平成13年2月20日朝刊 夢破たん 強気と無念 松形・宮崎県知事−時折、不快感も 創業者・佐藤氏−消えうせた自信
巨額の赤字にあえぐ宮崎市の大型リゾート施設シーガイアが、法的整理に追い込まれた。再建に奔走してきた宮崎県は「更生法申請は倒産ではない。再建への第一歩だ」(松形祐堯知事)と強調するが、その道筋は不透明。宮崎観光再生の期待を担って開業した“巨大三セク”の破たんに地元の衝撃は深く、経営や行政の責任を問う声が上がる。シーガイアの従業員や取引業者には「雇用はどうなる」「取引を続けられるのか」との不安が広がった。 【一面参照】
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▼「倒産ではない。責任もない」 松形・宮崎県知事
●時折、不快感も
破たんした巨大プロジェクト「シーガイア」のけん引役は、松形祐堯宮崎県知事(82)とフェニックスリゾート創業者の佐藤棟良氏(82)だった。二人三脚で夢を追ってきた両氏は十九日午後、記者会見したが、表情はそれぞれ異なり、再建への強気さと無念の思いが交錯した。
「私どもに責任はひとつもない。再建であって倒産ではなく、新しいスタートだ」
三セクに出資する宮崎県の松形知事は県庁で会見し「政治生命をかけ再生に取り組む」としていた自身の責任を否定。法的整理を“前向き”に解釈し、シーガイア再建に向けた強気の姿勢を崩さなかった。
約四十人の報道陣が詰めかけ、約一時間二十分に及んだ会見。「シーガイアは知事と佐藤氏の二人三脚の事業」(県幹部)だけに、質問は責任問題に集中。温厚な人柄で知られる松形知事は、時折質問に不快感もにじませ「責任はひとつもない」と語気を強めた。
法的整理の道を選んだことについては、再建を引き受ける企業のめどがついている点を強調。「専門家の間では会社を再生できる喜ぶべきベストな方法とされ、短期間での再建が可能で新たなスタートだ」と述べた。 ただ「事実上の倒産」によるマイナスイメージは避けられない情勢。この日、県庁内では「もし債権者の賛成が得られず更生がとん挫した場合、知事は辞任に追い込まれる」(自民党県議)という声も、ささやかれた。
そんな懸念を意識してか、松形知事は「神経をすり減らしながら(県主導の再建策づくりに)努力した。二十一年間の知事生活ではなかったこと」と心中を語り、決断の正当性を強調した。
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▼「県民に迷惑かけた」 創業者・佐藤氏
●消えうせた自信
「シーガイアの施設と従業員は、宮崎県の誇り。私の八十二年の人生で一番の誇りだった」
会社更生法適用申請と同時にグループ三社の取締役を退任、経営から身を引いた佐藤棟良氏は十九日、シーガイアの施設内で会見した。
佐藤氏は事実上の創業者としての思いを吐露する一方、「県民や銀行、取引先に多大なる迷惑をおかけした」と深々と頭を下げた。その姿からは「オレが社長でなければ黒字化は無理」と強気だった、かつての自信は消えうせていた。
「君は郷土愛がないのか」。紙パルプ商社旭洋グループの統帥を観光事業へ走らせたのは「観光宮崎の父」と呼ばれた故岩切章太郎氏だった。その要請で、一九六五年にホテルフェニックスを開業後、フェニックス国際観光を設立。シーガイアを核にした宮崎・日南海岸リゾート構想は「世界に誇れる施設をつくり、故郷への恩返しをする」ことだった。
盟友の松形知事と、シーガイアを主会場に主要国首脳会議(九州・沖縄サミット)外相会合誘致も実現させた。しかし、バブルのツケはあまりに巨額すぎた。
