

駅でただ1人の立ち売りの山口さんは、折尾駅を紹介する歌まで作詞作曲している
大正5年築造の洋風建築の駅舎は、九州でも五指に数えられる古さ。「駅の開業は、門司港(旧門司)駅より少し早いんですよ」と弓場駅長
「かしわーめし、かしわーめし」。長崎街道と唐津街道に分岐する交通の要衝だった北九州市八幡西区にあるJR折尾駅。行き交う乗降客の雑踏の中で、今は珍しくなった駅弁の立ち売りが続いている。同駅の名物駅弁「かしわめし」(東筑軒)などを詰め込んだ、大きな木箱を首からつり下げた山口和利さん(62)の声がホームに響く。
甘辛く煮詰めた鶏肉が細切れにされ、錦糸卵や味付けのりと一緒に盛り付けられた「かしわめし」のファンは全国に広がる。かつて各駅で見られた「立ち売り」は特急電車の電化で窓が開かなくなるにつれて減り、九州では他に人吉駅(熊本県)など数カ所だけだ。
「お客さんと触れ合い、旅情を感じてもらうには、立ち売りが1番。やはり鉄道には人情が似合うのですが…」と山口さんも寂しそう。
開業が明治半ばの1891年と、古い同駅。立ち売りのほかにも、珍しいものが盛りだくさん。
実は、日本で初めて誕生した立体交差駅でもある。2階の鹿児島線と1階の筑豊線が十字に交差。筑豊炭田の石炭を若松へと運んだ筑豊線は、産業の主要幹線だった。それ以前、遠賀川と洞海湾を結んだ堀川運河を、石炭を積んで下った五平太船の役割を担ったのだ。洋風建築の雰囲気を残す待合室の円形いすや、構内で営業する理髪店があるなどユニークな駅だ。
100年以上の歴史の中で、鉄路とともに人や物資が交わってきた街。そんな利便性が、駅周辺に産業医科大や九州共立大などの大学、東筑高や自由ケ丘高などの高校、最近では産学連携の北九州学術研究都市を誕生させたのだろうか。「まさに折尾は若者の街なんです」と弓場政則駅長(53)。
朝の雑踏を急ぐ学生や会社員、昼下がりに待合室でひと息入れるお年寄り、夜にはくつろいだ会社員らが、堀川運河沿いの飲み屋街へと消えていく。行き交う人々の息遣いが聞こえてくるような駅だ。
(北九州支社・中山憲康)


4月には、色鮮やかなチューリップが、金山川の両岸に咲きそろう
折尾駅の南東に広がる則松地区。その中央部を南北に流れる金山川は、四季の花々が楽しめる遊歩道となっている。両岸には、ボランティアグループによって花々が植えられており、同川の水を引き込んだ憩いの場「水辺の里」も整備されている。
春には赤や紫、黄、だいだい色など華やかなチューリップ数万本が咲き誇る。桜やコスモスも有名で、それぞれ最盛期にはイベントが企画され、観光客でにぎわう。則松市民センター=093(602)2010。
折尾駅は1891年開業。1日の乗降客数は約4万人とJR九州管内で第4位。赤レンガの地下連絡通路や待合室の円形の柱いすは、明治、大正期の雰囲気を残す。2020年には駅周辺を高架化し、同一フロアにホームを集約、立体交差もなくなる。快速で博多駅から45分、小倉駅から20分。電話093(691)0024