」(小鷹信光)  松田優作演じる私立探偵工藤俊作を主人公とするテレビシリーズの原作。この本前から読みたかったんですが絶版状態で、今回ようやく幻冬社が版権を取って文庫で復活させてくれました。著者の小鷹氏はジェイムズ・クラムリーやハメットなどの著作の翻訳でも知られる人ですが、実はこの本、期待はずれ。あんまりおすすめできません。解説にも書いてましたがドラマの原作というよりは原案てな感じです。ただ、かつて工藤俊作がこのドラマの中でしょっちゅう飲んでいるシェリー酒「ティオペペ」を金もないのに箱ごと購入、眉間に縦皺をよせて飲み続け泥酔してみたり、松田優作の逝去を知り「ついに昭和は終った」とひとちごちて周囲の失笑をかったことのある私の場合、ただ所有すること自体に意味があるのです。

   今回はその他「CURE」(著者は忘れた。県警の記者室に置いてあったので拝借。面白くなかった) 「用心棒日月抄」「孤剣」「刺客」 (以前にも書いたことがある藤沢周平の用心棒シリーズ。何度読んでも面白い)などを読みましたが、中身を報告するほどでもありませんでした。これにて終了。


11月25日

記者1
「無敵のハンディキャップ」(北島行徳著、文芸春秋)、「金融法廷」(岩田規久男著、日本経済新聞社)、「断層海流」(梁石日著、幻冬舎文庫)
  「無敵のハンディキャップ」(北島行徳著、文芸春秋) サブタイトルは「障害者がプロレスラーになった日」。障害者のプロレス団体「ドッグレッグス」の代表である著者が、団体の旗揚げからの活動を描くノンフィクション。ちなみに著者に障害はなく、元々は普通のボランティア活動をしていた健常者。既成の団体の活動に疑問を抱き、その答えをドッグレッグスに求めた。自身もレスラーとして毎回リングに上がり、障害者レスラー相手に容赦ない技を仕掛ける。流血負傷当たり前、骨と骨のぶつかる音まで聞こえてきそうな描写は結構強烈。「麻痺のある体を限界まで酷使し、自分の内面までをさらけだすことで、観客の心にまとわりついて離れない何かを残す。それこそが障害者プロレスの神髄」。著者の思いはてらいのない文章によってストレートに伝わってくる。しかしとにかく読みつきやすい本なので、かなりのおススメ。障害者レスラーたちのキャラクターがこれがまた、ほとんどオイしすぎるといえるほどグッドなんですわ。

「金融法廷」(岩田規久男著、日本経済新聞社)
住専の不良債権処理問題、三洋証券や山一証券の大型金融破綻事件などを元に、日本経済に深刻な事態を招いた責任は誰にあるのかを裁判形式で明らかにしようとする本。この手の話はなかなかまとめて読んだり考えをまとめたりする機会がないので、と思い立って買ってみた。平明な文章、わかりやすいつくりで役に立つことは多かったが、まあ単行本で買うほどでもなかったなあという感じ。かといって文庫本になる時には内容が古びてしまっとるのでしょうが。暇があれば図書館でどうぞという一冊。

「断層海流」(梁石日著、幻冬舎文庫)
幻冬舎文庫のヤン・ソギルもの4作目。単行本は93年刊行なのでちょい昔の作品。著者の「夜を賭けて」なんかでも感じるのですが、話の筋はこの作品でもやたらと飛びます。中身はダンサーを夢見て日本に来たふぃりぴーなの話と、在日韓国人家族の崩壊のストーリー。それぞれ別々に展開していくこの2つの話しは最後までつながりません。文庫版のカバーには「山本周五郎賞作家の初期傑作」とありますが、傑作はさすがに言い過ぎ。でもあいかわらず筆力というか迫力で読ませます。ヤンソギル、恐るべし。佳作。


