にしかわ・まさあき
1973年、熊本市生まれ。米国・ロサンゼルスのLe Lycee Francis de LosAngeles高校を卒業後、再春館製薬所に入社。テレマーケティング業務のマネジャーをはじめ、研究開発、経理など、あらゆる現場を経験した後、経営企画室プロデューサーに。2001年に取締役経営統括本部長、04年から現職。スポーツが好きで、冬はスキーなどを楽しむ。三児の父。
再春館製薬所社長
西川 正明氏
[再春館製薬所ホームページ] http://www.saishunkan.co.jp/
製造と販売一体の「再春館ヒルトップ」完成
顧客満足の深化めざす
基礎化粧品ドモホルンリンクルで知られる再春館製薬所は、熊本市内にあった本社を今年1月に熊本空港の近く、熊本県益城町の広大な緑の丘「再春館ヒルトップ」の新社屋に移転した。ヒルトップでは5年前から生産工場「薬彩工園」が稼働しており、今回の本社移転で、製造と販売の一体的な体制が整った。「お客さまのご満足のない売り上げはいらない」など、独自の理念を持ち、顧客1人1人と直接会話をかわすダイレクト・テレマーケティングで業績を伸ばす同社。製販一体化で、顧客満足のさらなる深化を目指す同社の西川正明社長に、今後の意気込みなどを聞いた。聞き手は遠藤信二・西日本新聞社熊本総局長。
[2007年3月31日朝刊掲載]
■活気あふれるワンフロア

ヒルトップにたたずむ
本社屋「つむぎ商館」
-新本社のあるヒルトップは、東に阿蘇の外輪山、西に熊本市内を見渡せ、自然環境豊かなところですね。
西川 私たちはもともと漢方の製薬会社です。漢方には“人も自然の一部である”という理念があり、私たちも生薬をはじめとする自然の恵みをいただいて商いをさせてもらっています。
そういう意味から、自然の中で、自然に感謝しながら仕事をするのが本来の私たちのあるべき姿だと思い、まず5年前に工業団地の一角にあった工場をこのヒルトップに移転しました。今回、全国のお客さまとのコミュニケーション拠点である「つむぎ商館」の完成によって全社員がヒルトップに集まり、一体になって働く体制ができました。
-千人規模の社員が、壁も仕切りもないワンフロアで仕事をする光景は活気がありますね。
西川 私は会社というのは、全員が同じ目標、方向に向かっていかないと成り立たないと思っています。そうしないと、会社全体がバラバラの方向に向かっていってしまう。逆に一体化されたときには、社員が100人いたら100人以上分の力が発揮されるはずだと思っているのです。
「つむぎ商館」には、常時700人以上の社員が働いていますが、打ち合わせも会議室ではなく、フロア内のテーブルで行います。各部署の情報や課題などを共有できると同時に、熱く議論しているその活気が自然とフロアに伝わっていきます。私たちの目的は、お客さまに喜んでいただいて、その結果として得られる売り上げを伸ばしていくこと。目指すものさえ一緒であれば、お互いに信じ合って、いい議論ができます。
しかし、まだ器ができただけ、環境が整ったにすぎないと思っています。大切なのは、ここで働く一人一人がどういう仕事のやり方をするかということです。
-移転したばかりなのに、もうレイアウトを変更するとか。
西川 会社は生きものだと思いますし、その時その時で大事にするものが違うと思うのです。会社が目指す方向性によって、この部門とあの部門が近づくべきだとか、社内のコミュニケーションの質を高めるべきところが変わってきます。その変更がすぐにできるのもワンフロアのよさですね。
■お客さまに教えられて
-再春館は、テレビCMでの「コミュニケーター」の印象が強いですね。
西川 ドモホルンリンクルの商品は7点しかありません。これを増やしていくつもりもありません。しかし3年に一度、原料も処方も容器もリニューアルし、この7点を磨き上げ続けることでお客さまに末永くお付き合いいただきたいと願っています。そのために、商品のことを説明させてもらい、お肌の健やかさを保つお手伝いをさせていただくのがコミュニケーターの役割です。
会社対お客さまではなく、一人の人間として、できれば個人商店のようなお付き合いをさせていただきたいと思っています。お客さまからコミュニケーターの対応にお褒めの言葉をいただくのが、私にとって一番うれしいことです。
-そのお客さま対応をめぐって、売り方の大転換があったとか。
