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第13話(下)【明るさと元気と】 読者のみなさんへ 「言葉のシェルパ」でいたい '04.07.09掲載   


 実は、もう一人会いたい人がいた。四十代の女性だ。

 人づてに聞いた話では、その女性は、夫が会社のリストラに遭い求職中。家計を支えようと、早朝から深夜まで三つの仕事を掛け持ちしながら、懸命に働いているという。

 朝五時から九時までコンビニで働き、その後、昼までは家事。午後は中華料理店で何百個というギョーザを包む仕事に精を出し、夜は午後七時から深夜まで居酒屋で働いているという。それでも明るさを失わない人だそうだ。

 その、ひたむきさに共感した。読者のみなさんに、元気を届けられると思った。ただ、デリケートな取材。丁重に断られた。「そっとしておいてほしい」という理由だった。今も、未練が残る。

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 「あなたに会いたい」第二部は、私たち社会部の記者が、九州各地に、まず会いたい人を訪ね、さらに、その人が会いたい人も訪ねる―上下「合わせ鏡方式」で書き継いできた。

 九州に暮らす十三人の人物に会いに行き、さらに彼や彼女から広がる人物を訪ね、それぞれの人生模様を書いてきた。

 深刻な話、思わず身につまされる話、明るく未来を語る話、くすっと笑ってしまう話…さまざまな話を伺った。感じたのは、どの人もみんな、真っ正面からそれぞれの現実に立ち向かっていることへの共感だった。

 忘れ得ぬ言葉もたくさんいただいた。

 二年前、肺、リンパ節、脳にがんが見つかり「放置すれば余命三カ月」と宣告されたのに、がんを冷静に受けとめ、日々闘っている原正高さん(67)は「がん細胞よ、テロを起こすな。私が死ぬときは君も死ぬときだ」と、自分に言い聞かせていた。

 九州一のパンメーカーの御曹司として育ったものの、実家が倒産。裸一貫から種子島で再出発した池田修さん(51)は、「今は身の回りに起きることは全(すべ)て必然必要、ベストなことと感じる」と話してくれた。

 「先輩の言うことを素直な気持ちで聞く人は必ず伸びる。どんな仕事でも同じはず」と語ってくれたのは、熊本ホテルキャッスル社長の斉藤隆士さん(61)。「中華料理界のドン」の異名を誇る実力者だけに、強い説得力があった。

 熊本県・阿蘇で自らの美術館を開く大野勝彦さん(60)には、頭が下がる思いだった。事故で両腕を失っても前へ前へと進もうとする生き方。「笑顔必携 やさしさ持参」「人生後半が面白い 味が出るのはこれから これから」。大野さんが書くそんな「優しさ」に誘われるように、オープン一年で来館者はまもなく二万五千人に達する。

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 誰しも会いたい人がいる。それは、旧友、恩師、初恋の人、有名人、同志、自分の人生を変えた人…とさまざまである。人は、なつかしさや、共感、あこがれ、好奇心…、そんな思いから人に会いたいのだと思う。それは、相手に会うことで自分を確認したいという一種の「自分探し」なのかもしれない。

 この連載で、チョモランマに荷物を運ぶシェルパのナワン・ヨンデンさん(52)を取り上げた。私たちも、ナワンさんのように、人々の人生のドラマを読者のみなさんに運ぶ「言葉のシェルパ」であり続けたいと思う。

 第二部は今回で終了する。また、あなたに会いにいきたい、と思っている。
(この篇=社会部・田端良成、藤田中) =おわり