新時代を駆ける
[トップインタビュー]

「法テラス福岡・北九州」
(日本司法支援センター福岡地方事務所)
開所1周年記念座談会

法の利益を平等に

福岡県弁護士会
会長

福島 康夫氏

福島 康夫氏

日本司法支援センター
福岡地方事務所長

吉野 正氏

吉野 正氏

福岡県司法書士会
会長

荻林 和則氏

荻林 和則氏
[法テラス 日本司法支援センター]   http://www.houterasu.or.jp/

 法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスを提供する日本司法支援センター福岡地方事務所(愛称「法テラス福岡」)と北九州支部(法テラス北九州)が10月2日で、オープン1年を迎える。両センターとも司法制度改革を担う総合法律支援法に基づいて福岡市と北九州市に設置された。法テラスの愛称には、法で社会を明るく照らす意味と、利用者がくつろげるテラスのような場所、という思いが込められている。この1年間で延べ約1万2000人が法テラス福岡を利用。多重債務や遺産相続、さらに地域の問題など、法テラス福岡に対する情報提供業務への期待は大きい。福岡県弁護士会の福島康夫会長、福岡県司法書士会の荻林和則会長、それに法テラス福岡の吉野正所長の3人に、法テラス福岡の役割や使命、身近な法律の必要性や需要などを語り合ってもらった。聞き手は児嶋昭・西日本新聞社社会部長。
[2007年10月1日朝刊掲載]
多重債務の相談多い 吉野氏/過疎地も悩みは多様 福島氏/アクセスの機会拡充 荻林氏

「法を身近なものにしよう」と思いを新たにした座談会
「法を身近なものにしよう」
と思いを新たにした座談会

●1年の歩み

 -まずはこの1年間を振り返って。
 吉野 市民、県民の皆さんの法律トラブルに対する解決策、あるいは法律にかかわる情報提供への需要が大変多いということが分かりました。一番多いのは多重債務に関することで、次いで離婚や親族間のトラブル。最近増えたのが、雇用をめぐる問題です。
 -月平均どれくらいの利用・問い合わせがありますか。
 吉野 直接、私たち法テラス福岡に電話や来訪によって利用される方は、月平均で約300件。多いときで400件ぐらいですね。
 -実際に司法に携わっておられる弁護士会、司法書士会では、法テラス福岡の活動をどう見ておられますか。
 福島 私たち福岡県弁護士会では、県内20カ所に「法律相談センター」を設けています。昨年10月以降、相談件数が増えました。私たちは、より多くの人たちに相談に来てほしい。しかし、さまざまな問題を抱えながらも、その問題をどこに相談したらいいのか、あるいは法律で解決できることに気付いていない人が多いのです。「何かおかしい」「納得できない」と感じたときに、まずは法テラス福岡へ電話をして、最終的には私たちの相談センターでアドバイスを受ける-そういう仕組みができつつあると感じています。
 荻林 福岡県司法書士会も昨年1月、県内6カ所に「司法書士総合相談センター」を設置し市民や県民の皆さまからの相談を受けています。法テラス福岡のオープン後は、相談件数が12%ほど増えております。やはり法テラス福岡から紹介されて相談に来られる方が多いのだろうと思います。そういうことからも、法テラスは重要であり、併せて司法書士の社会的責任の重さをますます感じております。


