2001年8月23日朝刊掲載
第83回全国高校野球選手権・最終日=豪打頂点に 日大三50得点90安打
締めはエースが底力
8月22日
最終戦
123456789
近江(滋賀) 0 0 0 0 0 1 0 0 1 2
日大三(日東京) 0 2 0 0 0 0 2 1   5  

写真=念願の初優勝を果たし喜ぶ日大三ナイン▼

 第83回全国高校野球選手権大会最終日は22日、甲子園球場で決勝を行い、日大三(西東京)が5―2で近江(滋賀)を破り、初優勝を果たした。日大三は二回、2内野安打などで二死二、三塁とし、諸角の中前打で2点を先制。七回には原島の左前打などで2点を追加、八回にも1点を加えた。エース近藤は近江の反撃を2点にしのぎ、完投した。日大三は今大会の6試合中5試合で2けた安打をマーク、強打で勝ち上がった。通算打率は4割2分7厘で、昨年智弁和歌山がつくった大会記録の4割1分3厘を上回った。3投手の継投を武器に、春夏を通じて初の決勝進出を果たした近江は、終盤投手陣がつかまった。九回の反撃も及ばず、滋賀県勢として春夏を通じての初優勝を逃した。



◇ハイライト◇決勝の重圧はねのける

 全国制覇にあと一歩となった九回のマウンドで、日大三のエース近藤は充実感に浸っていた。「ここまで投げた達成感で胸がいっぱいでした」。勝利に貢献した投球が何よりうれしかった。
 「いつも打線に助けられたから、最後だけはおれたちが守って攻撃陣を楽にしてやろう」。捕手の諸角とそう話して臨んだ決勝。打線が近江・竹内のスライダーにほんろうされ、「決勝戦の雰囲気にのまれていた」(小倉監督)と前半はいつもの快音が続かなかった。それだけに変化球を低めに集めて五回を2安打に抑えた近藤の投球が、後半に勝利へ向かうリズムをチームにもたらした。
 二回は諸角が2点先制打。七回の2点は諸角、近藤の四死球がきっかけ。八回は近藤の右前安打がダメ押し点につながった。すべての得点に2人が絡み、「おれたちが」という気持ちが攻撃にも表れた。「打者に自信を持てと言い続けたが、前半は苦しかった。でも、近藤と諸角がしっかり地に足をつけていてくれた」と小倉監督はバッテリーに頭を下げた。
 6試合で90安打、50得点の打線は「甘い球を逃さず、自分のフォームで積極的に打て」という教えを守り通した。投手陣は役割分担をしっかり果たし、失点を最小限にとどめた。そのナインの力の結集が深紅の大旗を初めて母校にもたらした。
 「選手が力を出し切れば絶対優勝できると思った。素直に野球に取り組む選手に恵まれたことが幸せでした」と話す小倉監督の潤んだ目が、きらりと光った。

●一番格好いいよ●
 日大三・小倉全由監督の話
 相手投手を打てずに苦しんだが、近藤がよく投げ、投打で選手がしっかりやった。力はあるし目標は甲子園で優勝、と言ってきたが、その通りにやってくれた。(選手に)おまえら一番格好いいよ、と言ってやりたい。

●選手に心から感謝●
 近江・多賀章仁監督の話
 九回に1点取ってくれた時は涙が出た。ここまで連れてきてくれた選手に心から感謝したい。甲子園の温かい応援に感謝したい。日本一が夢でないところまできた。一からチームをつくり直して、大旗を滋賀に持って帰れるように頑張る。