西川 倒産した再春館を引き受けてからわずか7年で百億円企業に成長しましたが、いつしか売り上げ至上主義に陥り、押し付け的な電話をかけてお客さまに大変なご迷惑をおかけした時期がありました。1993年のことですが、たくさんの苦情をいただくとともに、約7000万円相当の返品の山を築いてしまったのです。
現会長の西川通子は、当時売り上げの7、8割を占めていたアウトバウンド(セールスの電話)による商いを、お客さまからご注文の電話をいただくインバウンド中心の商いに転換していこうと改革を断行しました。お客さまの満足を追求する商いへの転換でした。
-全国から一日平均7000件の電話があるそうですが、コミュニケーターにはどのような教育をしているのですか。
西川 何よりも「人として」きちんとしていることがいちばん大切だと思っています。一応、基本のマニュアルはありますが、お客さまからの質問の答えは「一つ」ではありません。まさに百人百様ですから、その質問の背景まで考えてお応えすることができるかどうかが大事で、マニュアル化はできないと思っています。マニュアル化した瞬間に、心もなくなってしまうような気がします。
また、会社が教育しているというより、日々の会話の中でお客さまに教育していただいていると思っています。商品やシステムなどもお客さまの声から改善されていますし、私自身も、お客さまにたくさんのことを教えていただいています。
■長く生き続ける会社に
-新社屋も完成して、今後、何か新しい展開を考えていますか。
西川 経営の多角化より、自分たちの商いをもっと深めていくことが何よりも大切だと思っています。会社としては、お客さまのご満足を追求すること、すなわち「売り上げ=お客さまに喜んでいただいた指数」を、ひたすら追求していきたい。
また、多くの社員とともに、長く生き続ける会社にしていくことが、私の使命だと思っています。給料を払い続け、社員とその家族においしいご飯を食べさせ続けること。それが結果として、お客さまを裏切らず、お客さまにより良い商品とサービスを提供し続けることになると信じています。
-日本最大規模の太陽光発電をはじめ、環境への取り組みもされていますね。
西川 環境を守るというより、紙は表裏使うとか、使わない部屋の電気は消すなど「もったいない」という気持ちから始まったことばかりです。私たちは阿蘇の伏流水をはじめ自然の恵みをいただいて製品をつくっています。熊本の水や空気や土を汚さない、使ったものは自然に返すなど、将来的には、事業活動の中で自然環境に負担をかけている部分を、プラスマイナスゼロにしていきたいと思います。
-劇団・わらび座(秋田県・田沢湖)のミュージカル「天草四郎」を支援されますが、熊本への思い入れもあるようですね。
西川 熊本に生まれ、熊本の皆さまに育てていただいた会社ですから、少しでも恩返しできることがあればと思っています。
わらび座は、地方の伝承や物語をもとにミュージカルをつくられていますが、「人に喜んでもらうことを自分たちの喜びとする」という理念などお互いに共感するところがあり、お付き合いが始まりました。その第一弾として、熊本に縁のある「天草四郎」の公演が5月からスタートします。今年、来年と、全国で200公演を行いますので、熊本の歴史文化を全国に発信することにつながればうれしいですね。

ヒルトップにたたずむ
本社屋「つむぎ商館」
西川 私たちはもともと漢方の製薬会社です。漢方には“人も自然の一部である”という理念があり、私たちも生薬をはじめとする自然の恵みをいただいて商いをさせてもらっています。
そういう意味から、自然の中で、自然に感謝しながら仕事をするのが本来の私たちのあるべき姿だと思い、まず5年前に工業団地の一角にあった工場をこのヒルトップに移転しました。今回、全国のお客さまとのコミュニケーション拠点である「つむぎ商館」の完成によって全社員がヒルトップに集まり、一体になって働く体制ができました。
-千人規模の社員が、壁も仕切りもないワンフロアで仕事をする光景は活気がありますね。
西川 私は会社というのは、全員が同じ目標、方向に向かっていかないと成り立たないと思っています。そうしないと、会社全体がバラバラの方向に向かっていってしまう。逆に一体化されたときには、社員が100人いたら100人以上分の力が発揮されるはずだと思っているのです。
