新時代を駆ける
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あべ・かつじ
 1952年生まれ。早稲田大学法学部卒業。76年に住宅金融公庫入庫。名古屋支店総務課長、企画部企画課長、総務部次長、財務部市場資金室長などを経て、2006年4月から現職。
阿部 勝次氏

住宅金融公庫福岡支店長

阿部 勝次氏

[住宅金融公庫ホームページ]  http://www.jyukou.go.jp/

顧客満足、住宅の質向上に貢献
【フラット35】の普及促進


 日銀が2月、政策金利を引き上げたのを受け、民間金融機関が取り扱う変動型住宅ローン金利が上昇傾向を見せてきている。低金利時代が長く続いてきたが、景気拡大が持続する中で住宅ローンも大きな変化を迎えようとしている。そんな中、住宅に特化した公的金融機関である住宅金融公庫が4月1日、独立行政法人化し「住宅金融支援機構」として生まれ変わる。これまで国民の住宅供給のサポート役を務めてきた同公庫。新機構ではどのような事業を行っていくのか。そのビジョンや新機構での事業展開について聞いた。聞き手は白石克明・西日本新聞社経済部長。
[2007年3月20日朝刊掲載]
■金利が変わらず安心感

福岡市・天神4丁目にある住宅金融公庫福岡支店
福岡市・天神4丁目にある
住宅金融公庫福岡支店
 -新機構では、どのような事業を行っていくのですか。
 阿部 住宅ローンといえば公庫融資という存在で、これまで国民の皆さまに親しまれてきましたが、量的には国民の住宅に対する充足度も高まり、加えて、民間金融機関も住宅ローン商品を多数そろえるようになってきました。こうしたことから、2001年に政府の特殊法人等整理合理化計画で公庫の06年度の廃止が決定され、05年6月に成立した住宅金融支援機構法により、独立行政法人に生まれ変わることになりました。
 事業としては、長期固定金利の住宅ローン【フラット35】の普及促進を図る証券化支援業務が大きな柱です。また、現在、公庫融資を利用されている約4百万戸、融資残高が約50兆円の債権管理業務も引き続き行っていきますし、住宅を取得される皆さまなどへ、公平・中立な立場からの住情報の提供も担い、公的機関として今後とも広い意味での住宅の質の向上に大いに貢献していく所存です。
 公庫融資を利用されておられる方々から「公庫がなくなると、申し込みはどうなるのか」などの問い合わせも寄せられています。これまでの一般的な個人向け公庫融資は、今後はなくなりますが、既にご利用いただいているお客さまは今まで通りご利用いただけますのでご安心ください。
 -証券化支援業務の内容についてもっと詳しく説明してもらえますか。
 阿部 先ほどもお話ししましたように、民間金融機関の住宅ローンも充実してきましたが、これまで公庫が担ってきた長期固定金利の住宅ローンを民間金融機関が安定的に担うことは金利リスクなどから難しいものがあります。そこで、民間金融機関から出された長期固定金利の住宅ローン債権を譲り受け、私どもが証券化(MBS=資産担保証券=の発行)する形でサポートしていこうというものです。これにより、住宅ローンのキャッシュフローがそのまま資本市場に流れ、リスクが回避されることにより、長期固定金利の住宅ローンが安定的に供給されることになります。
 -その商品が【フラット35】ですね。
 阿部 はい。借入期間は最長35年で、その間、金利が変わらないというのが大きな特徴です。耐久性など独自の基準により住宅の質も確保されます。また、融資額の上限は建設費または購入価格の9割まで利用できるようになりました。
 現在、九州地区においても地方銀行をはじめほとんどの金融機関(47機関)でご利用いただけますし、モーゲージバンク(ノンバンク)(17機関)でも、ご利用いただけます。
 【フラット35】は、私どもが民間金融機関と提携して、それぞれの長期固定金利の住宅ローン【フラット35】として提供されており、金融機関ごとに融資金利が異なります。


