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耐震強度偽造問題 九州・山口関連

【緊急連載】背信・耐震偽装<上>幕開け 「本丸」見据え決断

 二十六日午後二時十六分。サイレンを鳴らしたパトカーに先導され、木村建設社長の木村盛好容疑者(74)を乗せたワンボックスカーが、警視庁の地下駐車場に消えていった。その三時間後、同庁内の通路で、二十人余りの記者に囲まれた捜査幹部が言った。「第一ステージの幕が、やっと上がったばかりだ」

 昨年十二月下旬、元一級建築士の姉歯秀次容疑者(48)による建築基準法違反容疑で、一都五県計百十二カ所の家宅捜索に踏み出す直前。捜査幹部が決意を語った。「姉歯元建築士の取引業者がそれぞれ偽装に関与していたことを突き止め、マンション、ホテルの両ルートで詐欺容疑を立件したい。そのために木村建設を解明する」

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 一月下旬から始まった関係者の事情聴取は数百人に及んだ。だが、姉歯容疑者の構造計算書偽造に関与したという証拠は見つからない。姉歯容疑者に鉄筋量を減らすよう指示した木村建設元東京支店長の篠塚明容疑者(45)でさえ「姉歯供述だけでは偽装に関与した建築基準法違反容疑にも問えない」。合同捜査本部の約二百人の捜査員に日増しに焦燥感が募った。

 捜査の行方に一筋の光が見えたのは二月。経理班の捜査員が大量の帳簿類を突き合わせ、ある数字の食い違いを見つけ出した。木村建設が一九九八年から赤字を隠ぺいするために決算を粉飾、国土交通省に虚偽の報告をしていた疑いが発覚したのだ。同社が姉歯容疑者に多くの構造設計を依頼し始めたころだった。

 姉歯容疑者の偽装とは直接結びつかない違法行為。「立件には議論もあった」と警視庁の幹部は打ち明ける。

 だが東京地検は「粉飾決算を繰り返す過程で木村建設は、工事を安く仕上げるために鉄筋を抜くという方法をエスカレートさせた。安全を置き去りにしてコスト削減に走ったことが耐震偽装事件の本質だ」と立件を決断する。あらゆる法令を駆使しながら、事件の核心に迫ろうという警察、検察の協議が一致し、着手へのゴーサインが出たのは三月末だった。

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 苦渋の決断だった捜査方針には、反発の声もある。「なぜ経理担当役員が書類送検なのに(直接の担当ではない)篠塚が逮捕されるのか」。篠塚容疑者の逮捕に弁護人は反発した。

 確かに木村容疑者以外に逮捕された三人の元役員は、営業統括専務にホテル部門担当役員、そして東京支店長。木村容疑者の指示で決算を粉飾していたとみられる経理担当の二人の役員は、書類送検となる見込みだ。

 ただ逮捕された元役員のうち、篠塚容疑者以外はサンホテル奈良の開業に携わっている。昨年十月末に姉歯容疑者の偽装が確認された後に、木村建設が工事代金を受け取ったという詐欺の疑いが浮上しているホテルだ。

 検察内部に詐欺罪の適用に、慎重な見方があるのも事実だ。「だが建設業法違反の摘発にとどまれば、何の捜査だったのかということになる」と警視庁幹部。今の捜査の先に、強度不足のマンションを販売したヒューザー、総合経営研究所の責任追及がある。

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 住まいへの安心を揺るがした耐震偽装事件はなぜ起きたのか。偽装発覚から五カ月。捜査、被害住民、そして行政の、この間の動きを追った。

[2006年4月27日付 朝刊]

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