12月1日

記者1
ブルース」(花村萬月著、角川文庫)、「ニューロマンサー」(ウイリアム・ギブソン著、早川SF)、「プロレスラー驚異の肉体」(富家孝著、法研)、「黄金を抱いて飛べ」、「スローカーブをもう一球」(山際淳二)、「これでおあいこ」(ウディ・アレン、河出文庫)、

  「ブルース」(花村萬月著、角川文庫)
 またもや夜中一気読み、でありました。花村萬月。いいです。この人の本はまだ2冊めなのですが、ほぼ評価は固まりました。感想は解説の北方謙三が書いている通り。「しかし、なんという哀切な物語なのだ」です。人間の「衝動」を描く技量にかけてはもしや同世代に並ぶ作家はいないのではないか、とまで思いました。なお、この前花村氏の「笑う山崎」をはじめて読んだ時に「北方謙三の『棒の哀しみ』を思い出した」と書いたのですが故なきことではなかった、ということも判明。この本の後書きで花村氏は、いかに北方の影響が強かったかということを打ち明けています。私、けちなせいで文庫本ばかり買ってるせいもあって、それぞれの本がどういう順番で発表されたか、何も考えずに読んでいるのですが、今後はこの人なら単行本でも手を出していいかなという気分。まあ文庫化されるのをじりじりしながら待つ、というのも妙にストイックでよかったりするのですが。

「ニューロマンサー」(ウイリアム・ギブソン著、早川SF)
 最近では、あの警察庁すら「サイバーポリス」なんて言葉を使っちゃってますが、電脳空間と訳される「サイバースペース」という言葉はこの人が作ったといわれてます。そういえばこの前自分の原稿にこの言葉を使ってみたのですが、デスク段階であっさり削られてしまいました。広辞苑に載る日もいつか来るのか来ないのか。何度も読み直しているSFの名作です。

「プロレスラー驚異の肉体」(富家孝著、法研)
 著者は、アントニオ猪木率いる「新日本プロレス」のリングドクターにして、病院経営に失敗した経験をもとに倒産評論家と名乗ってもいるというヘンなおじさん。「シンやブッチャーはなぜ流血しても平気なのか」「ストロングスタイルのレスラーはなぜ黒いタイツをはく?」などなど、「で、それが?」というネタを、スポーツ医学の視点から熱心にかたります。誰が買ったかもらったか、社会部にころがっていた一冊。

「黄金を抱いて飛べ」
 ほぼ1年ぶりの再読。やはり「照柿」を読んだ後では、味付けが薄すぎて、という感じ。

「スローカーブをもう一球」(山際淳二)
 最近はサッカーものなど、スポーツねたの文章にいいのが多いですね。私も昔から文春の「ナンバー」は時折読んでいます。

「これでおあいこ」(ウディ・アレン、河出文庫)
 ちょっと前に読んだ「トンデモ一行知識の世界」の本の前書きに、「ウッディアレンの書いた短編小説に、動物病院の待合室で読んだ雑誌に載っていた一行知識の『サンドイッチはサンドイッチ伯爵が発明した』という文章から、むちゃくちゃに想像力をかきたてられ、ついに遭ったこともないサンドイッチ伯爵の一代記を書き上げてしまうという話がある」という一文があり、「あ、これ知ってる。そういやこの本持ってる」と思い書棚を探して見つけました。


12月15日

記者1
「真夜中の犬」(花村萬月著、光文社文庫)、「セラフィムの夜」(花村萬月著、小学館文庫)、「伝説のやくざ ボンノ」(正延哲士著、幻冬舎アウトロー文庫)、「新宿歌舞伎町マフィアの棲む町」(吾妻博勝著、文春文庫)、「久住昌之の人生読本」(久住昌之著、角川文庫)、「大東亜戦争ここに甦る」(小室直樹著、クレスト社)、「新・仁義なき戦い」(飯干晃一、角川文庫)