「私が手掛けたリゾート事業は日本人のレベルに合わず、少し先走った」と自省する佐藤氏。地元では事実上のオーナーとしての経営責任を問う声もくすぶる。
「経営から完全に身を引くが、今後もシーガイアの一日も早い再建を心から願っている」。そう語る声は弱々しかった。
(平成13年2月20日付朝刊)
>>シーガイア更生法申請=本紙記事と連載から=
[平成13年2月19日夕刊]
◎負債総額3261億円 3セクで過去最大
会社更生法による経営再建を検討していた宮崎市の大型リゾート施設シーガイアを運営する第三セクターのフェニックスリゾート(木許英太郎社長)とフェニックス国際観光、北郷フェニックスのシーガイアグループ三社は十九日午前、宮崎地裁に同法の適用を申請した。負債総額は三社合計で約三千二百六十一億円。第三セクターの破たんでは過去最大規模となった。
フ社に出資している宮崎県の松形祐堯知事は同日の県議会全員協議会で、「将来にわたって安定的、一体的な事業継続を図るため、会社更生法の適用を申請した」と説明。さらに同知事は「シーガイアを世界第一級のリゾート地にすることができる企業を絞り込んだ」と語り、同法に基づく再建手続きの中で、約二千六百億円に上る同社の借入金を二十年間で返済可能な額に圧縮することなどを条件に、再建引き受け手のめどがついていることを明らかにした。
同社と県は昨秋から、金融機関の債権放棄による負債軽減の可能性を探る一方、外国資本を含む複数企業と施設売却交渉を続けていたが、同社の借入残高が多額なことがネックになって折衝は難航。法的整理で銀行などの債権をカットし、新たに売却先を探すことになった。
シーガイアは、国のリゾート法(総合保養地域整備法)の第一号指定を受けた「宮崎・日南海岸リゾート」の中核施設として一九九四年十月に全面開業。高層ホテルやコンベンションセンター、大型屋内遊泳施設、ゴルフ場などを備え、九五年には三百八十六万人の利用客を集めたが、その後入場者数は減り続け、一度も黒字を出せないまま、二〇〇〇年三月期決算の累積赤字は千二百十八億円に達した。
>>シーガイアをめぐる最近の動き=本紙記事と連載から=
[2000/11/22付朝刊]
◎観光宮崎再生へ女性が提言 「考える会」県が開催 辛口の意見相次ぐ男性抜きでの企画を 人工的な物は飽きる お役所的発想を転換
観光宮崎の再生に女性の視点を生かそうと、県は二十一日、女性から意見を聞く「県の観光・リゾートを考える会」を宮崎市で開いた。参加者からは「サーファーのメッカとして売り出せば」など具体的なアイデアのほか「県の観光企画部門を女性だけにしたら発想が変わるのでは」など、観光行政に対する“辛口提言”も相次いだ。
この会は、県が来年三月に策定する新観光振興計画に女性の視点を反映させるため開催。県内の主婦や婦人団体代表、民宿経営者など二十代から六十代の女性十三人から意見を聞いた。
出席者からは、国内の観光地が海外に客を奪われている現状について「元気なうちに海外、老後は国内という人も多いはず」と、高齢者をターゲットにした観光戦略を求める声や「ホテルのベッドが悪いと旅先の印象が悪い」と、きめ細かなもてなしの必要性を指摘する意見などが出た。
県外の出身者からは「人工的な観光地は一巡すると飽きる。好評だったグリーン博のノウハウを生かし、センスの良い国際的なフラワーショーを毎年開いては」との提言や「観光地をつなぐ交通の便が悪いと都会人には不評を買う」との指摘も。
県が観光行政の柱と位置づけているシーガイアについては「都会の若者は高千穂や日南海岸の方が喜んだ。従来の観光概念をチャラにして発想の転換をしては」と手厳しい声もあったほか、カジノ誘致については「ふる里が“ギャンブルの町”では子どもの誇りにもキズがつく。普通の市民生活を観光客が一緒に楽しめるような観光地が理想」と、否定的な意見も寄せられた。
