新時代を駆ける
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ふたがみ・かつとし
 1945年愛媛県生まれ。愛媛大学工学部機械工学科卒。67年に入社。米国メイン大学に留学し製紙工学を学ぶ。取締役開発部長、常務取締役生産担当、専務取締役西日本営業本部長などを経て、2001年から現職。趣味は読書とテニス。
林田 秀彦氏

大王製紙株式会社社長

二神 勝利氏

[大王製紙株式会社ホームページ]  http://www.elleair.co.jp/

地球にやさしい紙づくり
最先端の技術力で世界と競争

 原油や原料のパルプの高騰、加えて外国製紙の国内市場参入など、厳しさを増す製紙業界。その中で約2万種以上の紙製品を製造している三島工場(愛媛県四国中央市)を基幹工場にする業界第3位の大王製紙(本社・愛媛、東京)では、早くから取り組んできた古紙再生技術の独自開発や海外での大規模な植林事業などが力となって、順調に業績を伸ばしている。さらに同工場に建設中の世界最速の塗工紙生産設備が完成する来年夏以降は海外市場、特に中国に向けて積極的に輸出も考えているという。「製紙業は環境にやさしい21世紀型産業」という同社の二神勝利社長に話を聞いた。聞き手は、山本正和・西日本新聞社企画推進部担当部長兼編集企画委員会委員。
[2006年10月30日朝刊掲載]
■省資源・省エネを達成

単一製紙工場としては世界最大規模の三島工場
単一製紙工場としては
世界最大規模の三島工場
 −石油の高騰による影響をほとんど受けていないそうですね。
 二神 1970年代のオイルショック以来、脱オイル化に取り組んできた成果です。例えば三島工場では従来は燃料として重油を使用していましたが、現在は完全に重油から石炭に転化していますし、廃棄物を燃やすバイオマスボイラーも4基備え、廃棄物を工場のエネルギーに変えています。灰も土地造成やセメントの材料に再資源化していますが、最近は土壌の改良材や盛土材としても販売しています。現在、大学や官公庁と一緒に灰の再資源化の研究を進めていますので、数年後には灰の全量を再資源化してゼロエミッションを達成できると思っています。
 −古紙の再利用など、省資源への取り組みは。
 二神 古紙の再利用も、すでに69年には再処理のプラントを稼働させ、ノウハウを積み上げてきました。試行錯誤を繰り返しましたが、今ではビニールでラミネートされた紙から、ホチキスでとじられた書類や雑誌、背のりがある本、CDのディスクが入っている雑誌まで、それらを分別せず一緒にコンベヤーラインに乗せれば、機械が自動的に選別してしまう当社だけの技術を開発しました。この技術を持っているのは当社だけです。今後もこの技術を生かして未利用古紙のリサイクルを進め、循環型社会の形成に貢献していきます。
 −再生填(てん)料の技術開発などで今年、地球環境大賞の文部科学大臣賞を受賞された。再生填料とはどんなものなのですか。
 二神 チラシなどに使われる塗工紙は、その表面に炭酸カルシウムやクレーなど業界用語で填料・顔料と言われる石の粉を塗って白さと裏写りを防いでいます。これらの填料・顔料は古紙再生処理の過程で、廃棄物になっていたのです。これが再生できれば、一層の廃棄物減量になるということで、6年前にプロジェクトチームをつくり、昨年、もともとの填料・顔料と遜色(そんしょく)ない白さに再生できる技術を確立しました。
 現在、三島工場に年間3万トンを回収できる本格的なプラントを建造する計画を進めていますが、これも世界で初めての技術です。
 −原料確保のための植林にも積極的に展開されている。
 二神 現在の最高顧問が、89年に南米のチリで初めて植林事業のための会社を設立し、福岡市の面積の約2倍に当たる6万ヘクタールを植林地として確保し、現在、その約半分にユーカリなどの樹木を植えています。18年たった今、この植林地で育った木々が、当社の工場で作る紙の原料になっています。無秩序な森林伐採を防ぎ、逆に森を作って地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収にも貢献しています。このように、私たちは、地球にやさしい21世紀型の紙づくりを目指しています。


