20000101付 朝刊
1.大分県/日蘭交流今昔物語−−「リーフデ号」漂着400年 諭吉の里・中津 文化脈々と 殿様も蘭学びいき 市民グループ「キャラバンなかつ」 伝統生かし活性化
日蘭交流四百周年を迎えた今年、中津市では、地元に息づく蘭学文化を生かした地域おこしグループが意気込みを新たにしている。開業医や商店主、主婦らさまざまな顔触れが集う「キャラバンなかつ」。会長の上原公一さん(52)を先頭にメンバーたちが口をそろえた。「中津を変えるよ」
●「先進地」
江戸時代、中津のお殿さまは蘭学にご執心だった。三代藩主奥平昌鹿(まさか)は日本初の解剖医学書「解体新書」の編集にかかわった蘭医・前野良沢(りょうたく)をバックアップ。中津の蘭学興隆のきっかけをつくると五代昌高は「蘭語訳撰(やくせん)」「中津バスタード辞典」の和蘭、蘭和辞典の出版事業を手がけ、中津を全国屈指の蘭学先進地に引き上げた。
その豊かな歴史・文化を広く市民に“伝授”するのが「蘭学の里勉強会」。グループの主要イベントだ。各分野の研究者らを招きこれまでに四回開いた。市民を対象に始めた勉強会には県外からも参加者が訪れ、二百人を超える会へと急成長している。
●地域の宝
「(福沢)諭吉さんのような偉い人を生んだのもこの土壌があったから」。女性メンバーの一人は、勉強会を通して地域に根付く蘭学の底流を知り、地域を学ぶ大切さを痛感したという。
「勉強会で地域のことを何も知らない自分に気付いた。地元の良さを一番知っとるのは住民じゃないと」。上原さんたちは、こんな思いを抱きながら活動の幅を広げている。
昨年は、山口県萩市から百五十万円の人力車を共同購入。週末にメンバーが観光客を乗せて車を引く城下町巡りツアーを始めた。現在は、神社で朽ちていた御所車の復元に取り組んでいる。わずかな地域の宝も拾い集めて地域おこしに生かす企画がめじろ押しだ。
●逆風から
順風満帆に見える会だが、一九九五年のスタート当時は逆風の連続だった。
最初に手掛けた観光マップ。有名・無名を問わず、知る限りの中津の名所・旧跡など見どころを満載した。ところが、マップの備え付けを申し込んだ中津市役所には「公のものではないから」と突っぱねられ、市民から「単なる売名行為では」と冷ややかな視線を浴びた。
しかし、活動に好意的だったJR中津駅でマップを手にする観光客が増え、改訂を重ねてよりきめ細かな観光ポイントを掲載するうち、商店主から「うちの店も載せてよ」と声が掛かるようになった。市役所も三年前からマップを置くようになり、版は既に六回を数える。
たった三人で船出した会も、今やメンバーは八十人。行政に頼らず、地元の魅力を住民が引き出す―蘭学の里に生まれた地域づくりグループは、日蘭交流四百周年の年に、どんな航路を描くのか。