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'05/12/21 朝刊掲載】
            交流の道・中国 美の十字路展=溶け合う異民族
胡服が語る夢の跡 敦煌研究院・樊錦詩院長に聞く

 ■九州国立博物館 since’05■

 「中国 美の十字路」展には中国の国宝級の文物が多数出品されるが、なかでも敦煌研究院から出品される北魏時代の「供養人物図刺繍(ししゅう) 絹」は注目の逸品だ。同院の樊錦詩(はんきんし)院長にその特徴や本展の意義などを聞いた。 (文化部・内門博)

 「供養人物図刺繍」は一見ぼろぼろですが、非常に精美で貴重な情報が詰まったものです。

 発見されたのは、莫高窟(ばっこうくつ)一二五―一二六窟前の岩石のひびの中。欠損が激しいため、推測に頼る部分が多いのですが、釈迦(しゃか)説法図が刺繍されています。説法図の部分は大半が失われていますが、蓮花座に赤い衣の釈迦が坐し、その左に菩薩(ぼさつ)が立っているのが分かると思います。その下に発願文と供養者像があり、発願文を中央に左右に供養者が配列されています。発願文の内容から、北魏の太和十一(四八七)年に広陽王元嘉が施主となり、製作された刺繍と推察されます。

 注目すべきは、供養者たちの服装で、漢民族のものではないのです。北魏のルーツは鮮卑ですが、これは胡服(周辺民族の服)です。北魏は漢化政策を採用し、服装も漢民族のものに改めるのですが、これはその前のものでしょう。敦煌莫高窟の壁画には、ほかにこのような服装は見当たらず、説法図の構造などとも勘案すると北魏時代の雲崗石窟(うんこうせっくつ)と似ています。

 従って、この刺繍は当時、北魏の都があった平城(現在の山西省大同)辺りから誰かが持ち込んだもので、周辺民族と漢文化の融和の過程が見える貴重な資料といえるでしょう。仏教芸術はもちろん、刺繍の発展史研究にも価値あるものです。

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 最近、中国ではソグド人をはじめ周辺民族が文化の興隆に重要な役割を果たしたことを示す資料が続々と出土しています。今回、敦煌からの出品は一点だけですが、「美の十字路」展は各地から一級品が多数集まった素晴らしい展示会です。どの展示物からも異文化交流の足跡がうかがえるでしょう。

 今回の展覧会と直接は関係ありませんが、莫高窟の遺跡の壁画や仏像は、日本の飛鳥から奈良時代にかけてのものと非常に似ています。敦煌に西域から伝わった文化が、長安や洛陽を経由し、遣隋使、遣唐使をはじめ、さまざまなルートを経て日本に入ったのです。少数周辺民族の関与も小さくはないでしょう。

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 オープンしたばかりの九州国立博物館は文化財の保存修復に力を入れていると聞きました。敦煌と日本は自然条件が違う面がありますが、世界のどこであれ、古代遺跡があるところに保存修復の課題はつきもの。共有できる技術的な課題もあるでしょう。九州国博と、今後何らかの交流ができればとも思っています。

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 ▼敦煌研究院・樊錦詩院長  一九三八年、北京生まれ。北京大卒後、敦煌文物研究所(現敦煌研究院)に入所。考古組長、副所長、副院長を経て現職。中国敦煌石窟保護研究基金会副理事長などを兼任

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 ●女俑(じょよう) 泥塑に加彩木、絹、紙

 唐(618―907)7世紀、高さ29.5センチ。新疆ウイグル自治区トルファン市出土。切れ長の目、紅色の唇など化粧が色鮮やかに残る。スカートをはき、ショールを肩から掛けるなどの衣装も美しい。唐代の女性の間で流行したファッションを伝える。同自治区博物館所蔵。

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 ●一角獣(いっかくじゅう) 加彩木

 後漢(25―220)高さ42センチ、長さ89センチ。甘粛省武威市出土。体は犬のようにも見えるが、頭に描かれたしま模様はたてがみのようでもある。同省博物館所蔵。

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 ●羊樹文錦(ようじゅもんにしき) 絹

 高昌(5―6世紀)、長さ24センチ、幅21センチ。新疆ウイグル自治区トルファン市出土。上段には小枝をくわえ対面する鳥、中段には大きな木、下段にはヤギが脚を折って対面している。同自治区博物館所蔵。

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 ●帯華蓋仏坐像(たいかがいぶつざぞう) 銅に鍍金

 五胡十六国の4世紀、高さ21.4センチ。河北省出土。最も初期の金銅仏で、金もよく残って輝きを放っている。傘蓋や四脚台がそろっている。同省博物館所蔵。

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 ●獣面鎮墓獣(じゅうめんちんぼじゅう) 加彩塑像、木

 唐(618―907)、7世紀、高さ75センチ。新疆ウイグル自治区トルファン市出土。邪気を払い、墓を守るために置かれた想像上の動物像。牛のような足を持ち、頭部に1本、両肩に2本ずつの剣状の飾りがある。同自治区博物館所蔵。


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供養人物図刺繍(くようじんぶつずししゅう) 絹

女俑(じょよう) 泥塑に加彩木、絹、紙

一角獣(いっかくじゅう) 加彩木
羊樹文錦(ようじゅもんにしき) 絹
帯華蓋仏坐像(たいかがいぶつざぞう) 銅に鍍金
獣面鎮墓獣(じゅうめんちんぼじゅう) 加彩木