  「真夜中の犬」(花村萬月著、光文社文庫)、「セラフィムの夜」(花村萬月著、小学館文庫)
花村萬月。まだ読んでます。にしてもなんとまあ、この作家は、男の弱さを、人の脆さをなぜにこれほど切なく描けるのか。暴力、セックス。確かに舞台回しにはふんだんにこうした「仕掛け」が使われていて、その描写は時に不快感を覚えるほど。ところがこれがいい。不快感と同時に、相反する甘美な切なさが、なぜか下半身あたりから立ち上ってくるのです。思い出したのは、昔めちゃくちゃに殴られ、大概惨めな、悲惨な状況の中で、なぜか、睾丸のあたりから甘ったるい、快感に似た、「コレハナンダ」という、およそ性的といえる衝動がせりあがってきた瞬間。例えになってないか。味覚に例えれば、ねばつく血液にまみれた鉄の味。そんなんなめたんか。しかも錆の浮いた腐りかけの。なんてますます例えにならんか。ああハイライトが切れそうだ。とにかく この男、かなりいい。きっと。できればお友達になりたい。現在15日午前4時。泊り勤務。ちょっとハイです。早めに更新して消さんといかんな

「伝説のやくざ ボンノ」(正延哲士著、幻冬舎アウトロー文庫)
「ボンノこと菅谷政雄は、やくざ社会のスーパースターだった。わたしが彼に関心を持ったのは、或る種の悲劇性をもって晩年を終えた人物だからである。グレン隊や博徒で悲劇の生涯を終えた者は多いが、ボンノの悲劇のスケールの大きさはまた格別である」 これ序章の書出し。この本自体は、著者の「最後の博徒」と共に知ってはいたが、この書出しを読んで、私はイカレました。中身もすこぶる上出来。ただのやくざ礼賛には決して終っていません。しかし、筆者は最後をこう結びます「ボンノは、男の華である」。ご同類の方はぜひ。重厚。名作。

「新宿歌舞伎町マフィアの棲む町」(吾妻博勝著、文春文庫)
馳氏の「不夜城」も、この本をネタ元にしたというぐらい。ゆえに、エッセンス自体は、あちこちで引用されているはず。にもかかわらず、この本が描く歌舞伎町のダークサイドの生生しさは今なお、さして色褪せてはいない。筆者は、苦労難渋したその取材過程を結構明らかにしていて、ネタ元をつくる苦労や落としの場面などは、同業の端くれとしても共感というか参考になる部分が多かった。夜中一気読み。

「久住昌之の人生読本」(久住昌之著、角川文庫)
小学校時代からの大の親友の父親が、大阪のミナミの千日前というところにある映画館に勤めていたこともあって私、中学時代、土曜の午後はミナミに出かけ、この親友のタダ券で、しょっちゅう映画を見ていました。「アルタードステイツ」、「トロン」。懐かしいねえと。で、当時、買っていたのが角川書店の「バラエティ」という映画雑誌にして文芸雑誌でありサブカル的味付けもちょいとね、という雑誌。この本は同誌に連載されていたものを文庫本にしたもの。中身は「君は甘いもの屋に入ろうかどうか戸惑ったことはないか!?」「君は彼女との待ち合わせに遅刻して言い訳を考えたことはないか!?」といったおKIRAKUなもの。おそらく絶版。

「大東亜戦争ここに甦る」(小室直樹著、クレスト社)
副題は「戦争と軍隊、そして国運の大研究」。変な人と誤解されがちな小室先生ですが、確かに変な人です

「新・仁義なき戦い」(飯干晃一、角川文庫)
元祖仁義なき、に比べると小粒。奥付けのところに鉛筆で値段が書いてあった。古本のようだ。


平成11年1月7日

記者1
「なで肩の狐」(花村萬月、徳間文庫)、「官能博覧会!」(官能倉倶楽部編、幻冬舎アウトロー文庫)、「突破者(上)(下)」(宮崎学著、幻冬舎アウトロー文庫)、「ストリップ血風録」(日名子暁著、幻冬舎アウトロー文庫)