■新生産ラインで輸出へ

 −省資源・省エネ化を達成した今、三島工場に建設中の塗工紙生産設備は、次の飛躍への切り札でもある。
 二神 日本の製紙業は今までずっと内需型産業で発展してきたのです。それが最近は輸入紙が増えている。特にコピー紙では、3割がインドネシアや中国製の紙。もう国内だけを考えている時代ではない、海外でどう競争するかを研究した結果、紙の一層の軽量化と高品質化を実現することで、海外でも十分戦えると自信を持っています。
 −コスト面では大丈夫ですか。
 二神 元の切り上げの問題とともに、中国は今、大きく構造が変わってきています。石油も輸入に依存していますし、木材資源はもともと少ない。唯一、安い労働力だけが脅威ですが、私たちの生産ラインはほとんどコンピューター化していますので、中国の半分の人員で済む。品質には絶対の自信がありますから、輸出しても十分に競争できます。
 −現地生産もするのですか。
 二神 巨額な投資が必要でリスクが大きいため、現時点ではまったく考えていません。幸い三島工場は、四季を通じて海がおだやかな瀬戸内海に面した臨海工場です。港には、10万トン級の大型貨物船が4隻も接岸できる護岸設備があって、日本の西に位置しています。このため、比較的少ない日数で、中国やアジアに直接、工場から船で輸出できますので、製品供給にも心配ありません。
 −市場としては中国が一番。
 二神 世界最大の人口を抱え、毎年、年間500万トンずつ紙の消費が増えている。500万トンは三島工場の年間生産量の2倍半。信じられないほどの需要があるのです。これはチャンスです。同じようにインドも今、紙の需要が増しています。私たちの製品が必ず受け入れられると思っています。


■グローバルな人材育成

 −技術革新の原動力となる人材をどう育成しているのでしょうか。
 二神 社内では多くの研修を行っていますが、その中の一例として、語学研修があります。最高顧問が36年前から始めましたが、英語、スペイン語、中国語の3つのコースがあり、毎年7人ずつ、職場を離れて1年半、徹底した語学研修を社内のスクールで受けます。
 −まったく仕事を休んで。
 二神 グローバル化の中で、海外に子会社や関連会社がありますから、まずは言葉のハンディがないようにしようと。この研修の後に、アメリカの大学院などで学んでいます。すでに200人ぐらいが研修を受け、通訳なしで海外の人たちと自由に話をする。この効果は大きかったですね。
 アメリカや北欧、ドイツなどで進んだ技術が研究・開発されていると聞けば、すぐに行って、工場視察し学んでくる。そうやって新しいものを身に付けて帰ってきて、みんなにオープンにする。それぞれの職場で「これを調べに行きたい」と言えば、すぐにチームを組んで現地調査に行っています。今もいくつかのチームが世界を駆け巡っているはずですよ。
 −非常にグローバルな会社でもあるのですね。
 二神 フェース・ツウ・フェースで相手と話して情報を得る。これが基本。話ができれば、相手も親しみを持ってくれます。そういう若い社員がどんどん増えています。これからもわが社を支えてくれると、大いに期待しています。
南米チリで6万ヘクタールの植林

 1943年5月に四国紙業など14企業の合同合併により設立。三島工場は単一製紙工場としては世界最大規模。89年に南米チリに植林会社を設立し6万7500ヘクタール(東京23区と周辺4市の面積に相当)の土地を取得。現在までに3万2400ヘクタールで植林木を育成している。初期に植えた木は、すでに高さ30メートルに成長。紙の原料として現地でチップに加工され、三島工場などに運ばれている。同社では自社植林と古紙だけを原料にした製品づくりが目標。5年前からはオーストラリア・タスマニア島でも植林を行っている。
■東京本社=東京都中央区八重洲2—7—2、電話03(3271)1961
■四国本社=愛媛県四国中央市三島紙屋町2—60、電話0896(23)2300
■資本金 301億円(2006年3月期)
■売上高 連結4023億円(2006年3月期)
■従業員数 2813人
■工場 三島工場、川之江工場(ともに愛媛県)
■支店 名古屋、大阪、九州、ホーム&パーソナルケア事業部(東京)
■グループ 国内に37社、アメリカ、チリ、中国などに関連企業を持つ。

新聞用紙を生産する大型新聞抄紙マシン
新聞用紙を生産する
大型新聞抄紙マシン
塗工紙生産設備が来年8月完成

 省資源、省エネルギー、そして紙の軽量化を実現する最新のオンマシンコーター(塗工紙生産設備)の建設が、三島工場で進められている。併せて最新の雑誌古紙処理設備(日産450トン)と、新聞古紙処理設備(日産350トン)も新設。自社植林木と古紙、それに再生填料を使った資源循環型の生産ラインが誕生する。
 新生産設備は、需要が多いコート紙を中心に、月産2万4000トンの生産能力を持つ。ラインのスピードは毎分1800メートルで世界最速。完成は来年8月の予定だ。
 同社では、この最新生産設備で作られた紙で、中国を含む東アジア市場での競争に挑む。