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イラク自衛隊派遣

■「派遣」から「派兵」へ 憲法のタガ外れ変質 自衛隊海外活動

 イラク人道復興支援の中核を担う陸上自衛隊本隊が三日、イラクへ出発した。湾岸戦争後のペルシャ湾で海上自衛隊掃海艇が機雷除去活動をしてから十三年。国連平和維持活動(PKO)協力法成立を経て国際貢献は自衛隊任務の柱となり、海外派遣は急拡大した。そして、事実上の「戦地」イラクへの今回の陸自派遣。自衛隊は日米同盟の“道具”という新たな意味を持つようになり、日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えた。

 自衛隊の主な海外派遣先●五原則
 「あくまでも国際平和のために活躍する」。福田康夫官房長官は三日の記者会見で、イラク派遣の位置づけがPKOと変わらないと強調した。
 しかし、違いは歴然としている。PKO協力法は一九九二年に成立し、その年に陸自がカンボジアに派遣された。内戦で荒廃した国道や橋の補修に携わった。以後、自衛隊派遣は続くが、活動は(1)停戦合意(2)紛争当事者の同意(3)日本の中立(4)撤収可能(5)必要最小限の武器使用―というPKO参加五原則を順守した。つまり、海外での武力行使を禁じた憲法との整合性が担保された。
 ところが、二〇〇一年の米中枢同時テロを境に自衛隊は五原則を踏み外す。テロ対策特措法に基づくインド洋派遣、イラク復興支援特措法に基づくイラク派遣。停戦合意や紛争当事者の同意を待たない泥縄式派遣により「武力行使はしない」という保証は揺らぐ。

 ●重武装
 派遣先の危険度が増し、自衛隊の重武装化も進んだ。カンボジアやモザンビークでの携行武器は小銃と短銃に限定されていた。九四年のザイールでは機関銃一丁の携行が国会で大きな議論を呼んだ。イラクでは一気に無反動砲や対戦車弾などに拡大した。しかし、現地の治安情勢を考慮してか、国会での是非論議は深まらなかった。
 正当防衛と緊急避難に限った武器使用基準も徐々に緩和された。イラク派遣に際しては「隊員の安全確保」を理由に与野党から武器使用基準緩和を求める声が強まった。防衛庁は新たな部隊行動基準を定め、現場裁量を広げた。自衛隊の武器使用を「やむなし」とする空気が広がっている。
 これまで自衛隊が海外で武器を使った例はない。犠牲者もいない。だが、イラクで歴史が塗り替わる恐れは大きい。

 ●米重視
 「日米同盟の信頼強化に資する」。石破茂防衛庁長官は二日、アーミテージ米国務副長官に陸自派遣の意義を訴えた。米国の圧力に屈し、憲法や平和主義を無視した拙速な自衛隊派遣に突き進む日本政府。自衛隊派遣の変質は、国連重視から対米重視にシフトする日本外交の変質でもある。
 陸自本隊第一陣を乗せた政府専用機は静かに新千歳空港(北海道)を飛び立った。米国の要請に従い、なし崩しに自衛隊を海外に送る第一歩になる。
 政府は既に「国際貢献」の大義名分の下、自衛隊の海外派遣をより容易にする恒久法の整備を検討している。憲法改正の動きも加速しそうだ。最初の自衛隊の海外派遣から十三年がたち、平和憲法を掲げる日本にもはや慎重さはうかがえない。 (東京報道部・井上真由美)

[2004/2/4]



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