仲盛昭二元社長 「設計変更に伴い構造計算のデータは差し替えた。また確かに、完成した構造計算書の一部には元の書類を残したが、手間を省くためであり偽造の意図はない」
福岡市建築指導課 「データの差し替えは問題ないが、構造計算書全体が刷新されなかったのは偽造以外の何物でもない」
市が二月八日、サムシングにより構造計算された賃貸マンション三棟の耐震強度偽装を指摘して以降、仲盛元社長と福岡市は「偽造の有無」について激しく対立。双方の主張は今でも平行線のままだ。
建物が地震に耐えられるか計算で確認する構造計算。建築主などが要求する設計コストやデザインでは耐震性を満たさない場合、設計を変更し、データを差し替えるのは当然、というのが建築業界の一般的な見方だ。
ただ、三棟の耐震強度偽装を指摘した日本建築構造技術者協会(JSCA)九州支部は「耐震基準をクリアするため入力データは何度も差し替えるのは普通だが、今回のサムシング物件のように構造計算書の一部が元のまま残されていれば、何かをごまかそうとした悪意を感じる」。構造計算書の偽造については“灰色”のままだ。
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福岡市がサムシング物件の偽装疑惑を会社の実名入りで発表したのは、計算書「偽造」に加え、耐震強度の不足があったからだった。
強度不足の結果が出た調査法は「許容応力度等計算」と呼ばれる方法。しかし今回の再検証では同計算に加え、別の計算方法である「限界耐力計算」も採用された。
限界耐力計算は二〇〇〇年の建築基準法改正で採用された新しい計算方法。地震による柱や梁(はり)の変形などの粘りまで考慮するため、建物の持つ「耐震能力」をぎりぎりまで計算する。日本建築防災協会(東京)は「同じ建物でも粘りまで考慮しない許容応力度等計算より限界耐力計算の方が耐震強度が上がる傾向が強い」と指摘する。いずれの計算法も法で認められている。
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今回の再検証で、福岡市がサムシングを問題とした二つの根拠のうち一つは揺らいだことになる。
福岡市は「耐震強度偽装を発表した当初から『構造計算書の偽造と耐震強度は別の問題』としてきた」(建築指導課)としており、一転して耐震強度について安全宣言することについても「想定の範囲」との立場だ。
ただ、熊本県内でも耐震強度をめぐり、行政側が公表内容を二転三転させる事例が起きた。和田章・東京工業大教授(建築構造学)は「構造計算は『職人芸』の世界で簡単に白黒がつけられない。危険な建物があぶり出されるのは良いことだが、姉歯秀次・元一級建築士による耐震強度偽装問題で行政も過剰反応しているのかもしれない」と指摘する。
下手すれば人命にかかわる問題だけに、福岡市の「疑わしきは公表」という基本姿勢は評価されるが、風評被害をいかに防ぐかという課題は残った。(社会部・東伸一郎、湯之前八州)
[2006年4月2日付 朝刊]