家を住み替えたくても新築を買えるほど家計に余裕はない。先の見えないご時世、ローンを組むにも不安が残る。そこで現実的な選択として、リフォームが浮かび上がってくる。古い家でもリフォームの仕方によっては長く快適に暮らせる空間に変わる。そんなリフォームのコツとは―。
末永く住もうと思えば家族の高齢化を見据えたバリアフリー化は欠かせない。福岡市中央区警固の建築士、杉村逸男さんがリフォームを任されたあるマンションの一室も「近い将来、介護が必要になる時のために」との依頼だった。
同市内にある築三十年のマンションで、九十代の母と六十代の娘の二人暮らし。面積約六十三平方メートル。二人なら十分な広さだが、部屋のあちこちに十センチ前後の段差があった。玄関や廊下の幅も狭く、車いすを使うようになったら満足に移動できそうになかった。
■床をフラットに
集合住宅、一戸建てとも、建物全体の構造を支える柱や鉄筋、コンクリート壁以外は、ほとんどの壁が取り払える。そこで杉村さんは、障害者の住む家を手がけた経験から、全面改装を提案。廊下を設けず、玄関や浴室を広くするなど間取りを大幅に変更した。床は浴室の高さにそろえて室内すべてをフラットに。トイレのすぐ横に母親の部屋を置いた。介護のしやすさを考え、浴室・トイレまでの移動距離を短くするためだ。
ただし集合住宅では、共用配管が動かせないため、台所など水回りの移動は制限される。共用配管まで水が流れるだけの傾斜が、室内配管に保てる範囲が目安となる。
天井や床、壁の素材も一新し、築三十年とは思えない見栄えになった。「買うより安い価格で暮らしに合わせた家ができます」と杉村さん。費用は床暖房の導入、温水器や空調機の変更を含めて約一千二百万円。工期は約一カ月半だった。
■自然素材を利用
快適に暮らす上では、結露やカビ、有害な化学物質を含む建材によるシックハウスへの対策も見逃せない。対策の一つに自然素材を使う方法がある。土の壁やむく材の床板には、湿度を調節する機能がある。また、ガラスを二重張りに変えると断熱効果が向上し、温度調整がしやすくなる。
一方で、全国で市民向けに「住む人と住まいの健康と長生きを考えるリフォームセミナー」を開いている同区今川の設計事務所「住環境工房らしんばん」代表、白水秀一さんは「住まいの健康診断」を提案する。
壁紙を張り替えても、通気が悪ければ、またカビが出る。シンクを更新しても、配管が古くて赤さびが出る場合もある。「事前の“診断”で原因を把握することで、後悔しないリフォームを実現できる」と白水さん。
■トラブル予防も
「健康診断」は工事トラブルの予防にもつながる。リフォーム市場の拡大で新規参入業者が増える一方、リフォーム工事には特別の資格や登録が必要ない。そのため技術格差が大きく、リフォームをめぐるトラブルの原因につながっている。国民生活センター(東京)によると、フローリングを敷いたら扉が開かなくなって建具の追加工事が必要になるなど、「見積額を超える工事費に膨らんでトラブルになるケースが増えている」という。
「構造面などで制約のあるリフォームは、新築よりも技術を要する」という白水さんは「業者選びは慎重に。自分で“診断”できるだけの知識や情報を集めて、賢い消費者になりましょう」とアドバイスしていた。
|