 ■ 選手ひとこと ■

日大三・原島右翼手
(七回に貴重な適時打)
・・・「どんな形でも生きようと思って打席に立った。真っすぐを狙っていて変化球がきたけど、自然と体が反応した」
日大三・内田中堅手
(無安打)
・・・「優勝してうれしいが、自分は全く駄目だったので素直に喜べない」
日大三・野崎三塁手
(2年生)
・・・「ヒットはなかったけど、次につなげようと思ってやりました」
日大三・諸角捕手
(先制の2点適時打)
・・・「シンに当たったので抜けたと思った。人一倍打ち込んできたからきっと打てると思った。夢を達成できてうれしい」
日大三・斎藤一塁手 ・・・「絶対に打てると思っていたので自分も打ちたかったけど、最高の仲間と優勝できてうれしい」
日大三・石井左翼手
(3安打2得点)
・・・「今まで(地方大会などの)決勝で打てなかったことがないので、大舞台に強いんだと自信を持っていた」
日大三・菊村左翼手
(九回に交代出場)
・・・「今までやってきたことが報われてうれしい。守備固めでも出られてよかった」
日大三・杉山主将 ・・・「最高の仲間たちです。キャプテンとして幸せ。試合に出られなくても、十分の役割が果たせたのでうれしい」
日大三・都築二塁手
(八回に貴重なダメ押し打)
・・・「きょうは全然打てずに焦っていた。最高です。春の借りが返せて良かった」
日大三・近藤投手
(2失点完投)
・・・「相手が粘り強くて最後まで気が抜けなかった。絶対に負けないんだと言い聞かせて投げた」
日大三・幸内遊撃手
(2年生)
・・・「最後は自分のところに飛んでこいと思っていたんだけど、セカンドでしたね。来年春も選抜に出て優勝したい」

▼日大三高 1929年創立。当時は東京・赤坂にあったが、現在は町田市の多摩丘陵地にある。男女共学。野球部は開校と同時に創部され、71年春の選抜大会で優勝。OBに元F1レーサーの片山右京氏、プロ野球元ヤクルト監督の関根潤三氏ら。

 

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2001年8月16日朝刊掲載
全国高校野球選手権・第8日=「燃焼」ナインに笑み
「猛追」スタンド沸いた 「惜敗」たたえる拍手
8月15日
2回戦(第2試合)
123456789
松山商(愛媛) 2 0 0 0 0 4 1 0 1 8
九産大九州(福岡) 0 0 0 0 0 0 6 0 0 6

▲七回裏に6連打で1点差まで追い上げ、喜びを爆発させる九産大九州の応援団
 全国高校野球選手権大会8日目の15日、県代表の九産大九州は松山商(愛媛)と対戦、六回まで無安打に抑えられたが、七回の猛攻で一挙6点を挙げるなど追撃。あと一歩まで迫ったが、6―8で惜敗した。終盤の粘りの野球で、夏の甲子園出場26回の古豪を追い詰めたナイン。森崎哲哉監督は「完敗と思っていたのによくやってくれた」とねぎらい、選手からは笑みがこぼれた。駆け付けた父母やOBら約500人からは健闘をたたえる声援と拍手が鳴り止まなかった。

 【一回表】 松山商の先頭打者がセンター前ヒット。送りバントで二塁へ。すかさず4番打者が、主戦佐伯尚治投手のスライダーをライト線へ2点先制のタイムリー。「頑張れ、頑張れ、佐伯」。アルプススタンドの黄色いメガホンが大きく揺れる。
 【五回裏】 二死、6番吉田法政選手が四球で初出塁。が、7番広渡孝太選手が打ち取られ、松山商先発投手の好投の前にゼロが続く。応援席で杉田健副主将が音頭を取り、80人の野球部員が「えっさ、えっささ」と気合を込める。野球部父母の会会長の吉野秀幸さん(48)も「まだ、これから。きっとやってくれる」。
 【七回裏】
▲甲子園球場の砂を袋に詰める九産大九州ナイン
応援席の重苦しい雰囲気が吹き飛んだ。連続三振で二死となったが、甲子園入り後、ヒットがなかった4番植津明選手が「どうしても出したかった」1本をセンター前にクリーンヒット。「行け、行け、九州!」「粘る野球を見せてやれ」。4番の一振りに活気づき、怒とうの4連打で相手先発投手をノックアウト。
 相手がエースに交代しても「ミラクル九州打線」は止まらない。鈴木敬洋選手がレフト前に安打、七回表からマウンドに立った吉野孝幸投手が、高めのストレートをレフトスタンドへ3点本塁打。一挙6点に沸くアルプススタンド。「よくやった。これで流れが変わった」。吉野選手の母貴美さん(47)のほおを悲願の涙が流れた。
 【九回裏】 円陣を組むナインに、応援席から「もう一度ミラクル九州を見せてやれ」。二死、鈴木選手がセンター前に安打。最後の望みをかけ燃える応援団は「さあ、今からだ」。吉野投手に「もう一発」と期待の声援が飛んだが、バットは空を切り三振。深川良介主将の父良清さん(42)は「最後に九州高の本領を見せてくれた。よくやった」と惜しみない拍手を送った。