「つむぎ商館」には、常時700人以上の社員が働いていますが、打ち合わせも会議室ではなく、フロア内のテーブルで行います。各部署の情報や課題などを共有できると同時に、熱く議論しているその活気が自然とフロアに伝わっていきます。私たちの目的は、お客さまに喜んでいただいて、その結果として得られる売り上げを伸ばしていくこと。目指すものさえ一緒であれば、お互いに信じ合って、いい議論ができます。
しかし、まだ器ができただけ、環境が整ったにすぎないと思っています。大切なのは、ここで働く一人一人がどういう仕事のやり方をするかということです。
-移転したばかりなのに、もうレイアウトを変更するとか。
西川 会社は生きものだと思いますし、その時その時で大事にするものが違うと思うのです。会社が目指す方向性によって、この部門とあの部門が近づくべきだとか、社内のコミュニケーションの質を高めるべきところが変わってきます。その変更がすぐにできるのもワンフロアのよさですね。
■お客さまに教えられて
-再春館は、テレビCMでの「コミュニケーター」の印象が強いですね。
西川 ドモホルンリンクルの商品は7点しかありません。これを増やしていくつもりもありません。しかし3年に一度、原料も処方も容器もリニューアルし、この7点を磨き上げ続けることでお客さまに末永くお付き合いいただきたいと願っています。そのために、商品のことを説明させてもらい、お肌の健やかさを保つお手伝いをさせていただくのがコミュニケーターの役割です。
会社対お客さまではなく、一人の人間として、できれば個人商店のようなお付き合いをさせていただきたいと思っています。お客さまからコミュニケーターの対応にお褒めの言葉をいただくのが、私にとって一番うれしいことです。
-そのお客さま対応をめぐって、売り方の大転換があったとか。
西川 倒産した再春館を引き受けてからわずか7年で百億円企業に成長しましたが、いつしか売り上げ至上主義に陥り、押し付け的な電話をかけてお客さまに大変なご迷惑をおかけした時期がありました。1993年のことですが、たくさんの苦情をいただくとともに、約7000万円相当の返品の山を築いてしまったのです。
現会長の西川通子は、当時売り上げの7、8割を占めていたアウトバウンド(セールスの電話)による商いを、お客さまからご注文の電話をいただくインバウンド中心の商いに転換していこうと改革を断行しました。お客さまの満足を追求する商いへの転換でした。
-全国から一日平均7000件の電話があるそうですが、コミュニケーターにはどのような教育をしているのですか。
西川 何よりも「人として」きちんとしていることがいちばん大切だと思っています。一応、基本のマニュアルはありますが、お客さまからの質問の答えは「一つ」ではありません。まさに百人百様ですから、その質問の背景まで考えてお応えすることができるかどうかが大事で、マニュアル化はできないと思っています。マニュアル化した瞬間に、心もなくなってしまうような気がします。
また、会社が教育しているというより、日々の会話の中でお客さまに教育していただいていると思っています。商品やシステムなどもお客さまの声から改善されていますし、私自身も、お客さまにたくさんのことを教えていただいています。
■長く生き続ける会社に
-新社屋も完成して、今後、何か新しい展開を考えていますか。
西川 経営の多角化より、自分たちの商いをもっと深めていくことが何よりも大切だと思っています。会社としては、お客さまのご満足を追求すること、すなわち「売り上げ=お客さまに喜んでいただいた指数」を、ひたすら追求していきたい。
また、多くの社員とともに、長く生き続ける会社にしていくことが、私の使命だと思っています。給料を払い続け、社員とその家族においしいご飯を食べさせ続けること。それが結果として、お客さまを裏切らず、お客さまにより良い商品とサービスを提供し続けることになると信じています。
-日本最大規模の太陽光発電をはじめ、環境への取り組みもされていますね。
西川 環境を守るというより、紙は表裏使うとか、使わない部屋の電気は消すなど「もったいない」という気持ちから始まったことばかりです。私たちは阿蘇の伏流水をはじめ自然の恵みをいただいて製品をつくっています。熊本の水や空気や土を汚さない、使ったものは自然に返すなど、将来的には、事業活動の中で自然環境に負担をかけている部分を、プラスマイナスゼロにしていきたいと思います。
