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褒めること、スコセッシに学んだ 映画「沈黙-サイレンス-」に出演 塚本晋也さん

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 日本を代表する映画監督、塚本晋也さんは「シン・ゴジラ」などでの個性的な演技で名脇役としても活躍している。遠藤周作さんの原作を映画化したマーティン・スコセッシ監督の「沈黙-サイレンス-」(21日公開)でも、隠れキリシタンのモキチ役を演じた。長年の「スコセッシ信者」で、自身も監督として粘り強く時間をかけて大岡昇平さんの小説「野火」を映画化したことがある塚本さんは、米国映画の巨匠の撮影現場から何を学んだのか。

 -スコセッシ作品にはやはり出演したかったですか?

 ★塚本 それはもう高校生の時に「タクシードライバー」を見て以来のファンですから。存命の監督の中では一番好きで尊敬している監督。ほぼ全作を見てきた。特に「タクシードライバー」はことあるごとに見て毎回新しい発見がある。スコセッシ作品のオーディションに挑戦するか、と言われて「やらない」という返事があるはずがない。出演が決まってからは、最高級に力を入れて挑みました。

 -でも、本格的に製作が動きだすまでには時間もかかりました。

 ★塚本 確か最初に出演の話が内々に決まったのは2009年ごろでした。一体いつ作るんだろうとやきもきしました。監督が別の作品の製作に入ったという話を聞く度にずっこけていました。自分の配役も無くなるのではないかと心配だった。オーディションでの監督とのセッション(やりとり)が素晴らしい体験だったんで、もう出演できなくてもしょうがないかなとあきらめかけた時期もあったぐらい。その間に、古本屋で遠藤さんのサイン本を見つけたことがあって、それを監督に送ったこともあります。モキチが賛美歌を歌うシーンは、脚本ではト書きに書いてあるだけだったんで、「これ実際に歌った方がいいと思います」ってメッセージを付けて送ると、監督からは「その案はいいね」って返事が来ました。「いいね」って書いてあるってことは俺はまだ役を降ろされてないぞ、ってそれで確認ができて喜んだりもして(笑)。

 -その時期に、わざわざ長崎にも足を運ばれたそうですね。

 ★塚本 東京にいても不安感があったんで、「沈黙」に近づくために、そこにスコセッシ監督がいるわけでもないのに勢いで来てしまいました。遠藤周作文学館とか教会とか「沈黙」にまつわる場所を回りました。海など風景の美しさが印象に残りました。

 -塚本さん自身も時間をかけて「野火」を映画化されましたが、「沈黙」に対する監督の執念を感じましたか?

 ★塚本 映画化に時間がかかったことはもちろん、両方とも日本の戦後を代表する重要な作家の作品で、非常に重たいテーマであることも共通するので共感しました。作品規模は1万倍ぐらい違いますけど(笑)。

 -水磔(すいたく、罪人をはりつけにし、潮が満ちると溺死させる処刑法)のシーンの撮影は苦労しましたか?

 ★塚本 怖かったですね。干潮時は海岸に十字架を立てて撮影しているんですが、顔まで波が来るようなシーンは本当の海だと危険なので、プールで撮影して背景の岩肌などをCG合成しているんです。台湾ロケをスコセッシ監督に薦めたのはアン・リー監督なんですが、プールは彼の作品「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」の海のシーンを撮影したのと同じ場所なんです。僕は映画監督なのにどう撮っているのか分からないぐらいCG合成部分が自然に画面になじんでいて、海で撮影しているようにしか見えませんでした。ただ、波がざぶんと来ると必ず鼻に水が入ってせきこんでしまう。次の波までにちゃんとセリフをしゃべるのが大変でした。演技ではなく、本当に恐怖にかられながらの撮影でした。

 -同じ監督としてスコセッシ監督に学んだことはありますか?

 ★塚本 必ず褒めることですね。OKと言ってしまえば、褒めたことも含まれると僕はこれまで思っていた。監督は一人一人の俳優にグッド、エクセレントって言うんですよね。僕はOKと言った後に俳優の演技は良くても、「今の音はちゃんと録れたかな」と心配な顔をつい見せてしまうこともある。俳優はさぞかし不安だったろうと反省しました。シンプルだけどそれが一番勉強になりました。

 ▼つかもと・しんや 1960年1月1日生まれ、東京都出身。87年「電柱小僧の冒険」でPFFグランプリ受賞。89年「鉄男」で劇場映画デビューと同時に、ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。主な監督作は「東京フィスト」「バレット・バレエ」「野火」など。


=2017/01/15付 西日本新聞朝刊=

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