みのはら・かつひこ
1945年生まれ。原籍は福岡市。高校1年まで、福岡市中央区に住む。その後、関西へ移り、関西学院大学商学部に進学。67年同大学卒業と同時に京阪神急行電鉄(現、阪急電鉄)に入社。98年同社取締役、2000年同社常務取締役、02年同社専務取締役。03年阪急不動産取締役社長、阪急電鉄(現、阪急阪神ホールディングス)取締役に就任、現在に至る。
「既成概念にとらわれずチャレンジする」ことをモットーにする。趣味は読書、山歩き。
阪急不動産株式会社社長
簑原 克彦氏
[阪急不動産ホームページ] http://www.geohankyu.com
「憧れ」の生活を提案 九州・福岡の道しるべ
阪急阪神東宝グループの住宅総合デベロッパー阪急不動産(大阪市北区)が九州に進出することになった。関西、首都圏以外で初の分譲マンション事業を福岡市で展開するもので、九州最大都市・福岡市の将来性を見込んでの取り組み。西日本新聞社の多田昭重社長が、九州と縁が深い企業トップと対談する本紙創刊130周年企画「地域の未来を語ろう」は、子ども時代を福岡市で過ごした阪急不動産の簑原克彦社長を迎え、福岡進出の狙い、住まい造りへの意気込みなどについて語り合った。
(本文敬称略)
[2008年3月30日朝刊掲載]
■「激戦区」福岡に初進出

「福岡の発展のために微力ながら尽くしていきたい」と語る 簑原社長(右)と、多田・西日本新聞社社長
多田 阪急不動産は関西エリアと首都圏で事業を展開されていますが、今回、福岡市に進出した理由は。
簑原 阪急不動産は堅調なマンション需要に支えられ、2006年度には近畿圏と首都圏合わせて年間で約1100戸のマンションを供給できるまでになりました。さらに事業拡大を図ろうと、福岡市への進出を決めたのです。福岡市を選んだのは、鉄道や空港の利便性に優れ、九州の経済中心地として一層の発展が見込めるからです。アジアに近く、国際都市としての成長も期待できます。2011年春に九州新幹線鹿児島ルートが全線開通するなど、新たな飛躍要素が控えているのも進出の判断材料となりました。
個人的なことですが、福岡市は私が幼少のころから10代半ばまで過ごした土地で、親しみもあります。
多田 福岡市は地下鉄や都市高速道路、港湾などの社会資本の整備が進むとともに、都市部の再開発が次々と行われ、魅力的な都市になっています。博多駅も大規模な工事が進行中で、九州の拠点駅として生まれ変わります。
簑原 今回縁あってJR博多駅そばの福岡県住宅供給公社の賃貸住宅跡地を入札で取得できました。もう一つ、福岡市西区徳永のJR九大学研都市駅近くにもマンション用地を確保できました。「ジオ・イニシア博多駅前」と「ジオ九大学研都市駅前」のマンション2物件を4〜5月から販売します。
多田 福岡は販売面で全国的にもまれに見る「激戦区」です。そこに切り込むには、明確なブランド戦略が求められると思います。
簑原 現在、福岡でブランドCMを放映していますが、「私の憧(あこが)れへ。ジオ」というブランドスローガンを掲げています。このスローガンには、阪急不動産が提供するマンションでの暮らしが、マンションを購入するお客さまの「憧れ」であってほしいという願いを込めています。「ジオ」はラテン語に由来する英語の接頭語で、地球、大地、土地の意味。「ジオ」が目指すのは、永住するにふさわしい土地に、世代を超えて、いつまでも快適に暮らせる高品質住宅をお届けすることです。
多田 鉄道沿線の住宅地開発で注目されるなど、阪急の住まい造りには歴史があります。
簑原 1907年創立の箕面有馬電気軌道(阪急電鉄の前身)が3年後の1910年に鉄道を開業して以来、沿線の住宅地開発や住宅販売に取り組んでいます。100年近くの歴史があり、約10万戸の販売実績があります。阪急不動産は2002年、阪急電鉄の住宅部門を統合し、阪急電鉄の住宅事業の伝統を引き継いでいます。
多田 ほとんどの鉄道会社が住宅事業を展開していますが、阪急はこの事業の先駆けといえますね。
■1世紀に10万戸の実績 環境に配慮し街づくり