[2000/10/14付朝刊]
◎オーシャンドーム 入場者3年前のピークから半減 外国人にはあきられた?本年度上期4万9千人 3年連続ダウン
宮崎市のシーガイアの人口海浜施設・オーシャンドームに二〇〇〇年度上期(四―九月)に入場した外国人客数が、ピーク時の九七年度上期の半分以下に落ち込んでいることが分かった。三年連続のダウンで、ホテル宿泊客の減少幅を大幅に上回っているのが目立つ。
オーシャンドームは経営改善計画の一環で今年四月から入場料を引き下げ、夏休みの総入場者数は三年ぶりに増加に転じたが、値下げ効果は国内止まりの状況だ。
シーガイアを運営するフェニックスリゾートによると、今年四月から九月のオーシャンドームの外国人客は約四万九千二百人で、ピークだった九七年度上期(約十一万二千五百人)に比べ、五六・三パーセントも落ち込んだ。
主な国・地域別にみても、台湾(同六四・四パーセント減)香港(同三五・五パーセント減)韓国(同五九・四パーセント減)と軒並み大きく減っている。
一方、ホテルオーシャン45など、シーガイアグループ四ホテルの今年度上期の外国人宿泊客数は約二万九千四百人で、ピーク時の九六年度同期(約四万千五百人)に比べ二九・三パーセント減った。台湾、韓国の客が落ち込む一方で、香港からの客が約二・二倍に増えたのが目立つ。
外国人客減少の背景には、主力の台湾客の目的地が九州から北海道へシフトしていることもあるが、同グループは「南九州観光の需要が落ちたことに加え、中核施設のドームが開業七年を経て、目新しさがなくなってきたのではないか」と分析している。
>>シーガイア誕生前後に指摘されていた課題=本紙記事と連載から=
[1994/06/12付朝刊]
◎宮崎シーガイア、10月に全面開業
「宮崎観光再生」の期待を担って宮崎市の一ツ葉海岸に建設が進む大型リゾート・シーガイアが今年十月全面稼働する。昨年七月末に一足早くオープンし、やがて一年を迎えるオーシャンドームは、地元で「シーガイア効果」との言葉も生まれるほど高い評価を得ている。一方で、入場者数は目標を大幅に下回り、二千億円の投資規模に対する採算性への不安もなお根強い。全国でリゾート開発計画の見直しが相次ぐ中、順調に計画が進み、全面開業にこぎつけるシーガイアの実像を探ってみた。
●2千人超の雇用
「県外でホテル業界の集まりがあると、決まって”宮崎はいいですね”と言われる」。宮崎市の中心部にあるホテル神田橋の重永光慶・専務総支配人は「活況・宮崎」を強調する。同ホテルは今年に入って宿泊客が前年比一割増。「オーシャンドーム観光に一日を割き、宮崎で二泊するツアーも増えた」
第三セクター方式による経営主体、フェニックスリゾート(佐藤棟良社長)は、新社員を昨年一千二百人、今春も六百人採用。九州一の高層ビルとなる地上四十三階建てのホテルや国際会議場が開業する十月までには、さらに四百人のパート、アルバイトを募集する。
一つの施設で計二千二百人の大量雇用を創出したわけで、「大都市からのUターン希望者の受け皿として問い合わせが多かった」という効果も生んでいる。
●厳しい経営実態
だが、華々しさの裏で、実際の経営は苦戦を余儀なくされている。オーシャンドームの初年度入場者目標は二百五十万人としたが、五月末までの実績は約百万人。開業丸一年の七月末で目標の半分がやっと、という状況なのだ。
