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| 「宇宙から地球を見ることで地球環境の変化がよくつかめます」と語るNASAの研究員、クレア・パーキンソンさん |
米国の首都・ワシントンから車で約四十分。米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターは、メリーランド州の広大な林の中にあった。広さ約五百十四ヘクタール。NASAが誇る世界最大の地球環境観測衛星基地だ。
センターは一九五九年設立、衛星によるデータの収集・分析から衛星の運用、開発にあたる。ハッブル宇宙望遠鏡の操作もここでやっている。
七二年の「ランドサット」打ち上げ以来、米国は衛星による地球環境観測をリードしてきた。地球温暖化、熱帯雨林の減少、砂漠化の進行、異常気象―。その画像は、「宇宙から見た地球」の姿を克明に写し出す。地球規模の環境問題解決のため、そのデータが今、不可欠だ。
ゴダード宇宙飛行センターに送信されるデータ量は一日当たり平均千ギガバイト。「コンパクトディスク約二千枚分に相当します」。施設を案内してくれたマット・シュワラーさんは、そう説明した。
環境問題の各分野の科学者がデータ解析にあたる研究棟。同センター研究員の海洋科学者、クレア・パーキンソンさんは、地球観測衛星の意味、重要性を「地球全体の環境をとらえられるようになったこと。しかも、長期にわたる観測でその変化の実態がつかめる。海、大気や雲、空中の塵(ちり)などすべてが関連しあって地球が成り立っていることがよく分かります」と、話した。
パーキンソンさんは昨年五月、カリフォルニア州バンデンバーグ基地から打ち上げられた地球観測衛星「アクア」のプロジェクト・チームのメンバーでもある。
アクアは、日本とブラジルの観測機器を搭載。地球の水・エネルギーの循環メカニズム解明のため、海洋や大気中の水分など水にかかわる観測を続けている。
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パーキンソンさんは「これまでで一番ショックを受けた衛星画像」として、巨大な氷壁の崩落を挙げた。
南極のルーズベルト島近くの通称B―15と呼ばれる氷山の壁が二〇〇〇年三月中旬、崩れ落ちた際の画像だ。米衛星「テラ」がとらえた。
過去最大の崩落で、その規模は長さ約三百キロ、幅四十キロにも達した。面積にして、福岡、佐賀、長崎の九州北部三県と同じ広さが滑り落ちた計算だ。
地球温暖化による氷壁の崩壊、海洋の氷の融解は、北極圏でも起きている。夏の平均気温は、この十年で一・二度上昇。NASAは〇二年末、「この温暖化傾向が続くと、今世紀末には北極圏の氷はなくなる可能性がある」と警告した。
衛星に搭載したセンサー技術の飛躍的な発達で、海洋面の温度変化も測定できるようになった。パーキンソンさんは「こうしたデータは(異常気象との関連が指摘される)エルニーニョ現象の解明にも役立っている」と話した。
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ゴダード宇宙飛行センターを訪ねたのは、〇二年暮れ。米中枢同時テロ以後、NASA施設への立ち入りは厳しく規制されるようになり、限られた時間での取材だったが、取材後間もなくパーキンソンさんからメールが届いた。
「日本の人々、特に子どもたちに伝えたい」というメッセージには「人類は宇宙に飛び出してみて初めて、地球がいかに美しくユニークな星であるかを知ったはずです」とあった。
パーキンソンさんが言うように、一九六一年、初の宇宙飛行に成功した旧ソ連のガガーリン飛行士以来、宇宙飛行士たちは「美しい地球」を語ってきた。日本の飛行士たちも同じだ。米スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗した若田光一さん=九州大卒、米テキサス州ヒューストン在住=も、こう述べている。
「暗黒の宇宙の中に青白く輝く“ふるさと地球”が見えた。薄い水色から濃いあい色まで微妙に変化する地球の海の青。心をほっとさせるような優しい色と思った。地球は薄青い大気のベールに包まれ、本当にこの薄い大気層で地球上の命が守られているとの強い印象を持った」
パーキンソンさんのメッセージは「(地球環境の危機が叫ばれる中で)美しい地球を守れるかどうか、だれも助けてくれない。それはただ私たちの決意、決断にかかっているんです。地球観測の仕事にかかわり、本当にそう思います」と、結ばれていた。
▼文と写真/ワシントン支局 平山 孝治
2003/01/14 付 朝刊