簑原 箕面有馬電気軌道は開業当初、まだ輸送需要が少ない郊外と都市を結ぶ鉄道としてスタートしました。創業者の一人である小林一三(1873-1957)が鉄道収入増を図るために、思い付いたのが沿線の住宅地開発だったのです。沿線住民が増えれば、必然的に通勤による鉄道の利用客も増えますからね。当時の鉄道会社としては目新しい取り組み。「豊かな自然環境の中に建つ庭付きのモダン住宅」を長期ローンの返済方式で販売する手法は、多くの人に歓迎されました。
多田 昔も今も、マイホーム取得は家族の大きな夢。ローンが普及していなかった時代に、長期の住宅ローンを導入するなど、小林さんはアイデアマンだったのですね。
簑原 1910年に初の分譲住宅地として売り出した「池田室町住宅地」(大阪府池田市)に、小林は当時としてはまだ珍しい電灯付き西洋住宅を企画。電車を動かすために発電した電気の一部を利用するという画期的なアイデアでした。この小林の発想は、「憧れ」の生活をお客さまに提案するという阪急不動産のブランドスローガンの原点といえます。
多田 街づくりの観点から今、重視されていることは何ですか。
簑原 環境への配慮です。主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を7月に控え、市民の環境への関心は高まっています。温室効果ガスである二酸化炭素の削減のために、分譲するマンションにはできるだけ緑を多くとるようにしています。エネルギーの効率性向上のために気密性が高い部屋を提供することも心掛けています。関西では、住民の皆さまが車を共同使用するカーシェアリングも行っています。
■阪急百貨店も博多出店 地域情報を多彩に発信
多田 すでに福岡市内には多彩なマンションが供給されています。相当な「個性」を打ち出さないと、購買意欲につながりません。
簑原 「ジオ・イニシア博多駅前」はJR博多駅そばに立地。年齢や家族構成、価値観の異なるいろいろな人たちがターゲット。多様なライフスタイルを可能にする「都心のオアシス」というコンセプトで新しい住空間を提案します。
「ジオ九大学研都市駅前」は、団塊世代と団塊ジュニアをターゲットにした、ゆったりとした間取りの物件です。豊かな自然に囲まれた郊外ならではのスローライフを満喫していただきます。また、両物件とも全戸にミストサウナを標準装備するなど、設備には自信があります。
多田 街づくりには地域情報の発信が不可欠。西日本新聞もインターネットなど多くのメディアで「九州」を売り込んでいます。情報発信の面で、何か仕掛けはありますか。
簑原 JR九州さんなどに協力いただき、JR博多駅周辺の地域情報サイト「HAKATA PLANET」を立ち上げました。「ジオ・イニシア博多駅前」に関する情報だけでなく、駅周辺のグルメや新博多駅ビルについての情報なども発信しております。
多田 これからの九州での事業展開は。
簑原 当面は福岡市で土地を確保して展開していきたいと考えています。福岡で「顔なじみ」となり、お客さまの声をお聞きし、近い将来「ジオ」ブランドならではの新しいライフスタイルを提案していきたいです。そして、グループでこれまでに培った街づくりのノウハウを生かして、グループ各社の力を結集して、私の古里である福岡の発展のために微力ながら尽くしていきたいと思っています。
多田 今後、福岡の街づくりに携わります。福岡の人たちへのメッセージを。
簑原 阪急阪神東宝グループの知名度は、九州ではいまひとつです。博多座ではグループの1つの宝塚歌劇団が定期公演をしていますが、宝塚歌劇団から阪急をイメージされる方は少ないのではないでしょうか。この歌劇団には九州出身の人も多く、ぜひご記憶いただければと思います。
プロ野球では阪急ブレーブスは手放しましたが、2年前には阪神電気鉄道と経営統合しましたので、阪神タイガースがあります。今年のホークスは強そうですね。新人の大場翔太投手の加入などで先発投手陣が充実しています。タイガースに一人か二人でも分けてほしい。
多田 九州にはタイガースファンも多いですから、福岡ソフトバンクホークスとで、今年ぜひ、日本シリーズをやってほしいですね。
簑原 さらに、九州新幹線鹿児島ルートの全線開通に合わせて完成する新博多駅ビルには、グループの阪急百貨店も進出します。
グループのことをもっと知っていただき、親しみを感じてもらえれば、と願っております。
多田 鹿児島ルートが開業する3年後、福岡はもう一回り大きくなることでしょう。そういう時期に阪急不動産が福岡に進出されるのは、地域にとって新たな魅力を創出することになるでしょう。