八五年のプラザ合意後、急激な円高で膨らんだ貿易黒字減らしの内需拡大策の一つとして、急きょ登場したリゾート法(総合保養地域整備法)。バブル経済の崩壊でその熱気はさめ、全国、九州で多くの計画が凍結、縮小などの憂き目に遭っている。三重、福島県とともに第一次指定(八八年七月)を受けた宮崎は「リゾートの優等生」といわれるが、必ずしも順風満帆の船出ではない。
シーガイア全体の総工費は二千億円。百億円を融資する宮崎銀行のある役員は「九州内の各銀行の集まりで”大丈夫ですか”と言われた」と苦笑いしながら「金利分だけでも払ってもらえれば…」。そんな地元の理解に支えられているのが実情だ。
●有形無形の支援
もう一つ、シーガイアの原動力といえるのが、国や地元自治体の有形、無形の支援だろう。九一年の着工当初、佐藤社長はシーガイアの採算性に触れ「規模が大きければ大きいほど、国や県、銀行が助けてくれる」と語ったことがある。
林野庁出身(元長官)の松形宮崎県知事は、専門領域である国有林内の開発に目を向けた。この発想はリゾート推進という国策とも合致しているだけに「計画の是非、採算性を論じる余地はなかった」(ある県幹部)というほどの支援態勢が組まれた。
また、シーガイア建設の資金調達問題は、最終的に第一勧業銀行が全面協力を打ち出したことでメドがついたが、地元の一部では「大蔵省からの”支援”があったのでは」とのうがった見方もある。佐藤社長が大蔵省出身の福田元総理と親しい、などを根拠にしたもので、そんな”事情”もリゾート法指定から二年半という異例のスピード着工―開業につながっているようだ。
●目標をどう達成
「オーシャンドーム単体の集客力はしれている。ホテルや会議場などが戦列に加わった今秋以降を見てほしい」。採算性を不安視する地元経済界に対して、奥山泰弘副社長は自信を見せる。施設の全面稼働でセールスポイントが広がり、景気も好転の兆しを見せているほか「ハウステンボス、福岡ドーム、スペースワールドとの九州内のテーマパーク同士の連携を深め、観光ネットワーク構築に努力する」のが理由。
そして関東、関西からの観光客の誘致拡大に努め、「九八年に売上高四百五十億円超、単年度黒字」という目標をどう達成するか。その時、「国策型リゾート」でもあるシーガイアの力量が初めて問われることになる。 (白石克明記者)
[1994/05/31付朝刊]
◎一ツ葉リゾート訴訟判決、環境保護に反応複雑 宮崎
宮崎市の一ツ葉浜海岸の大型レジャー施設「シーガイア」建設に関する松林伐採をめぐって、環境保護を訴えてこれに反対する住民と国、県で争ってきた一ツ葉リゾート訴訟は、第一審の宮崎地裁で住民側の請求が却下、棄却される厳しい結果となった。
判決後の会見席に座った林好美原告団長は「不当判決」を訴える一方で「環境アセスの不十分さを認めるなど裁判の意義はあった」と複雑な表情も見せた。裁判を続行する中で、シーガイアの建設も進み、今秋には、全施設がオープンする中、環境保護か観光開発かをめぐる県民の反応にも複雑なものがある。
今回の判決に対するフェニックスリゾート社長や経済界、環境問題に取り組む団体の代表など関係者や識者の声を集めた。
●当時としては最善の努力
フェニックスリゾート社取締役、三浦晃正さん(58)
私どもは、行政指導のもとで、法的手続きをすべて完了して開発を進めた。
開発時、環境アセスメントは、法的な必須(ひっす)条件ではなく、県の要綱にもなかった。それでも、大学の教授や林業試験場の技師、野鳥の会の人など、いろいろな立場の人を集めて、環境に与える影響を検討した。当時としては、最善の努力をしたと考えている。
●住民と対話しながら進展を
宮崎商工会議所専務理事、松崎芳三さん(63)
