「これは助かる。ツアー商品開発の参考になる」「九州はいいものをつくりましたね」。円卓を囲んだ旅行会社の企画担当者たちは、二種類の冊子を手に表情を緩めた。十七日、九州観光推進機構が大阪市内のホテルで開いた旅行会社向け相談会。機構職員が会場に持ち込んだ「歴史と文化」「温泉」の九州観光素材集は、狙い通り旅行会社の強い関心を集めた。
◆大人気の素材集
鹿児島・熊本・長崎を結ぶキリシタン巡礼、福岡・大分・熊本に延びる柳原白蓮の「恋の道」、熊本・長崎・佐賀を訪ねるやきもの紀行。冊子では複数県にまたがる観光地を「旅のストーリー」で結び付け、お薦めコースや郷土の自慢料理も紹介する。
いずれも各県や地元市町村、観光協会に情報提供を求め、現地に職員が赴いて、つくり上げた。やきもの紀行などは実際に旅行会社が取り入れて、ツアーとして具体化しているという。
「旅行会社も新しい観点のツアー企画を売り出したいと考えている。でも現実には目先の売り上げに追われて、独自に開発する手間も金もないんですよ」。素材集開発を手掛けた機構の甲斐和郎国内誘致推進部長(57)は、注目される背景をこう説明する。大手旅行会社出身の経験が業界の需要をつかんだ。
◆旅行者の目線で
点から線、そして面へ―。広域観光ルートは、エリア内滞在型など多様な観光スタイルを生み出す可能性があり、観光による地域づくりを目指す地域には魅力的に映る。実効性のあるルートにし、そこに観光客を呼び込む原動力となるのは何か。
国内観光に詳しい九州産業大学の千相哲助教授(46)は「地域の連携と知恵。行政主導だと、民間の自助努力が次第におろそかになる。旅行者の多様なニーズに、同じ目線で応じられるのは、地域を一番よく知る人たち」と指摘する。
千助教授が、広域観光ルートを支える組織の好例として挙げるのは、米国の南部十一州による「トラベルサウスUSA」だ。全州が同額を出資。特定非営利活動法人が運営に当たる。東京とロンドンに事務所を置いて対外宣伝をする一方、地元に旅行者の細かい要望や疑問に応じる受け入れ態勢がある。
◆地域活動も要件
今月、国土交通省は道路による観光ルート「日本風景街道」を発表した。全国七十二ルートのうち、九州は「玄界灘」(福岡市、佐賀県唐津市など)や「阿蘇くじゅう・やまなみ」(熊本市、大分市など)など八ルート。景観に優れているだけでなく、活発な地域活動も選定要件とした。
財政難もあろうが、国も広域観光の基盤として住民の連携に着目。道路清掃のボランティアや地域活性化グループを束ねる組織「道守(みちもり)九州会議」の樗木(ちしゃき)武代表世話人(67)は「広域ルートは住民の自主運営が基本。官が指導、監督するものではない」と語る。
「何とかヒット商品を」と意気込む九州観光推進機構の甲斐部長も「広域観光ルートの開発は、新たなまちづくりにもつながる」とみる。住民の連携なくして広域ルートはつながらない。