ソフトボール
上野由岐子(日立高崎)
速球派の完全試合投手
 1人の走者も出さずに勝利を収める完全試合。20歳になったばかりの上野由岐子は、投手の勲章でもある完全試合の達成数を覚えていない。「数えられないほどやりました」。アジア大会、さらにその先にあるアテネ五輪で悲願の金メダルを狙う日本の新エースは笑顔で右腕をさすった。
 MAX113キロと“現役世界最速”のストレートを武器に、三振と凡打の山を築かせる。7―8月にカナダで開かれた女子世界選手権。決勝トーナメント1回戦の中国戦は圧巻だった。速球に加え、現在磨いている変化球もコーナーに決まり、アテネへの出場権がかかった大一番で完全試合をやってのけた。

 宇津木妙子監督が「心臓に毛が生えている」と評したマウンド度胸。福岡・九州女子高時代にもインターハイ出場がかかった大事な試合でパーフェクトを演じている。「ここ一番での集中力とスター性。あんな選手は初めてだった」。同高で25年間、ソフトボールを指導する平島広昭監督は、上野在学中に何度も驚かされたという。

 50メートル走で6秒台を記録するなど高い運動能力が災いし、高2の7月には体育の授業の走り高跳びで、教師の想定を超える跳躍力でマット外の地面に激突。腰椎(ようつい)骨折で3カ月の入院生活を送った。背番号7のエースのユニホームをベンチに飾り、インターハイを戦ったチームメート。「自分はいろいろな人に支えられていることが分かった」と上野は振り返る。以来、競技と向き合う意識が変わり、1球1球を、より大切にするようになった。

 社会人になって取り組むウエートトレーニングで体はひと回り大きくなり、球速は高校のときより7、8キロアップした。「ストレートで自分をアピールしたい。五輪へ向け、アジアで負けるわけにはいかない」。パーフェクト投手はアテネを見据え、釜山のマウンドに上がる。 (手島 基)

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 ▽うえの・ゆきこ 日立高崎。1982年7月22日生まれ、福岡市出身。173センチ、69キロ。福岡・柏原小4年でソフトボールを始め、九州女子高時代はジュニア世界選手権、国体などで優勝。社会人1年目の昨年の日本リーグではリーグ史上初の2試合連続完全試合を達成。

2002.9.11掲載