シーガイアは環境にも十分配慮していると思う。保安林の維持管理は、施設ができた所ほどよくなっている。ただ、環境を考えて訴えた人の気持ちも分かる。今後、会社側は地域住民と対話をしながら、リゾート計画の進展に努力してほしい。シーガイアは地元への経済効果が如実に表れているので、今後に期待をしている。
●環境アセスの不十分さ指摘
水と緑を考える会代表、神崎千賀子さん(38)
原告適格の範囲が狭く、判決は納得できない。ただ、環境アセスの不十分さが認められたことで、地域の環境がないがしろにされてきたことを被告の国や県ももっと認識すべきだ。環境権は人命にかかわる問題なのに、住民よりお金が大事という、行政の姿勢が問題。判決は当事者間のみならず、県民全体で受け止めるべきだ。シーガイアが県民のためになるかどうか、の議論は当事者だけの問題にせず、県民全体のものにしなければならない。
●乱開発批判の意義大きい
原告団メンバー(自営業)、児玉武夫さん(66)
乱開発とリゾート法に対する批判を生み出したことだけでも、裁判を起こした意義は大きいと思う。原告適格が一部だが認められたことにも裁判を起こした価値があると思う。これを足がかりにしたい。
●事実上の原告全面敗訴に
九州大文学部付属九州文化史研究施設教授、丸山雍成さん(61)
原告の、事実上全面敗訴を意味するでしょう。もっとも、リゾート法が財政赤字に悩む林野庁や経済浮揚を図る自治体が飛び付くような一石二鳥の性格だったのに対して、この訴訟は一定の歯止めをかけようとするものだったようです。
しかし全面敗訴の影響は無視できず、今後、国有林などがリゾート化で減少し、自然景観や歴史文化的環境も損なわれる面が出るでしょう。これを防ぐには文化財保護法に歴史文化的環境権の理念を盛り込み、国民の合意世論形成が必要ですね。
[1994/03/15付朝刊]
◎開発へ「頂門の一針」に、一ツ葉リゾート訴訟結審 宮崎
一ツ葉海岸に広がる巨大なリゾート開発をめぐって提訴から三年。松林伐採に反対する住民が国と宮崎県を相手にした「一ツ葉リゾート訴訟」は十四日結審、五月三十日に宮崎地裁で判決が言い渡される。法廷では原告、被告双方の論議は、結局十分にはかみ合わないままという経過をたどった。しかし、自然環境保護が叫ばれる中で真のリゾート開発の在り方について双方の議論はいずれも”頂門の一針”となる内容を含んでいるのではないだろうか。
▽台風で松倒木
二百年以上の歴史をもつ一ツ葉浜の松林は明治三十年、保安林に指定。昭和六十三年のリゾート法第一号指定を機に平成三年二月、フェニックスリゾート社は松林伐採に着手した。伐採された松林は約六十一ヘクタールで十万本。クロマツ、広葉樹など樹齢五十年の立木がほとんどだが、樹齢百年を超す貴重な松も含まれており、このことは被告も裁判で認めている。
昨年の台風では、松林の伐採で予想しなかった被害が起きた。「リゾート施設付近や道路周辺の松が何本も倒れた」「大雨で道路や施設周辺が冠水。松の根腐れが生じた」「風が強烈で、怖かった」―などと周辺の住民が明かす。
これに対して被告側は「雨水などは施設周辺に浸透させたり、排水処理するなど、環境保全のうえで問題がないように処理している」と松林の管理に問題はないことを強調する。
▽経済波及効果
フェニックスリゾート社の話では、オーシャンドーム「シーガイア」が昨年七月末にオープンしてから今年二月末までのリゾート施設の利用者数は七十八万人。九州、関西など県外からの観光客が八割を占める。また、同社の総社員数は約千人で今春、六百人が入社するなど、立ち上がりでの雇用創出は千百人を超える。
「ホテルや旅館などの利用率も高まり、雇用の増大と併せて経済的な波及効果はあった」と同社。だが原告は、バブル経済の崩壊から「経済効果の薄いリゾート開発」を強調した。
