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  【釣りバカ】 漫画原作者・やまさき十三さん ハマちゃんにはかなわん '04.05.27掲載   

 この人が原作を書く「釣りバカ日誌」には、毎回、クスっと笑ってしまう。そう、万年ヒラ社員のハマちゃんと、社長のスーさんが、釣りバカぶりを発揮するあの人気漫画である。

 例えば、会社に遅刻しそうなハマちゃんは、しばしば隣の釣り宿の八ちゃんを言いくるめて、東京湾の水路を高速の釣り船で送ってもらう。満員電車を横目に、悠然と水上通勤、会社の近くにさっそうと船を乗り付ける場面は、なんとも痛快だ。

 それに、下からはペケ社員のハマちゃんに振り回され、上からも社内の力関係にほんろうされて、胃薬を手放せない中間管理職の佐々木さんにも、妙に同情してしまう。

 この原作を書いているやまさき十三さん(62)に、巨チヌに魅せられ対馬に移住した中村鐵彦(てつひこ)さん(49)は会ってみたいという。やまさきさんは、宮崎県都城市の出身。どんな人なのか。千葉県浦安市に、ご本人を訪ねた。

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pic 「自分もハマちゃんと同じ、マイペース型かなぁ」と話すやまさき十三さん
 約束のホテルに現れたやまさきさんは、やはりユーモラスな人だった。

 のっけから「いやーぁ、西日本新聞には昔、悪いことをしてしまって」とおっしゃる。

 なんでも、中学三年の時、敷地が隣り合った都城市立南小学校が、本社協賛事業かなにかで健康優良校になったそうだ。それで、お祝いに『南小』という人文字を校庭に作り、その航空写真を新聞に載せることになったらしい。

 「そのとき、僕たちは隣の校庭で野球をしていたんですが、飛行機が旋回してくる瞬間を狙って小学校に乱入し、『バカ』と人文字を作っちゃった。しかも僕は『バ』の点だった。あとで謝りにいきましたが、あのころから『バカ』に縁があったんでしょうかねぇ」

 現在、抱えている漫画の原作は、月六―七作品。代表作「釣りバカ日誌」は、釣りバカ社員を通して、その周囲の凝り固まった会社組織や、会社人間のこっけいさを痛快に笑い飛ばす作品だ。

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 サラリーマン社会への見方もユニークだ。明るくサラリーマンするには、出世競争に実線を引かないことがコツという。

 「僕なんか、部長にでもなれば、万々歳だけど、みんな、なればなったで、その上を目指しちゃう。それも分かるけど、実線は引かずに、点線ぐらいにしておくことが大事じゃないかなぁ。そうすれば挫折して、肩を落とすこともなくなるし」

 都城市の文房具店の三男。宮崎大宮高校を経て、早稲田大学文学部演劇学科を卒業。本当はサラリーマンになりたかったが、採用されず、東映のテレビ映画製作所の契約助監督に。労働争議を契機にここを十年で辞め、漫画の原作者となった。

 「釣りバカ日誌」は、都内から浦安に引っ越し、東京湾の五目釣りにのめり込んでいた一九七九年に書き始めた作品だ。現在、連載回数は五百九十四回、単行本は六十九巻を数え、映画も今夏で十七作目となる。

 自分の笑いの原点は、都城の風土にあると感じる。例えば、隣の息子がパチンコにのめり込み、金の工面のため牛を売るはめになったとする。

 「普通は『バカ息子だねぇ』とまゆをひそめて終わりですが、都城には『それは売られる牛も気の毒だ』と、ユーモアでその場を収める雰囲気がある」。現実を、一歩引いた地点から笑いに転化する風土。そのためか、原作でも、毎回必ず「クスっ」と笑うユーモラスな場面をつくり上げる。

 今も釣りが好き。宮崎には毎年、春と秋、イシダイ釣りのために帰る。

 「腕前ですか? ハマちゃんには、とてもかなわない。一応、仕事優先ですから」
 (この篇=社会部・藤田中(あたる))