「耐震強度が弱いことに恐怖はまったく感じないが、客が一人もいない今の状態はすごく怖い」。サンホテル国分の源島新太郎さん(31)は静まり返った無人のホテル内で打ち明けた。
サンホテル国分は昨年十二月二十七日に偽装が判明。耐震強度は最小で法定基準の約半分とされ、同日から営業を休止した。同日の予約は約八十人。社員計九人は総掛かりで代替の宿泊先を手配し、車で送り届けた。「外回り営業で必死に獲得した客をライバルのホテルに連れて行く悔しさ。絶対に忘れられない」。源島さんは唇をかむ。
補強工事の計画はなかなか決まらず、社員の間では先行きへの不安が高まった。「互いに偽装問題の話を避けていた」(源島さん)。ホテルのオーナーは二月、雇用を保障した上で、源島さん以外を自宅待機にした。
三月下旬から、補強工事に向けた建物調査が始まった。源島さんは現在、その対応などに走り回っている。「再開の予定日さえ決まれば、すぐにでも外回り営業に出たい」と力を込める。
■貴重な研修期間
アルクイン黒崎の耐震強度不足が発覚したのは昨年十一月二十六日。強度は最小で基準の約八割だった。その後、構造計算書の偽造も確認され、十二月十日に完全休業。今年初めから、柱を太くし、耐震壁を増やすなどの補強工事を実施した。
四カ月以上に及んだ休業。「当初は沈みがちの社員もいたが、またとない充実した期間にできた」と振り返るのは、同ホテルの古海(ふるみ)慎二郎さん(35)だ。
ホテル側は休業期間を社員研修にあてた。お年寄りの客に対する付き添い方など細かな心遣いから、フロント業務、災害時の誘導方法…。古海さんらはホテル近くのビルの一室で毎日問題点を議論し、結果をマニュアル化、互いを客に見立てた模擬営業で実践した。
「昨年六月のオープンから半年、研修にはちょうどいい時期だった」と古海さん。営業再開を目前に「社員は目の色が変わってきた」という。
■レッテルは重く
両ホテルの社員が気にするのはやはり、営業再開後の客入りだ。サンホテル国分の源島さんは「休業中、常連客は別のホテルを使っている。果たして戻ってくれるか」。アルクイン黒崎の古海さんも「補強工事で耐震強度は万全だが、『偽装ホテル』のレッテルは重い」と不安視する。ただ「再開はいつ? との常連客からの電話が毎日十件以上入る」(源島さん)、「営業再開後の予約は好調」(古海さん)と、両ホテルとも客が減る兆候はないという。
突然降り掛かった偽装問題。源島さんと古海さんは異口同音に強調した。「誰の責任でこうなったか、はっきりさせてほしい」
(社会部・湯之前八州)
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●アルクイン黒崎 工事完了を検査 北九州市
北九州市は十四日、姉歯秀次元一級建築士による耐震強度偽装が発覚し、改修工事を進めていた同市八幡西区のビジネスホテル「アルクイン黒崎」の工事完了検査を実施した。十七日に結果を公表。基準を満たしていることが確認されれば同ホテルは十八日に再オープンする。
同ホテルは姉歯氏による偽装で、一階は必要な耐震強度の80―90%しかないことが判明。今年一月から工事に入り、一階の支柱五カ所の補強などを行ってきた。
この日は市建築都市局建築審査課の職員四人がホテルに立ち入り、窓や扉が十二月に提出された設計書通りに設置されたかなどを確認した。
[2006年4月15日付 朝刊]