「福岡の発展のために微力ながら尽くしていきたい」と語る 簑原社長(右)と、多田・西日本新聞社社長
簑原 阪急不動産は堅調なマンション需要に支えられ、2006年度には近畿圏と首都圏合わせて年間で約1100戸のマンションを供給できるまでになりました。さらに事業拡大を図ろうと、福岡市への進出を決めたのです。福岡市を選んだのは、鉄道や空港の利便性に優れ、九州の経済中心地として一層の発展が見込めるからです。アジアに近く、国際都市としての成長も期待できます。2011年春に九州新幹線鹿児島ルートが全線開通するなど、新たな飛躍要素が控えているのも進出の判断材料となりました。
個人的なことですが、福岡市は私が幼少のころから10代半ばまで過ごした土地で、親しみもあります。
多田 福岡市は地下鉄や都市高速道路、港湾などの社会資本の整備が進むとともに、都市部の再開発が次々と行われ、魅力的な都市になっています。博多駅も大規模な工事が進行中で、九州の拠点駅として生まれ変わります。
簑原 今回縁あってJR博多駅そばの福岡県住宅供給公社の賃貸住宅跡地を入札で取得できました。もう一つ、福岡市西区徳永のJR九大学研都市駅近くにもマンション用地を確保できました。「ジオ・イニシア博多駅前」と「ジオ九大学研都市駅前」のマンション2物件を4〜5月から販売します。
多田 福岡は販売面で全国的にもまれに見る「激戦区」です。そこに切り込むには、明確なブランド戦略が求められると思います。
簑原 現在、福岡でブランドCMを放映していますが、「私の憧(あこが)れへ。ジオ」というブランドスローガンを掲げています。このスローガンには、阪急不動産が提供するマンションでの暮らしが、マンションを購入するお客さまの「憧れ」であってほしいという願いを込めています。「ジオ」はラテン語に由来する英語の接頭語で、地球、大地、土地の意味。「ジオ」が目指すのは、永住するにふさわしい土地に、世代を超えて、いつまでも快適に暮らせる高品質住宅をお届けすることです。
多田 鉄道沿線の住宅地開発で注目されるなど、阪急の住まい造りには歴史があります。
簑原 1907年創立の箕面有馬電気軌道(阪急電鉄の前身)が3年後の1910年に鉄道を開業して以来、沿線の住宅地開発や住宅販売に取り組んでいます。100年近くの歴史があり、約10万戸の販売実績があります。阪急不動産は2002年、阪急電鉄の住宅部門を統合し、阪急電鉄の住宅事業の伝統を引き継いでいます。
多田 ほとんどの鉄道会社が住宅事業を展開していますが、阪急はこの事業の先駆けといえますね。
■1世紀に10万戸の実績 環境に配慮し街づくり
簑原 箕面有馬電気軌道は開業当初、まだ輸送需要が少ない郊外と都市を結ぶ鉄道としてスタートしました。創業者の一人である小林一三(1873-1957)が鉄道収入増を図るために、思い付いたのが沿線の住宅地開発だったのです。沿線住民が増えれば、必然的に通勤による鉄道の利用客も増えますからね。当時の鉄道会社としては目新しい取り組み。「豊かな自然環境の中に建つ庭付きのモダン住宅」を長期ローンの返済方式で販売する手法は、多くの人に歓迎されました。
多田 昔も今も、マイホーム取得は家族の大きな夢。ローンが普及していなかった時代に、長期の住宅ローンを導入するなど、小林さんはアイデアマンだったのですね。
簑原 1910年に初の分譲住宅地として売り出した「池田室町住宅地」(大阪府池田市)に、小林は当時としてはまだ珍しい電灯付き西洋住宅を企画。電車を動かすために発電した電気の一部を利用するという画期的なアイデアでした。この小林の発想は、「憧れ」の生活をお客さまに提案するという阪急不動産のブランドスローガンの原点といえます。
多田 街づくりの観点から今、重視されていることは何ですか。
簑原 環境への配慮です。主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を7月に控え、市民の環境への関心は高まっています。温室効果ガスである二酸化炭素の削減のために、分譲するマンションにはできるだけ緑を多くとるようにしています。エネルギーの効率性向上のために気密性が高い部屋を提供することも心掛けています。関西では、住民の皆さまが車を共同使用するカーシェアリングも行っています。
