●「非営利」はタクシーの半額程度 福祉車両限定 「足かせ」の声
●全法人に法の網
指針では、非営利のNPO法人や社会福祉法人の移送サービスにも、道路運送法の網をかける。タクシー事業許可はいらないが、例外措置として「自家用車」(白ナンバーの車)の有償運送許可を取る必要が出てきた。運賃は「営利に至らない範囲」と定められ、地域のタクシー料金の半額程度が目安とされている。
使用車両は、車いす用リフトなどが付いた福祉車両に限定される。例えば、社会福祉法人などのホームヘルパーが乗降介助のために乗用車を運転して病院に運ぶことはできなくなった。
これまでヘルパーが病院に移送していた北部九州の社会福祉協議会の職員は「所有する福祉車両は二台しかない。利用が集中したらサービス提供をできない。規制が緩和されたようで、実際には足かせをくらった形だ」と本音を漏らす。
●新たな「関門」も
さらに、有償運送許可をめぐっては新たな関門ができた。各地域の自治体やタクシー会社などでつくる運営協議会に、サービスが必要かどうか、許可が妥当かどうか、諮る手続きがいるようになった。
国の構造改革特区に認定され、昨年十二月からリフト付き福祉車両一台で移送サービスを試みている熊本県菊池市の同市社協では利用登録者は十二人、月の平均利用総数は十三回程度にとどまっている。
サービス開始前の運営協議会で、「本当にタクシーを呼びにくい地域の人か」「身体的に福祉車両でないと移送できないのか。タクシーでは難しいのか」など、個別ケースで問われた。
同社協の担当者は「運営協議会の中で利用登録者数が絞り込まれるケースも出るのではないか。公共交通網が整った地域では、非営利法人の移送サービスがすんなり認められるとは思えない」と言う。
●「営利」は“無料運賃”でもOK ヘルパー運転 乗用車認める
●自由に運賃設定
一方、今回の指針では、「訪問介護事業を扱う営利法人」の移送サービスには、タクシー事業許可の取得を義務付けた。ただ、NPO法人や社会福祉法人などと違い、へルパーの乗用車での移送も、安全運転講習の受講などの条件付きで認める。
運賃は距離制や時間制、定額制など、法人独自に申請できる。移送前後の車の乗降介助サービスは介護保険が適用されるが、そのサービスの利用者負担分(介護報酬の10%、乗降ごとに日中百円程度)だけを運賃とすることもでき、事実上の“無料運賃制”が認められるという。
九州運輸局は「移送サービスは地域によって需要も異なる。提供する介護事業者(営利法人)の判断で運賃も多様化しそうだ」としている。
●不透明な面多く
こうした福祉関係の法人の本格参入をにらみ、介護タクシーを運行するタクシー業界は、危機感を募らせる。
福岡市の地場タクシー会社では、ホームヘルパー一、二級と介護福祉士の資格者二十九人が介護タクシーを運転。運賃は通常のタクシー料金に加え、介護保険の乗降介助サービスの本人負担分を受け取っている。「客を奪われるのは確実。運賃で競争しても勝てない。プロドライバーの安全性とサービスで対抗する」と担当課長は話した。同社の介護タクシー運転手は「(新規参入の影響で)タクシー業界に値引き合戦が起きれば、サービスや安全性に影響が出てこないか」という。
営利の訪問介護事業者と、NPO法人、社会福祉法人の間で今後、許可取得の動きがどれだけ出て、それぞれの地域のサービス量が全体でどうなるのか。介護タクシーも含めた競争が、運賃低額化とサービス向上に結びつくのか。地域事情も絡まり、まだ不透明な面が多い。
利用者側は各事業者の運賃やサービスの違いを見分けて、賢く使い分ける知恵が要りそうだ。要介護5の夫を介護している福岡市内の主婦(73)は「通院などの足の確保は生活に欠かせない。いろいろな事業所の移送サービスの扱いが法的に整理されたのはよいが、利用者にとってはどうなのか、ということ。利用者本位のサービスを期待したい」と話していた。
■ワードBOX=有償移送サービス
自家用車を使う社会福祉法人やNPO法人、訪問介護事業者(営利法人)などの有償移送サービスは、介護保険導入後、目立って増えた。このサービスについて、国交省は道路運送法が禁じる「白タク行為」としてこれら法人にタクシー事業許可の取得を求める立場を取った。これに対し、厚労省は要介護のお年寄りの足を守る立場から、「許可不要」として容認する姿勢を取った。このため、自治体の対応が二通りに分かれるなど、混乱していた。新指針について、九州運輸局は「現状を追認する規制緩和」と説明している。
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