さらに、開発地域に隣接する阿波岐原市営住宅の集団移転などを例に挙げ「地域住民の生活を犠牲にしたリゾート開発が、地域の活性化につながるのか」とも指摘する。
▽リゾートとの共存
いつ、どこで起こるか予想しにくい地震や津波、台風から住民の命や財産などを保護できるのか―不安を訴える原告に対し、被告は「建物に防風壁の役割を果たさせるなど、保安林の機能を代替するリゾート施設を設置した」と保安林の機能低下はないという。
一方、第三者の立場にある地域住民が、松林の使用許可とレジャー施設建設工事許可の取り消しを訴えるのは法律上、難しいといわれる。しかし原告団長の林好美さんは「全国各地から裁判を支援する声や募金などが多く寄せられた」と、争う姿勢を変えない。
リゾート開発と自然環境保護の共存はどこまで可能なのか―。全国的に例のない裁判だけに、どのような司法判断がなされるか、注目される。 (野元和枝記者)
>>シーガイア誕生当時の連載=本紙記事と連載から=
[1993/05/25付朝刊]
◎観光再生への挑戦・宮崎シーガイア<上>南の拠点
宮崎市一ツ葉海岸で総工費二千億円をかけて建設中の大規模リゾート「シーガイア」の中核施設・オーシャンドームが二十八日落成する。「観光宮崎再生」への期待を一身に集めるシーガイアだが、同時に採算性への懸念も消えていない。ハウステンボス、スペースワールドなど大型テーマパークが北部九州に集中する中で、シーガイアは”南の拠点”として地域経済浮揚の主柱となり、九州の観光動向にインパクトを与えることができるのか。同リゾートの将来像を探った。
▽南海のパラダイス
太平洋が眼前に広がる海岸線をトラックがごう音を立てて走り去る。海に面した松林の中には福岡ドームの二倍規模のオーシャンドームのほかゴルフ場、テニスクラブ、コテージなどがほぼ完成。七月三十日の開業を待つ。地上四十三階建てホテルと五千人収容の国際会議場も来秋開業を目指して建設が進んでいる。
「ハウステンボス、スペースワールドとを結んだ三点セットで九州の時代をつくりたい」。シーガイアの建設主体である第三セクター・フェニックスリゾート(本社・宮崎市)の佐藤棟良社長は指で三角形を描いてみせた。
開閉式屋根の内部に長さ百四十メートルの人工浜を備える同施設は「南海のパラダイス」をイメージした。淡水の「海」は最新鋭の造波装置で高さ二・五メートルまでの波が起き、入場客はコンピューターを駆使した施設で急流下りなどの疑似体験も楽しめる。
▽鹿児島も熱い視線
地元のホテル業者は「新しい観光の目玉ができる」と、オーシャンドームの開業を心待ちにする。
リゾート構想を宮崎県政の最重点課題に位置付け、同リゾート建設に取り組んできた松形祐尭知事は「九州縦貫自動車道の八代―人吉間が開通したとき、観光客は年間二百万人増えた。二年後に人吉―えびの間が開通すれば、県外からの年間観光客五百五十万人が八百万人ぐらいになる」と、高速道開通とシーガイア効果による宮崎観光の新時代到来を展望してみせる。
隣県・鹿児島も熱い視線を送る。鹿児島県は「翔ぶが如く」ブーム以降は観光客が減少気味。「シーガイア効果を鹿児島にも」との期待が膨らんでいるのだ。
鹿児島商船(本社・鹿児島市)が早速、宮崎―種子島間の超高速船の二年後就航を計画するなど「南九州観光ルート確立」への意識は急速に高まっている。
▽首都圏も関心高く
新たなリゾートの登場に、首都圏の旅行業者の関心も高い。
「今年は全国的に大きなイベントがないので、全社挙げてシーガイアキャンペーンに力を入れる」という日本交通公社の国内旅行営業部(東京)は「寒い時期でも泳げる」をうたい文句に、OL層をターゲットにした計画を練っている。