■阪急百貨店も博多出店 地域情報を多彩に発信
多田 すでに福岡市内には多彩なマンションが供給されています。相当な「個性」を打ち出さないと、購買意欲につながりません。
簑原 「ジオ・イニシア博多駅前」はJR博多駅そばに立地。年齢や家族構成、価値観の異なるいろいろな人たちがターゲット。多様なライフスタイルを可能にする「都心のオアシス」というコンセプトで新しい住空間を提案します。
「ジオ九大学研都市駅前」は、団塊世代と団塊ジュニアをターゲットにした、ゆったりとした間取りの物件です。豊かな自然に囲まれた郊外ならではのスローライフを満喫していただきます。また、両物件とも全戸にミストサウナを標準装備するなど、設備には自信があります。
多田 街づくりには地域情報の発信が不可欠。西日本新聞もインターネットなど多くのメディアで「九州」を売り込んでいます。情報発信の面で、何か仕掛けはありますか。
簑原 JR九州さんなどに協力いただき、JR博多駅周辺の地域情報サイト「HAKATA PLANET」を立ち上げました。「ジオ・イニシア博多駅前」に関する情報だけでなく、駅周辺のグルメや新博多駅ビルについての情報なども発信しております。
多田 これからの九州での事業展開は。
簑原 当面は福岡市で土地を確保して展開していきたいと考えています。福岡で「顔なじみ」となり、お客さまの声をお聞きし、近い将来「ジオ」ブランドならではの新しいライフスタイルを提案していきたいです。そして、グループでこれまでに培った街づくりのノウハウを生かして、グループ各社の力を結集して、私の古里である福岡の発展のために微力ながら尽くしていきたいと思っています。
多田 今後、福岡の街づくりに携わります。福岡の人たちへのメッセージを。
簑原 阪急阪神東宝グループの知名度は、九州ではいまひとつです。博多座ではグループの1つの宝塚歌劇団が定期公演をしていますが、宝塚歌劇団から阪急をイメージされる方は少ないのではないでしょうか。この歌劇団には九州出身の人も多く、ぜひご記憶いただければと思います。
プロ野球では阪急ブレーブスは手放しましたが、2年前には阪神電気鉄道と経営統合しましたので、阪神タイガースがあります。今年のホークスは強そうですね。新人の大場翔太投手の加入などで先発投手陣が充実しています。タイガースに一人か二人でも分けてほしい。
多田 九州にはタイガースファンも多いですから、福岡ソフトバンクホークスとで、今年ぜひ、日本シリーズをやってほしいですね。
簑原 さらに、九州新幹線鹿児島ルートの全線開通に合わせて完成する新博多駅ビルには、グループの阪急百貨店も進出します。
グループのことをもっと知っていただき、親しみを感じてもらえれば、と願っております。
多田 鹿児島ルートが開業する3年後、福岡はもう一回り大きくなることでしょう。そういう時期に阪急不動産が福岡に進出されるのは、地域にとって新たな魅力を創出することになるでしょう。
●阪急不動産株式会社
1947年2月、大阪市所在の会社として設立。土地・建物の賃貸業務を始める。67年12月大阪証券取引所第一部に上場する。98年11月、創立50周年記念事業として大型複合商業施設「HEP」を完成させる。2000年には不動産の証券化を実施。02年4月、株式交換により阪急電鉄の100%子会社となる。土地・住宅・マンションの分譲のほか、ビル事業、土地活用、不動産の仲介、増改築・リフォーム、土地・建物の賃貸管理、保険代理店など幅広く手掛けている。不動産協会、日本ビルヂング協会連合会などに加盟。社員は210人。売上高は約666億円(07年3月期)。
1947年2月、大阪市所在の会社として設立。土地・建物の賃貸業務を始める。67年12月大阪証券取引所第一部に上場する。98年11月、創立50周年記念事業として大型複合商業施設「HEP」を完成させる。2000年には不動産の証券化を実施。02年4月、株式交換により阪急電鉄の100%子会社となる。土地・住宅・マンションの分譲のほか、ビル事業、土地活用、不動産の仲介、増改築・リフォーム、土地・建物の賃貸管理、保険代理店など幅広く手掛けている。不動産協会、日本ビルヂング協会連合会などに加盟。社員は210人。売上高は約666億円(07年3月期)。