◇見えぬ「中身」◇
「地元の物を地元で見られるのが理想。展示・収集品については、そう遠くない時期にきちんと説明できると思います」
さる三月三十日、福岡市内で開かれた博物館着工記念シンポジウムの帰途。パネリストの一人、鷲塚泰光・奈良国立博物館長は、記者の質問に慎重に言葉を選んだ。
九州国立博物館は何を、どんな方針で、資料を収集しているのか。二〇〇〇年度補正予算から約十五億円をかけて、平安時代の木造観音菩薩立像など計十点を購入したこと以外、文化庁はコレクションの内容を明らかにしていない。示された常設展示の完成イメージ図も、ただケースを並べただけに見える。
「資料保存の点からケース入りは避けられない。問題は見せ方。透過度の高い、造りを工夫したガラスケースを使うとか。展示デザインに外国人を起用してもいい。鉄器などは『ハンズオン(手に持たせる)』の手法も有効だ。補助手段に映像も使うが、本物の持つ力にはかなわないのだから」と鷲塚氏は、国博の「現物主義」を強調する。
東京国立博物館からの貸与などもふくめ、展示品の選定は大詰めを迎えているとみられる。だが館のイメージを決める中身の話はもちろん、文化庁の専門家会議での方向性や議論の過程も、地元には伝わってこない。
◇研究を公募で◇
「これまで具体的方針は何も示さず、急に『インフォメーションと教育解説は市民ボランティアで』って、官の側から一方的に言われても…」
博物館設置を支援するため、啓発や募金活動に取り組んできた九州国博設置促進財団の前田利輔事務局長は、記念シンポの後、戸惑いと不満を隠さなかった。
「この不況下、六百余りの企業と七万五千人を超す人々が十五億円に上る寄付金を寄せてくれた。そこに込められた市民の思いを、文化庁はどう受け止めているのか」
国と地域が連携し博物館の活動、管理運営にあたることは、館の基本理念に示されている。
「例えば、博物館の研究テーマを市民から公募し、専門家と共同で研究する。その成果は市民に還元されるというように真に、生きた、開かれた博物館の運営を具体的に話し合う時期が既に来ていると思うのです」
◇出発点が違う◇
「情報化、国際化、学際化を具体化し、市民の目線にどう下りてこれるかが課題。これまでの日本の博物館づくりになかった新たな歴史が始まる」(三輪嘉六・九州国博設立準備室長)。「募金など、市民が支えるという出発点自体が今までと違う。支援は惜しまない」(野崎弘・独立行政法人国立博物館理事長、東京国立博物館長)と、新しい博物館像への意気込みの声は聞かれる。
「市民参加をどこで線引きするのか、国の方針とも絡み、作業、検討はこれから」と赤司善彦・福岡県国立博物館対策室学芸係長。理念を市民と共有し、「生きた博物館」に具現化するためにも、国・自治体・地域の対話と、より柔軟な連携を実現するシステムづくりを急がなくてはならない。
(この連載は文化部、地域報道センターの九州国博取材班が担当しました)