東急観光の東日本統括本部(東京)も「普賢岳で落ち込んだ九州観光客は、昨年開業したハウステンボスでやっと持ち直した。
シーガイアにも近々社員を研修視察に出して商品計画を立てる」と期待を込める。
▽”遠距離”が壁に
だが、両社とも今のところシーガイアとハウステンボス、スペースワールドなど九州のテーマパークを結ぶツアーネット計画はない。
厚く立ちはだかるのが距離の壁だ。
宮崎市の旅行業者は「余暇時代とはいえ、日本ではまだ二泊三日のツアーが主流。例え高速道が全面開通しても全九州を回るには時間的に無理。しばらくは北と南で異なった観光圏ができるのでは」と予測する。
ハウステンボスはシーガイア登場を「関東、関西で”九州が今、面白い”という印象が強まれば結構なこと。それが九州観光全体の底上げにつながる。直接の連携は将来の課題だろう」と冷静に構えている。
[1993/05/26付朝刊]
◎観光再生への挑戦・宮崎シーガイア<<中>官民一体
▽金策の不安が的中
「計画当初、日本経済は盛況で、このような状況はだれも予測していなかった。ここ半年間、計画を予定通り進めるかどうか、迷って夜も眠れない日々が続いた」
シーガイアの第二期工事として、オーシャンドームに続き、地上四十三階建ての高層ホテルが着工した昨年三月のこと。フェニックスリゾートの佐藤社長は起工式祝賀会で、バブル崩壊の中でのリゾート建設の困難さをこう語った。
バブル崩壊による地価下落で金融機関が不動産取引やリゾート開発への融資に慎重になり、全国各地でリゾート計画が相次いでとん挫しはじめたころだ。
この不安は的中した。金融機関が同計画への融資をためらい、建設費二千億円の資金手当に手間取ったのだ。慌てた宮崎県も金融機関への要請に動いた。結局、昨年末に第一勧業銀行がシーガイア全面支援を決め、施設落成が迫った今月に入ってやっと協調融資団も内定した。
▽内需拡大へ先駆け
宮崎県の「宮崎・日南リゾート構想」は一九八八年七月にリゾート法(総合保養地域整備法)の第一次指定を受けた。
貿易黒字減らしのための内需拡大策として、国が打ち出したのがリゾート建設推進だった。全国的にリゾートブームに沸く中、宮崎県は第一次指定のトップランナーとして飛び出した。
建設・運営主体のフェニックスリゾートは、フェニックス国際観光(佐藤社長)に加え、宮崎県と宮崎市など十三法人が出資した第三セクター。実際はダンロップ・フェニックストーナメント開催などの実績もある地場のフェニックスグループが主体になった。
それだけに他のリゾート構想のようにバブル崩壊に伴って、建設主体撤退という最悪の事態を招くこともなかった。
▽レール敷いた知事
松形・宮崎県知事は元林野庁長官。国有林を借地してのリゾート計画は知事の発案といわれる。林野庁からの松林借地に伴う事務手続きは「知事のおかげ」(同県幹部)でスムーズに運んだ。
林野庁もちょうど国有林のリゾート活用を模索していた時でもあり、両者の思惑が一致、「官民一体」の表現がぴったりの取り組みになった。
九州経済調査協会の調査月報(今年三月)によると、百四十に上る九州のリゾート開発計画のうち、第三セクターの事業は比較的順調に進んでいるとし、同時に「用地確保が(リゾート開発の)主要な課題」とも指摘している。
第三セクターが中心になり、用地問題が最初から解決していたシーガイアは、順調に進むべく最初からレールが敷かれていたと言える。
▽高い事業性を評価
国策として大々的に進められたリゾート開発。その波にうまく乗り、第一期完成にたどりついたシーガイアは”バブルの落とし子でもある。
