T.経済危機の教訓    ◆ 千野忠男氏
U.域内の連携      ◆ 余永定氏
V.国際金融システム改革 ◆ 榊原英資氏
W.NGOの役割     ◆ 久世宣孝氏
X.変動相場制の脅威   ◆ ゼティ・アクタル・アジズ氏
Y.21世紀への奔流   ◆ 徳永氏


経済危機の教訓 ***途上国と歩む姿勢を

▼アジア開発銀行総裁 千野忠男氏▲

 七月の主要国首脳会議(九州・沖縄サミット)の首脳会議まであと三週間。アジア危機以降、最初にアジアで開かれるサミット。朝鮮半島では初の南北首脳会談が実現し「和解」へ動きだした。二十一世紀を見据え、アジアの安定と発展のためサミットへ期待が高まっている。アジアの政策当局者、有識者らに聞いた。
 ―アジアの経済危機から三年が過ぎたが、現状をどうみているか。
 「予想を上回るペースで回復している。アジア・太平洋地域はことしは六パーセント台の経済成長を達成できそうだ。危機が発生する前の七、八パーセント台の成長には及ばないが、順調と言っていい」
 ―好調の理由は何か。
 「各国の財政政策の再構築と、最近ではとくに電子製品の輸出が回復の重要な要因となっている」
 ―だが、経済危機はアジアにさまざまな教訓、課題を突きつけたのではないか。
 「やはり、経済のグローバル化(地球的な広がり)の影の部分が強く出たことを教訓として受け止めなければいけない。その一つとして、アジアの多くの国が短期のドル資金に過度に依存していたため、大量の資本流出がパニックを起こした。グローバル化を支えるメカニズムの構築が不可欠だ」
 ―枷(かせ)のないグローバル化の問題点とともに、貧困層の増加という課題も抱えたのではないか。
 「経済危機によって、貧困層が一千万人も増えた。一日一ドル以下で生活する貧困者はアジアに約九億人もいる。全世界の七割も占めている。アジア開発銀行は昨秋、活動目標を経済成長重視から貧困削減に転換した」
 ―グローバル化は国際金融市場の混乱再発や、経済発展の不均衡による貧富の二極分化を増幅させかねない。九州・沖縄サミットではどんな議論が求められるのか。
 「アジアとして、明確なメッセージを発信したい。情報技術(IT)革命とあいまって経済のグローバル化は進む一方だが、その光と影を十分に討議してほしい。とくに、市場主義一辺倒だと先進国と発展途上国の格差がますます広がる恐れがある。発展途上国に配慮したグローバリゼーションの議論をすべきだ」
 ―貧困対策で要望は何か。
 「アジアは社会発展のために先進国の資金を必要としている国が多い。アジア開銀は二〇〇一年から、融資の四割以上を貧困削減にあてる。サミット参加国は、貧困削減に資金面などで支援をお願いしたい」
 ―サミットの議長国である日本の使命、課題は何か。
 「日本の国内総生産(GDP)はアジア全体の三分の二を占めており、その規模はケタはずれに大きい。早急に景気回復を本物にし、アジア経済を支える責任を果たすべきだ。同時に、先進諸国が発展途上国に対し援助疲れがみえる中で、日本の積極的な援助姿勢をサミット参加国にアピールしてほしい。発展途上国とともに歩むことを認識させることが重要だ」
(聞き手は経済部・吉塚哲)

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 ▼略歴
 日本の大蔵省の国際金融局長、財務官を歴任した。99年1月、フィリピンのマニラに本部を置くアジア開発銀行(ADB)の7代目総裁に就任。11月、ADBの最重要課題を貧困削減とする長期戦略を打ち出した。静岡県出身。66歳。

西日本新聞社