=2001.04.13付 夕刊掲載
着実な需要に支えられ、安定部数を誇ってきた月刊時刻表の売り上げが、一九九七年をピークに毎年三パーセント減の試練にさらされている。長引く不況とインターネット普及という荒波をもろにかぶった形だ。出版社側は対抗策として、情報技術(IT)化に乗り出したが、「タコが自分の足を食べているみたい」と社員からは自ちょう気味の声も漏れる。かつての「栄光」も時代の波にのまれてしまうのか―。
月刊時刻表は一八九四年に誕生し、今はJTBと弘済出版が二大出版元だ。
弘済出版によると、民営化に伴い、JR時刻表になった八八年五月号は爆発的な人気で増刷を続け、販売は三百万部を超えた。だが、その後は、九七年の長野新幹線開業時をピークに、減り続け、歯止めがかからなくなったという。
弘済出版は「逆風」の理由として、不況、IT化を挙げる。企業は各課、各部で時刻表を買っていたが、不況のあおりで、購入は総務課に一本化。出張などの際は、社員が回し読みする企業が多いという。
インターネットの普及も追い打ちをかけた。JR九州などが、ホームページに経路や料金の検索ができるサイトを掲載。ダイヤ改正のたびに、買い替えが必要な時刻表と違い、必要なときに瞬時に一覧できる便利さから、利用は急増している。
対抗策として、弘済出版はパソコンや携帯電話からアクセスできる時刻表検索サイト「どこなびドットコム」を、JTBも「スパなび」をそれぞれ開設。現在は無料で、両社とも将来の有料化を目指しているが、何とも皮肉な話だ。
弘済出版の河田健治常務は「いつか部数が半減するのでは」と危機感を抱く一方で、「紙の時刻表は必ず残る。操作性がパソコンより圧倒的に優れ、携帯電話では、こんなに多くの情報は出せない」と力説する。
ただ、JR九州のある社員は「一般の人が旅行するには、パソコン検索で十分だし、駅の窓口でも細かく説明しているからねえ」という。
鉄道ライターの種村直樹さんも「鉄道ミステリーも、列車ダイヤより、旅情や雰囲気を重視した作品が喜ばれるようになった。マイカー時代だし、不振も時代の流れかも…」と語った。
福岡市から物語が始まる松本清張の推理小説「点と線」の構想が生まれたのは、丹念に読み込んだ時刻表からだったのだが…。