国が大手資本に依存して進めた大規模リゾートが行き詰まりを見せる中、一部には「あれはバブルの悪乗りだ」とシーガイアの採算性に疑問を挟む批判的な声も聞かれる。
しかし、全面支援の第一勧銀からフェニックスリゾートに派遣された奥山泰弘副社長は「松林が続く素晴らしい自然環境の中で、土地買収の必要もなく二千億円が施設に純粋に投入される。その事業性の高さに注目すべきだ」と、銀行マンの目からシーガイアを評価する。
[1993/05/26付朝刊]
◎観光再生への挑戦・宮崎シーガイア<<下>複合施設
▼高い料金に危ぐも
「ハウステンボスは料金が高過ぎて、一度行けば十分と言う人が多い。シーガイアもそうなるんじゃないか」。宮崎市内の旅行業者はこう危ぐする。
ハウステンボスは九二年四月から一年間で三百七十五万人が入場した。目標の四百万人にわずかに届かなかったが、客単価は一人一万三千円の予定を八百円上回った(一月末現在)。
この客単価にしても、関係者からは「安い飲食物と土産類を徹底的に排除すれば、客単価が上がるのは当然だ」と指摘する声も出ている。
オーシャンドームの入場料は大人四千二百円、中高生三千百円、小学生―四歳二千円。県民の間には「家族連れで簡単に行ける場所ではない」と不満が聞かれるのも事実。
▼難しい改装・拡張
九一年四月にオープンした大分県・日出町のテーマパーク「ハーモニーランド」。一年目は百三万人が来場したが、二年目は五十一万人まで落ち込んだ。
そこで九億五千万円を追加投資、客の希望の多かった観覧車など五つの乗り物を社員駐車場エリアに建設し、施設拡張で魅力アップを狙っている。七月には稼働予定だ。
こうした設備の拡張、あるいはリニューアル(改装)がオーシャンドームでは、どの程度可能なのか。実はその不安の一つとして、屋内施設である点が指摘される。ハーモニーランドやハウステンボスといった屋外施設は、拡張という形で利用客のニーズにこたえることができるが、屋内施設では難しいからだ。
限られた屋内で利用者に飽きられない施設をどう造るか。その難しさはダイエーが打ち出した福岡市のツインドームシティ計画のうち、福岡ドームは開業したが、もう一つのファンタジードームについて、具体的な設計を描き切れない実情にも表れている。
▼アイデアも手探り
オーシャンドームの担当者は「ダンサー八十人と契約するなど、ショーやイベントを充実させて南海の楽園を演出しようと知恵を絞っている。アイデアで空間を有効に使っていくしかない」と企画力の勝負にかける。
半面、入場者は夏場に多いのか、冬場に多いのか「今の段階では見当がつかない」と肩をすくめる。新しい施設だけにすべてが手探りなのだ。
初年度のオーシャンドーム入場者を二百五十万人と見込む。地元経済界からの「百万人程度では」という”苦戦予測”の声に対し、奥山副社長は「オーシャンドームを単体の施設と見てほしくない。松林内に展開する全施設が一つのテーマパークだ」と指摘、各施設の相乗効果を生かした集客力を強調する。
▼来年10月に全施設
一ツ葉海岸に隣接してフェニックスグループのホテル、ゴルフ場、ボウリング場、動物園が並ぶ。
佐藤社長は「既存施設に加えて新たにできるオーシャンドームやゴルフ場。これらは二十一世紀を見通した健康リゾート。来年十月に全施設がオープンすれば、年間五、六百万人は集まる」と強気だ。
シーガイアが佐藤社長の狙い通り、観光再生を目指す宮崎のけん引車となるかどうか。
地域浮揚の期待を担い、各地のリゾートが行方を注目するシーガイアは、間もなく離陸する。
(この連載は白石克明記者が担当しました)
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