 ●弥富高のはちまき
 〇…スタンドで応援した野球部員4人が頭に巻いていた「日本一はちまき」は、初戦で戦った弥富(愛知)の応援団から試合後、球場の外で譲り受けたもの。
 4人は、はちまきに思い思いの言葉を書き込んで応援。庄崎正幸選手(2年)は受け取った「日本一はちまき」に、「弥富の分もガンバレ」と力強く書き、ぎゅっと頭に結んだ。 勝敗を超え、甲子園でともに力を尽くしたチームからの友情を胸に、4人は最後まであきらめず、ナインに熱い声援を送り続けた。

 ●OB惜しみなく拍手
 〇…2年前の選抜大会で、甲子園に初出場した九産大九州チームの中堅手、泉正敏さん(九産大2年)もアルプススタンドに駆け付けた。1回戦には応援に来られず、元同級生がアルプススタンドで校歌を歌ったのを聞き、「少し悔しかった」と泉さん。この日も、再び校歌を響かせようと、意気込んだ。
 その願いはかなわなかったが、古豪相手に最後までくらいついたナインの姿に「“ねばり強い九州”は引き継がれている」。惜しみない拍手を送り、心の中で、校歌を口ずさんだ。

 ●「僕たちも甲子園に」
 〇…九産大九州のOB3人がコーチを務める硬式少年野球チーム「福岡アストロズ」(福岡市西区)の十四人もスタンドでひときわ大きな声を張り上げ、応援した。
 コーチの松下直樹さん(36)が「甲子園の感動を知ってもらいたい」と引率してきた。
 初めて甲子園に来た宮永将太主将(愛宕浜小6年)は「一生懸命に練習をして、高校生になったら、ここでプレーしたい」。ナインの活躍に自らの夢を重ね合わせた。

 ■ 選手ひとこと ■

佐伯尚治投手 ・・・相手が上だったけど、最後まで皆が頑張ってくれ満足です。
鈴木敬洋捕手 ・・・最後の試合、悔いは残るが九産大九州で野球をやれ最高だった。
中石洋兵一塁手 ・・・アルプスから皆の声が聞こえた。ナインを信頼できた。
広渡孝太二塁手 ・・・このまま終わらせないぞと最後に力を出せた。最高だった。
植津明三塁手 ・・・狙った内角直球に合わせることができた。でも悔しい。
厚健太郎遊撃手 ・・・負けたことは悔しいが、自分たちの持ち味は出せた。
高橋英嗣左翼手 ・・・「楽しんでこい」という監督との約束は果たせたと思う。
吉田法政中堅手 ・・・力は出せたと思うが、勝てなきゃ満足とは言えない。
平原大嗣右翼手 ・・・みんなとここまでやって来れただけでうれしい。
吉野孝幸選手 ・・・悔いはない。一生忘れられない思い出になった。
久保良太選手 ・・・勝ちたかったが、最後まで自分たちの野球ができた。
鵜口康裕選手 ・・・最後まで絶対にあきらめなかった。悔いはない。
柴田大輔選手 ・・・大事な場面で打てずに悔しいが、粘りの野球ができた。
中野慎也選手 ・・・いけると思った。悔しいがみんな一生懸命やった。
能勢隼人選手 ・・・先輩たちはすごいと思った。来年必ず帰って来る。
深川良介選手 ・・・もう一つ勝ちたかったが、みんな本当によくやった。

 ●九産大九州高の「夏」を振り返る
 ○粘りの野球新チームにも
 古豪・松山商を相手に、終盤の猛攻で食い下がった九産大九州。「絶対にあきらめない」。その粘りの野球は後輩たちに大きな足跡を残した。  初戦は14安打を浴びせ弥富(愛知)に9―2で圧勝。一度火がつくと止まらない「ミラクル打線」が爆発した。だが、その打線は、松山商戦では相手先発に抑えられ六回まで沈黙。「このままでは、打撃チームの名が泣く」と、七回二死から意地を見せた。1イニング6連打で一挙6点を挙げる猛攻は、古豪を追いつめ、観客を沸かせた。  1点差に詰め寄ったものの、九回表に連打で追加点を許し、相手打線を抑えきれなかったことが悔やまれる。  今後は、より一層の投手力アップに期待。決してあきらめない、粘りの野球の精神を投打に引き継いだチームは、必ず甲子園に戻ってくるだろう。  昨秋、県の第1代表として臨んだ九州大会2回戦で敗れ、選抜出場を逃した悔しさをバネに、夏の甲子園初出場を果たした九産大九州。2回戦の敗北を跳躍台として、新チームも大きく成長してほしい。  九産大九州の新たな球史はこの夏から始まった。