●人と法

 -法テラスのテーマは「人と法をつなぐために」。それは、埋もれていた法的トラブルを発掘し、同時に何らかの法的解決に寄与すること。人と法のつながりをどう考えておられますか。
 福島 今年6月に福岡市で「第22回日弁連シンポジウム」が開かれました。そのときに象徴的だったのは、法的なトラブルなど無縁に思われた「過疎地」での法律相談会が、予想以上の相談者であふれたということ。人が少ない地域でもいろいろな悩みがある。離婚もあるし、多重債務もある。遺産分割もある。実は、相談する相手がいなくて相談できなかっただけ。法律の保護は、どこにでも必要だと実感しました。
 荻林 過疎地においては法律家の不在、都市においても高齢や経済的理由などから司法にアクセスできないという状態があります。司法書士会では、自治体での相談会やセンターでの相談、電話相談などを積極的に行っております。気軽に司法にアクセスできるよう拠点と機会を設けておりますが、より一層これを拡充していかなければならないと考えております。
 吉野 法テラスは、単なるトラブル解決のための情報提供よりも、年金の申請や税金の還付、あるいは母子・父子家庭の各種手当などどこに相談してよいかわからず迷っている市民に、正当な法的利益を享受するための情報を伝える役割が大きい。「法の光」すなわち法的利益をすべての人に平等に受けてもらうようにする使命があるわけです。これは日本の司法制度の中で、非常に画期的なことなのです。
 この多方面にわたる情報提供の使命を果たすために、法テラス福岡は、県内でさまざまなサービスに取り組んでいる300を超える自治体やNPO、市民団体と連携し、法的トラブル以外の多彩な問題に「こんな利益やサービスがありますよ」と紹介することで、解決へのお手伝いをしていきます。
 -まさに法の光を照らす、「法テラス」というネーミングそのままですね。
 福島 “司法過疎”をなくすために、経済的な支援を弁護士がすることも含めて今、検討しています。法の支配を実現するために、法テラス福岡との連携を強めていきたい。
 荻林 2003年に認定司法書士制度がスタートして、簡易裁判所での訴訟代理ができるようになり、司法書士の意識も随分変わってきました。私はよく若い司法書士に「法の光が当たらないところは至る所にある。それに光を当てるのが僕らの仕事だ」と言い続けてきました。その芽が少しずつ出てきつつあると感じています。

各団体の活動を把握 吉野氏/使いやすい組織創造 福島氏/市民のための司法を 荻林氏

●300団体と連携

 -300団体との連携は大きいですね。
 吉野 今までは法の保護がなかった犯罪被害者やドメスティックバイオレンス、児童虐待のようなことも、相談の中で見落とさずに対応していく。そのために私たちは職員の研修はもちろんのこと、どんな団体がどんな活動をし、どんなサービスを提供しているのかを常に把握し、相談者に適切な団体を紹介していくことを最重点項目にしています。現在は約300の団体と連携・協議をし、ネットワークを広げつつあります。各団体と法テラス福岡の信頼関係が強まることできめの細かいサービスができることと確信しています。
 -法テラスとの連携について、問題や課題は。
 福島 単刀直入に言うと、法テラスというのは公的な機関であるため柔軟性を欠く部分があるように思う。その辺を私たち弁護士会・司法書士会が連携し、市民のための司法の実現に向けて協調していくことが重要だと考えます。同時に制度的な問題について、意見交換を頻繁に行うことが必要です。
 荻林 私たち司法書士は、法テラスの大きな5つの業務のうち、情報提供業務と民事法律扶助業務を担当することができます。この2つの業務は私たち司法書士が担っていくという自負を持って活動しています。法テラスとの連携を、一層円滑なものにするための努力をお互いにしながら、私たち司法書士としては、その業務範囲の中で市民のための司法を目指していきたいと思います。


●今後の活動

 -法テラス福岡の今後の活動へ、期待などを。
 福島 社会が複雑化し、どこに行けば解決するか分からない問題がいっぱい出てきた。それらのことを法テラスで聞けば、そこから新たな取っ掛かりができる。もっと市民にとって使い勝手の良い組織に育てなければならない。法テラス独自で創造しなければいけないし、市民の側からも要望していかなければいけない。これから被疑者段階での国選弁護が本格的に始まるので、私たちも体制づくりに取り組んでいる。法テラスとの連携を強めていきたい。
 荻林 福岡県司法書士会は、法テラス福岡に最大限協力をしていきたいと思っております。市民や県民の皆さんが法テラスをより一層活用していただけるように、司法書士もともに努力していきたいと考えております。
 吉野 法律は空気みたいに身辺にあるものですが、知らないうちに法の光がさえぎられていたり、光があることを知らずに法の利益を失っている、あるいは利用していない人がたくさんおられます。法テラスの存在をできるだけ多くの人に知っていただき、利用していただく必要があります。広報活動を含めて努力していくとともに、弁護士会や司法書士会、そのほかの関連団体とのネットワーク体制をつくり上げて、トータルな法の光を大きく広げていくことに貢献していきます。

日本司法支援センター福岡地方事務所(法テラス福岡)

 所在地 福岡市中央区渡辺通5‐14‐12南天神ビル4F
 相談電話 050(3383)5501 ※受け付け時間は、平日・午前9時から午後5時まで
日本司法支援センター福岡地方事務所北九州支部(法テラス北九州)

 所在地 北九州市小倉北区魚町1‐4‐21魚町センタービル5F
 相談電話 050(3383)5506 ※受け付け時間は、平日・午前9時から午後5時まで