-劇団・わらび座(秋田県・田沢湖)のミュージカル「天草四郎」を支援されますが、熊本への思い入れもあるようですね。
西川 熊本に生まれ、熊本の皆さまに育てていただいた会社ですから、少しでも恩返しできることがあればと思っています。
わらび座は、地方の伝承や物語をもとにミュージカルをつくられていますが、「人に喜んでもらうことを自分たちの喜びとする」という理念などお互いに共感するところがあり、お付き合いが始まりました。その第一弾として、熊本に縁のある「天草四郎」の公演が5月からスタートします。今年、来年と、全国で200公演を行いますので、熊本の歴史文化を全国に発信することにつながればうれしいですね。
1000人規模のワンフロア 理想のオフィス「つむぎ商館」

社員ら1000人が
一つの目標に向かって活動する
「つむぎ商館」のワンフロア
約7万坪(約23万1400平方メートル)の広大な敷地を持つ「再春館ヒルトップ」に完成した新社屋「つむぎ商館」。顧客からの注文や相談を受け付けるテレマーケティングセンターをはじめとする本社機能のすべてをここに集約した同社の理想のオフィス。現会長の西川通子氏が大切にする「お客さまとのご縁を末永くつむぐ心」という言葉からヒントを得て、社員らが名付けた。
2階建てで、南東側はガラス張り。自然光が屋内を照らす。1階は壁も仕切りもなく1000人が活動できる広いワンフロア。緩やかなスロープでつながれた2階は、美しい阿蘇外輪山を望むカフェテリア風の社員食堂。コミュニケーターなど社員たちの憩いの場でもある。メニューは地元の旬の野菜が中心。太陽光発電をはじめ、自然の風による換気システム、さらに「熊本の水を大切にしたい」という思いから、生活用水に雨水や中間処理水を利用。また、現在、子どもを持つ社員のために、ヒルトップ内に保育園を建設中。完成すれば、緑の丘に子どもたちの元気な声が響く。

社員ら1000人が
一つの目標に向かって活動する
「つむぎ商館」のワンフロア
2階建てで、南東側はガラス張り。自然光が屋内を照らす。1階は壁も仕切りもなく1000人が活動できる広いワンフロア。緩やかなスロープでつながれた2階は、美しい阿蘇外輪山を望むカフェテリア風の社員食堂。コミュニケーターなど社員たちの憩いの場でもある。メニューは地元の旬の野菜が中心。太陽光発電をはじめ、自然の風による換気システム、さらに「熊本の水を大切にしたい」という思いから、生活用水に雨水や中間処理水を利用。また、現在、子どもを持つ社員のために、ヒルトップ内に保育園を建設中。完成すれば、緑の丘に子どもたちの元気な声が響く。
33年間愛され続ける「ドモホルンリンクル」
化粧品、医薬品、医薬部外品の製造・販売が主な事業。1974年に、日本初のコラーゲン配合美容クリーム「ドモホルンリンクル」の開発に成功。その後、ダイレクト・テレマーケティングシステムという通信販売の手法で顧客を広げる。
「ドモホルンリンクル」の商品は、保湿液や乳液など全7点。開発から33年を経て変わらず愛用されているが、約150種類に及ぶ原料や処方は3年ごとに見直され、全商品をリニューアル。原料は、長白参(高麗ニンジン)などの生薬のほか、無農薬の緑茶や白米など天然由来の植物エキス。また、必要なだけを製造し発送するので、常につくりたての商品が翌日に顧客の手元に届く。
■本社・工場=熊本県上益城郡益城町寺中1363ノ1
電話096(289)4444
■創業=1932年
■資本金=1億円
■従業員数=1009人(2007年3月末現在)
■事業所=東京事務所
化粧品、医薬品、医薬部外品の製造・販売が主な事業。1974年に、日本初のコラーゲン配合美容クリーム「ドモホルンリンクル」の開発に成功。その後、ダイレクト・テレマーケティングシステムという通信販売の手法で顧客を広げる。
「ドモホルンリンクル」の商品は、保湿液や乳液など全7点。開発から33年を経て変わらず愛用されているが、約150種類に及ぶ原料や処方は3年ごとに見直され、全商品をリニューアル。原料は、長白参(高麗ニンジン)などの生薬のほか、無農薬の緑茶や白米など天然由来の植物エキス。また、必要なだけを製造し発送するので、常につくりたての商品が翌日に顧客の手元に届く。
■本社・工場=熊本県上益城郡益城町寺中1363ノ1
電話096(289)4444
■創業=1932年
■資本金=1億円
■従業員数=1009人(2007年3月末現在)
■事業所=東京事務所