■5年間金利優遇制度も

Q.住宅ローンを一つ選ぶとしたら、どのタイプを選びますか。
 -利用状況はいかがですか。
 阿部 昨年末まででお申し込みが全国で約12万戸に達しました。九州地区は、約1万1千戸。福岡支店が管轄している福岡、佐賀、長崎県では、2006年度(4月〜12月)が前年同期比で146%と全国に比べて高い伸びを見せています。昨年の量的緩和政策解除やゼロ金利解除などで金利の上昇が懸念されてきたことや、ようやく、広く九州地区の皆さまにも【フラット35】をご認識いただけるようになってきた結果だと思います。
 -住宅ローン全体から見ると、まだ伸びる見込みがあるようですが。
 阿部 本年度の持ち家系住宅着工件数に占める割合(利用率)は、一割程度になってきたところです。公庫が住宅取得予定(5年以内)、またはすでに取得した方々を対象に昨年行った「住宅ローンに関するアンケート」では、71.3%の方が「長期固定金利がいい」と回答されています(表参照)。長期固定金利の住宅ローンを利用する潜在需要は大きいとみています。
 -2月の政策金利引き上げで、変動金利型の住宅ローン金利は上昇傾向のようですが。
 阿部 そうですね。5年後の長期金利が4%となる内閣府の試算(今年1月)もあります。住宅ローンの金利は、8%台まで上昇したときもありました。短期金利は上昇し始めていますが、長期金利が落ち着いている今こそ、長期固定金利の住宅ローンをご利用される絶好のチャンスです。長い期間ご返済になる住宅ローンについては、返済途中で金利が変わらないことが、家計にとって重要です。【フラット35】は、借入時に返済終了までの毎月の返済額が確定しますので、返済計画が立てやすく、さらに、金利変動による返済額の増加などの生活への影響もありません。家計の安心を確保するために、【フラット35】のご利用をお勧めしています。
 -【フラット35】の金利優遇制度も設けていますね。
 阿部 「優良住宅取得支援制度」(【フラット35】S)で、当初5年間、金利を0.3%優遇するというものです。【フラット35】で設けている基準に加え、省エネ、耐震、バリアフリーについて、一つでも基準をクリアしていれば適用されます。来年度も実施予定です。来年度は、耐久性・可変性に優れた住宅と免震住宅が追加されます。
 これにより、【フラット35】Sは、一戸建て住宅はもちろんのこと、対象となるマンションも増えると思いますので、住宅を建設・購入される際には、ご確認ください。


■ミックスプランが登場

【フラット35】受け付け開始(2003年10月)からの累計
 -【フラット35】の利用については、民間金融機関も新たな動きを見せていますね。
 阿部 最近、【フラット35】と各金融機関の住宅ローン商品とを併せてご利用いただける「ミックスプラン」が登場しています。住宅取得費用だけでなく諸費用も含めて資金計画を立てる際に、【フラット35】に併せて民間金融機関の住宅ローンを利用されるケースはもちろんありますが、変動金利や短期の固定金利の住宅ローンと組み合わせることで、低金利のメリットと長期固定金利の安心の両方に応えるプランも、地元の金融機関から提供されるようになりました。新しいタイプの住宅ローンとして注目しておりますし、普及させたいと思っています。
 -これ以外に、新機構が担う業務はどのようなものですか。
 阿部 個人向け住宅ローン分野では災害復興・災害予防融資は、政策的に重要な融資として引き続き担っていきます。
 また、賃貸住宅融資については、子育て支援や高齢者向けの良質な住宅の供給を目的として、融資を引き続き行っていきます。4月からは、従来よりも金利の低い当初15年固定金利の融資(返済期間は最長35年)も行います。
 -新機構に向けての決意を聞かせてください。
 阿部 独立行政法人として、自立的な経営を行いながら引き続き公的機関として、長期固定金利の住宅ローンが安定的に供給されるよう民間金融機関をサポートし、また、住宅を取得されようとする国民の皆さまが賢く住宅を取得していただけるよう、住宅に関する質の高い情報提供などによりお客さまの満足を追求し、住宅の質の向上に努めていく所存です。
 これからは、住宅金融公庫改め「住宅金融機構」(略称)として、国民の皆さまから信頼されるよう努めてまいりたいと思います。

九州全体を見据え現場重視

 「住宅金融公庫」の九州地区の支店は、福岡支店(福岡市)と南九州支店(熊本市)の2カ所がある。福岡県、佐賀県、長崎県が福岡支店、そのほかの県を南九州支店が管轄している。「住宅金融支援機構」が発足しても、支店網は基本的には変わらないが、福岡支店は南九州支店と連携し九州全体を見据えて、業務を展開していく。
 今後も、住宅取得予定者が、安心して住宅を取得することができるように、地域に密着した現場重視の営業を実施する。
 新機構は、引き続き公的金融機関として自立的な経営により住宅金融市場での存在観を確立していくことを目指していく。
1900万戸に融資

 1950年6月、国民が健康で文化的な生活を営むことができる住宅の建設および購入するために必要な資金融資などを柱に、政府系金融機関として設立。個人住宅・賃貸住宅資金融資から開始した。マンション購入資金融資制度や中古住宅購入資金融資制度、財形住宅資金融資制度を設けるなど、融資の幅を拡大。これまで融資した戸数は約1900万戸で、戦後に建設された全住宅の3割に当たる。また、独自の技術水準や標準的な工事仕様書を設け、住宅の質の確保・向上に貢献。近年は、「優良住宅取得支援制度」【フラット35】Sにより、省エネルギー、耐震、バリアフリー住宅などの質の向上を目指す。
■本店=東京都文京区後楽1―4-10、
    電話03(3812)1111
■資本金=2537億円
■役職員数=1078人
■支店=11支店(北海道、東北、北関東、首都圏、名古屋、北陸、大阪、中国、四国、福岡、南九州)
■融資残高=49兆7820億円