   新年、おめでとうがおそくなりましてごめんなさい。旧年中は大変でした。今年はよろしくやりたいものです。で、すいません。
 上に挙げた本は旧年中に読んだものです。花村萬月。あいかわらずよいです。「官能」は、ポルノ作家たちが自らの性遍歴などを綴っているもの。各作家ごとに代表作の「クライマックス」部分も抄録されていてお得です。「ポルノ作家になるには」的な内容もあって、思わずまじめに読んでしまいました。「突破者」はこれまで縁がなかった本。単行本の装丁がどうも気に入らず、「面白いだろうなあ」と思いながらそのままにうっちゃってました。こういうのありますよね。何度もレンタルビデオ屋で借りながら、毎回必ずまだ見ないうちに返却期限がきてしまうみょーに縁がない名作映画とか。それです。
 今回は幻冬舎が文庫化したのを期に購入。一読。やはり売れるだけのことはあるな、です。作者の生まれ育ちがワタシの育った場所(大阪の枚方という京都との県境にある一衛星都市)に近く、高校は同じ枚方(啓光学園、ワタシは別の高校でしたが、啓光はもより駅への通り道沿いにあった)だったと知りびっくり(驚くには遅いぞ)。最後に「ストリップ」。東京渋谷のストリップ劇場「道頓堀劇場」の劇場主矢野浩祐氏の半生記でございます。やくざを足抜けし、なぜかストリップの世界に飛び込んだ男の数奇な人生。しかもまだ現役。おすすめです。以上、今年もこれまで同様、高尚な本だけをえりすぐり、実のある読書をしていきたいと思うワタシです。エッヘン。

1月18日

記者1
「奴らが哭くまえに 猪飼野少年愚連隊」(黄民基著、幻冬舎アウトロー文庫)、「松田優作 炎 静かに」(山口猛著、社会思想社)。「眠り猫」(花村萬月著、徳間文庫)、「狼の領分」(花村萬月著、徳間文庫)、「永遠の島」(花村萬月著、角川文庫)

   「奴らが哭くまえに 猪飼野少年愚連隊」はなかなかの力作。副題の通り、大阪・猪飼野の朝鮮人居住地区で育った少年たちのドキュメント。朝鮮人の非行少年のアイドル的存在だった朝鮮人愚連隊「明友会」の壊滅がターニングポイントとなって、かつての悪ガキたちは異なった人生を歩み出す。在日としての彼らのいきざま。日本社会が敗戦直後の混乱の時代から秩序を取り戻すまでの過程。著者はそれらをクロスさせながら当時の時代の雰囲気を描きます。しかし秩序の再編というのが、「在日」にとっては彼らを社会の下層に押し込めようとする日本階級システムの再生でしかなかったーというところが考えさせられるところ。なかなか重いです。ちなみに猪飼野は、焼き肉で有名な大阪の鶴橋の近くの地域。「松田優作 炎 静かに」も意外によかったノンフィクション。松田優作べたべたの本かと思ったら、著者は対象との距離をなかなかたくみに保ちます。「眠り猫」「狼の領分」「永遠の島」の萬月本もあいかわらず面白し。

2月10日

記者1
「知的な痴的な教養口座」(開高健)、「少女地獄」(夢野久作)、「破滅」(毎日新聞社会部)、「12の意外な結末」(ジェフリー・アーチャー)、「こいつらが日本語をダメにした」(南しんぼう、ねじめ正一、赤瀬川原平)、「ゴッドブレイス物語」(花村萬月)、「笑う萬月」(花村萬月)

   男は剥けていなくてはならない。たばこはハイライトと決めている。偽善が嫌いなのは人一倍。でも時に自らのふるまいが偽悪的であることに思い当たる。なんとも恥ずかしくやりきれない。うんちくを語るのはくだらないが知識慾は旺盛な方だ。あと凝り性でもあるな。ぬー、そうすると実は俺は「うんちく嫌いという単なるスタイリスト」なのかもしれない。実にみっともない。あーそれと犬と猫、どちらが好きかと問われれば、迷わず猫。でも昔、飼ってた猫、殴り殺したことがあったんだ俺。