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2001年8月16日朝刊掲載
全国高校野球選手権・第8日=九産大九州 6連打 反撃あと一歩
吉野意地の3ラン「胸張って帰れます」
写真=あと一歩及ばず松山商に敗れ、甲子園を後にする九産大九州ナインら▼

 九産大九州の粘りも、あと一歩及ばなかった。7点をリードされ、それまで無安打だった九産大九州が七回二死から大反撃した。植津がチーム初安打を中前に放つと、中石が左前打、ここで吉田が右中間にタイムリー2点三塁打。さらに広渡、鈴木が連打したあと、吉野が左翼越えに3ランして1点差。九産大九州の二死からの6連打は見事だったが、7点差はきつかった。



九産大九州ナイン 「無安打」一転 二死から6点

 まさかの大敗から大接戦へ。それまで0―7という一方的な展開が1本のヒットをきっかけに一気にヒートアップした。松山商の阿部に七回二死まで無安打に封じられていたが、がけっぷちからの6連打で6点。「全力を尽くしました。胸を張って帰れます」。1点差に迫る3ランを放った吉野孝幸(3年)に涙はなかった。

 あきらめない気持ちが九産大九州をよみがえらせた。連打の立役者、4番植津明(同)は大勝した初戦から無安打。しかし、「監督から『意地を見せてこい』と言われ、開き直って打席に立てた」とチーム初安打を中前に放った。

 その後、沈黙していた一塁側アルプススタンドが活気づくのに長い時間は必要なかった。続く中石洋兵(同)が左前打、吉田法政(同)の右中間三塁打で2点を挙げると、広渡孝太(同)、鈴木敬洋(同)が連続左前打。さらに七回にエース佐伯尚治(同)からマウンドを引き継いだ吉野が左翼ポール際に3ランを打ち込んだ。「内角の直球。思い切って振って当たった打球が浜風に押された」。

 最終回、三振を喫して最後の打者となった吉野だが、「どちらもフルスイング。自分らしい」と笑顔は消えなかった。

 もう1人の投手、エース佐伯も笑顔を絶やさなかった。「6連打で6点とってくれたのは本当にうれしかった。ここまで来られたことも満足です」。福岡県大会で左足首を痛め、本来なら満足に投げられない状態が続いていただけに、森崎哲哉監督も「(笑顔は)やっと重圧から解放されたんでしょう。よく投げてくれた」とエースをたたえた。

 松本俊二前校長の急逝、エースの負傷、さまざまな出来事をエネルギーに変えて勝ち取った初出場初勝利、そして粘りの6連打。「最後まであきらめない」。九産大九州の新しい伝統がここから始まる。(久保安秀)

写真=【松山商―九産大九州】七回裏九産大九州二死一、二塁、吉野は左越えの3ランホームランを放ちガッツポーズ▲

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2001年8月10日朝刊掲載
全国高校野球選手権・第2日=九産大九州 連打でつかんだ初勝利
狙い球指示 次々タイムリー 佐伯、けが押し粘投
8月09日
1回戦(第3試合)
123456789
弥富(愛知) 0000000202
九産大九州(福岡) 00004401X9

▼写真=甲子園で初勝利。笑顔でスタンド前へ向かう九産大九州の選手たち

九産大九州ナイン  九産大九州がエース・佐伯のうまい投球と、打線の爆発で春夏を通じて甲子園初勝利をマークした。

 九産大九州は五回二死三塁から鈴木の左中間二塁打で先制。佐伯、高橋らが続いて4点を挙げた。六回も二死二、三塁で佐伯が三塁線を破る2点打。さらに厚の右中間適時二塁打で2点を加えた。

 エース・佐伯は弥富を7安打2失点に抑えた。

 初出場で味わう校歌、九産大九州ナインは心の底から声を張り上げた。「校長先生に届くようにでかい声で歌いました」と深川良介主将(3年)。心に浮かぶ故・松本俊二前校長の“笑顔”に甲子園初勝利を伝えた。今夏の福岡県予選まっただ中の7月15日、急性心不全で亡くなった松本前校長。かつて野球部の副部長も務め、校長就任後も公式戦にはすべて足を運んだという。「一番喜んでくれていると思います」。森崎哲哉監督はこみ上げる涙をこらえた。

