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■どう守る都市 福岡沖地震・マンション被災<2>落差 砕けた「耐震」の信頼―連載
「建物の耐力上、重要なひび割れ、損傷はみられません」
四月上旬、福岡市中央区大名・今泉地区のマンション一階ホール。管理組合の臨時総会で、福岡沖地震の被災調査報告書に関する説明を聞いた入居者の男性(57)は、耳を疑った。 「ベランダの鉄筋はむき出し、壁はひずんだ。それなのに…」。報告書をまとめたマンションの設計、販売会社に対する不信感が、男性の中で急速に膨らんでいった。 ■法的問題なし マンションは築五年半。宮城県沖地震を教訓に一九八一年に改正された建築基準法の「新耐震基準」をクリアしている。それなのに、半数以上の世帯でドアが開かなくなり、住民は避難した。市の被害認定は「半壊」。施工会社による修理見積もりは最低二億五千万円に上った。 「設計ミスではないのか」「補修費を請求すべきだ」。住民から販売会社の責任を問う声が上がり、管理組合は被災調査を要請した。しかし、結果は期待を裏切る内容だった。 壁に無数に走る亀裂、はがれ落ちたタイル。三十八ページの報告書のほとんどが生々しい被害写真で埋まる。それでも販売会社側が出した結論は「問題なし」だった。「建物の主要構造は壊れていないので、法律(建築基準法)的には問題ないという意味でしょう」。一級建築士でもある管理組合理事長(51)は苦々しげに解説する。「今のままでは安心して住めない」。住民の不安は置き去りのままだ。 ■まるでペテン 住民の深い被災感情と、販売会社の軽い被害認識。両者間の落差を生み出したのは「法の死角」だったといえる。 実は、「新耐震基準」で建物が損傷しないよう定めているのは「震度5強程度の地震」まで。震度6弱の今回の地震では、建物自体が倒壊しない限り、壁や天井の損傷は問題にならない。国土交通省建築指導課は「福岡沖地震のマンション被害は法の許容範囲内」と言い切る。ただし、それはマンション住民のほとんどが知らない事実だ。 「震度7にも耐えますという説明にだまされた」。同市中央区の三十代の女性は七年前、「新耐震基準」を満たす別の新築マンションを買った。ところが自宅は「床にひびが入り、内部はぐちゃぐちゃ」。マンション販売会社の営業担当は「当時の責任者がおらず、具体的な状況は分からない」としたうえで、こうつけ加えた。「私自身は販売で地震の説明をした記憶はほとんどない」 「まるでペテンに遭ったような気分だ」。特定非営利活動法人(NPO法人)福岡マンション管理組合連合会の杉本典夫理事長(72)は、法の規定と入居者の認識との乖離(かいり)をこう表現する。 ■分かれた明暗 「地震でも無傷」。今回、そんな住民の要求を満たしたのは、「耐震」ではなく「免震」だった。 九州ではまだ珍しい免震マンションの一つが、同市南区の「レークヒルズ野多目8番館」(十三階建て)。建物と基礎の間の特殊な「クッション」がその心臓部。ゴムと鋼板の分厚い層で揺れを半減させる。 本震の際、建物がしなるのではなく、全体がゆっくり平行に揺れたため、「神棚のお札も倒れなかった」(三階)。約五十メートル離れた9番館はオール電化を優先した耐震型。「しわが入ったクロス補修にいくらかかるか不安」(四階)など、免震と明暗を分けた。 免震との価格差は約二百四十万円。「余震のたびにおびえる現状を考えれば免震でも安かったかも」と、入居者の一人はため息をつく。「地震に強い建物」とは何か。長い間震災と無縁だった北部九州で、ようやく地震対策に目が向けられつつある。 [2005/05/18] |
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