 ここのところ花村萬月をかため読みしていて、登場人物の設定なり、作者のあとがきなりで、やたらと重複する表現(というか設定かな)が目に付き、ちょっこらメモ書きにしてみました。あまり意味ないですか。その通り。しかし私自身は自らと重なり合う部分も結構あることが分かり自己満足。

 追伸(って、本題にまだ入ってないか。えっ長い?。分かりましたもうすぐ終ります)「知的な痴的な教養口座」(開高健)は再読。エッセイなのだが、あるジョークが忘れられず、いい。こんな話。「砂漠で黒人の男が一人、脱水症状で死にかけていた。すると悪魔がドロドロドロリンと姿をあらわしこう言う。『おお死にそうやないか、われ。よっしゃ分かった。かわいそやから死ぬ前におまえの願い、3つだけかなえたろ。特別や。ほれ言うてみい』。男が言う。それならまず水がいっぱいあるとこにいきたい、それと一生に一度だけ、自分も白くなってみたい。あともう一度、たっぷりと、女のあそこがみたい」。すると再びドロリン。男はジョルジュサンク(フランスの高級ホテル)の「ビデ」になっていたとさ。うーんいい話ですね。「少女地獄」(夢野久作)もこの人の割には読みやすいいい本。「破滅」(毎日新聞社会部)は大阪の三菱銀行(だよな?)の梅川事件のノンフィクション。素材を次々と贅沢にそぎ落とし一冊にまとめました、という労作。文庫なのでぜひご一読を。以上。あっもう4時半だ。


平成12年3月27日

記者1
「砂の女」「人間そっくり」「R62号の発明・鉛の卵」(安部公房)

   久しぶりに小説を読む気になり、この土日、いずれも夕方に起きて朝方寝るという生活をしながら読了。奥付を見れば、中学生時代の購入本。改めて私にとっての公房はSFだと知る。文中、表現の細部に繊細な心配りを感じ入る。なお映画(ビデオだが)もひさびさに「フルメタルジャケット」「アンダーグラウンド」。「フルメタル」は敬愛するスタンリー・キューブリック監督。何度も見たくなる映画ってやつですな。ベトナム戦争を舞台に、普通の人間を殺人マシンに改造する前編がやはり秀逸。後編はやはりパンチ不足。

でも満足。 一方「アングラ」は前から気になっていながら見ていなかった作品。こういうのありますよな。武器商人に騙され、第二次大戦下のベオグラード地下に潜伏し武器を作り続けるクロ一味。終りなき戦争を信じる彼らが地上に戻った時、祖国ユーゴスラビアは失われていて…見て損はない作品なれど、ユーゴの悲劇を己の手触りとして感じてることのできない日本人の私。やや理解不足なのでしょう。 以上復活の男。


3月16日

記者1
「インターネット法学案内」(日本評論社、インターネット弁護士協議会編著)「サイバースペースからの挑戦状」(雷韻出版、河上イチロー著)「悪徳インターネット」(オークラ出版、芝雅之監修)など

  いやーお久しぶりの更新です。いきなり私事で恐縮ですが、実はこの間ほんに私事がいろいろとタテコンでました。まずは社会部サツ担当の「卒業」。同時に社会部遊軍への配置換え そしてなんと福岡に来てからは初となる連載のための東京出張、連載がスタートする予定日になんと脳死移植。難産の末の連載スタート、そして終了。で、あんまし読書してません。ほとんど御仕事関係だけ、とあいなってます職場の担当がかわったせいで、ちょっと読書ペースは落ちそうですがなに、担当は労働、NTT、そして「風俗」。あんまり変わってないようなきもしますね。というわけで今後ともよろしくお願いしますほとんど私信のノリ。

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