 序盤は弥富の左腕、日置が操る低めの変化球に苦しんだ。森崎監督も「1、2点の争いになるかと思っていた」と接戦を覚悟した。ところが、一言のアドバイスで状況が一変する。「直球か高めのカーブ」。森崎監督が狙い球の指示を出した直後の五回、九産大九州打線が持ち前の集中力を発揮。二死三塁から8番の鈴木敬洋(3年)が左翼に適時二塁打を放つと、9番佐伯尚治(同)、1番高橋英嗣(同)、四球をはさんで3番平原大嗣(同)と連続タイムリーで、一気に爆発した。続く六回も6安打で4点。勝負を決めた。

 打撃でも活躍したエース佐伯は、走者を背負いながらもホームを踏ませない“らしい”投球を展開。県予選で痛め、テーピングで固めた左足首はまだ全力疾走ができず、不安を抱えたマウンドとなったが、粘り強く緩急を使い分け、内外角にボールを散らした。「外角のスライダーが良かった。鈴木の言う通りに投げた」。噴き出す汗をぬぐうエースに達成感が漂った。

 松本前校長の霊前に誓った1勝は達成した。ただ、九産大九州にとってはスタートにすぎない。「課題として残った走塁などをきちんと修正して次に臨みたい」。森崎監督、ナインの目指す“ゴール”はまだまだ先だ。(久保安秀)

写真=【弥富―九産大九州】弥富打線を2点に抑え完投した九産大九州の佐伯投手▲

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2001年8月10日朝刊掲載
ダッシュ九産大九州・夏甲子園=念願の校歌高らかに
声弾み「次もいける」
写真=五回裏に待望の先制点を挙げ,喜びを爆発させるアルプススタンド▼

アルプススタンド  全国高校野球選手権大会で県代表の九産大九州は9日、大会2日目の第3試合で、中盤に打者1巡の猛打で弥富(愛知)を突き放し、9―2の大差をつけて悲願の初戦突破を果たした。森崎哲哉監督は「この喜びは真っ先に前校長に伝えたい」。地方大会開催中の7月に急逝した松本俊二・前校長。アルプススタンドからナインの活躍を見守っていた遺影は、甲子園球場に高らかに響き渡る校歌に、ほほ笑んだかに見えた。

 【三回表】連打で一死、一、二塁。九産大九州のバッテリーミスでパスボール。それぞれ進塁し弥富先制のチャンス。主戦の佐伯尚治投手は大きく深呼吸。父佐伯高治さん(51)は「辛抱強い子だからきっと抑えてくれるはず」。直球が低めに決まり、3番打者をフライに打ち取り、ピンチを切り抜けた。

 【五回裏】吉田法政選手の二塁打を足がかりに、鈴木敬洋選手、佐伯投手、高橋英嗣選手と怒とうの3連打3得点で、弥富の主戦日置投手をマウンドから引きずり降ろした。「押せ押せ、九州! 行け行け、九州!」。応援席で黄色いメガホンが大きく揺れた。猛打はもう止まらない。打者1巡で、1点を追加し、4点を先制。鈴木選手の母、絹代さん(45)が声を張り上げた。「結果を出したいといっていた通り。もっと打って」

 【六回裏】中石洋兵選手の内野安打をきっかけに、またも猛打が爆発した。佐伯投手も2打点を挙げる活躍。「お兄ちゃんはかっこいい。自分もあの舞台に立ちたい」。アルプススタンド最前列で、佐伯投手の弟、憲吾君(14)が力を込めた。

 【九回表】左足首を固くテーピングし、初の甲子園のマウンドに臨んだ佐伯投手。完封を目前に八回に2点を許したが「亡くなった松本先生のために、成し得なかった先輩たちのために」と、最後の打者を得意のスライダーでフライに打ち取った。

 その瞬間、アルプススタンドでは1100人の大応援団が、肩を抱き合い、甲子園初勝利の喜びを分かち合った。1999年春の選抜に初出場し、初戦敗退した際の主戦投手だった植津栄一さん(19)=九産大2年=は「うれしい。よくやってくれた。ありがとう」。  2回戦となる15日の第2試合では、松山商(愛媛)と対戦予定。「この調子で次もいける」。応援団の声が弾んだ。

亡き前校長先生、喜んでください… 遺影がナイン見守る
 〇…7月15日に急逝した松本俊二・前校長の遺影が、スタンドでナインを見守った=写真左。

 「先生が一番、夏の甲子園出場を夢見ていたと思う」。写真を託された野球部の志田浩太郎選手(1年)は応援団の一番前の席に座り、弥富の最終打者を打ち取った瞬間、遺影を天に大きく掲げた。「きっと天国で喜んでくれています」(志田選手)

 九産大九州の校歌が春、夏を通じて初めて甲子園球場の空高く響いた。

博多っ子パワーが爆発
 〇…「博多の祭りたい!」。五回の集中打で、九産大九州が先制点を挙げると、スタンドにいた春日高(春日市)野球部の笹倉慎平君(3年)ら9人が段ボールで作った応援ボードを高々と掲げて叫んだ=写真右。

 笹倉君は「母校は福岡大会初戦で負けたが、同じ県の代表校に奮起を」と8日夜に列車で出発。ボードは、車中で「山笠などと同様に、博多っ子パワーを爆発させて」と急ごしらえした。九産大九州は打線が爆発し初戦突破。9人も勝利を祝う、お祭り騒ぎに酔いしれた。




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2001年8月10日朝刊掲載
晴れて1勝 笑顔満開 留守部隊メガホン打ち「やった」
▼写真=五回の猛攻に飛び上がって喜ぶ九産大九州の生徒たち

九産大九州の生徒たち  「やったぞ、甲子園初勝利だ」。福岡市東区の九産大九州高校でも九日、大型テレビの前で応援していた生徒らが初戦突破に沸き返り、試合後は、校歌を高らかに歌った。

 同校の多目的ホールには、部活動などで登校した生徒や教師ら約八十人が集合。最前列には七月に急逝した松本俊二前校長の遺影が飾られた。

 声援が一気に爆発したのは五回。一挙4点の猛攻に生徒たちはメガホンを打ち鳴らし、さながらスタンドの熱気。六回も追加点を重ね、田部健介さん(三年)は「これで初勝利は決まり」。八回の相手校の反撃にも余裕の表情だった。

 原野雅教頭は「中盤で畳みかけるように得点する、うち本来の力を発揮できた。松本前校長もきっと見守ってくれたはずだ」と感無量の面持ち。三代智恵子さん(二年)も「感動しました。2回戦は甲子園に行きます」と話していた。

応援団旗も機嫌良く
 〇…「点が入るとなびくんです。今日は機嫌が良すぎます」。一塁側アルプススタンドの最上段で、西日本最大という大応援団旗(畳10畳分)を学生服姿で支えていた九州高応援団OB会「志魂会」会長の加藤徹治さん(27)=福岡市東区=は、汗まみれの顔をほころばせた。

 球場上空は強い風が吹き、旗の体感重量は120キロ近く。加藤さんは「団旗を倒したら応援団の恥」と歯をくいしばったが、打線の爆発に「気持ちいい重さ。決勝戦まで持ち続けるぞ」と、疲れも吹っ飛んだ。

写真=重さ120キロの大応援団旗▲

選手のひとこと
みんなの力で勝てた/応援がうれしかった

佐伯尚治投手  マウンドでは緊張したけど、勝ててよかった。
鈴木敬洋捕手  打撃が良くなかったので、2回戦までには調整したい。
中石洋兵一塁手 チームに貢献できたのでよかった。
広渡孝太二塁手 みんなの力で勝てたことがうれしかった。
植津明三塁手  勝ててよかったけれど、力んで打てなかったのが悔しい。
厚健太郎遊撃手 つなげることができた。気持ちよかった。
高橋英嗣左翼手 初出場でもリラックスできて、楽しかった。
吉田法政中堅手 直球に絞って打てた。校歌を歌うことができて最高です。
平原大嗣右翼手 応援がうれしかった。亡くなった校長先生のためにも優勝を目指したい。
吉野孝幸選手  ずっと気が抜けなかったが、勝てて本当にうれしい。
久保良太選手  1日でも長くみんなと野球ができるよう頑張りたい。
鵜口康裕選手  本当にうれしい。普段通りの野球ができたのが勝因だと思う。
柴田大輔選手  甲子園で校歌を歌えて、最高に気持ちよかった。
中野慎也選手  次戦では打席に立てるよう、バッティングの調子を上げたい。
能勢隼人選手  少しでも長く、甲子園で先輩たちとプレーしたい。
深川良介選手  天国にいる校長先生に聞こえるように大声で校歌を歌った。

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