失敗しない人生はだめでしょ 「ラストコップTHE MOVIE」主演 唐沢 寿明さん

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 ドイツの人気作品をリメークしたコメディータッチの刑事ドラマ「ラストコップ」。昨年秋のテレビシリーズに続き、映画版「THE MOVIE」が上映中です。30年の昏睡(こんすい)状態から目覚め、草食系の若手刑事と凸凹コンビを組む昭和の熱血刑事を演じた唐沢寿明さんを“逮捕”しました。

 -ドラマではブルース・リーの衣装を着たりしていました。楽しい撮影でしたか?

 ★唐沢 あれは単純にファンだったから譲れない。個人の趣味を作品に入れ込むことはOKですよ。楽しんでやるからこそ見ている人も楽しめる、というかね。人間って最終的には笑っていれば何とかなるんじゃないですか。すべてにおいて笑えなくなったらやばい。だから、これを見て笑い飛ばしてほしいですね。

 -アクションシーンは本格的ですね。

 ★唐沢 跳んだりとか結構しんどいんですよ。筋力が落ちてきているので。本気を出せ、というなら3カ月あればかなりできますよ。でも、俳優がそんなこといつまでやっていてもしょうがないだろう、って(笑)。

 -コンビを組む若手刑事役の窪田(正孝)さんとの殴り合いは本気に見えました。

 ★唐沢 窪田もなかなかです。普通の演技もうまいし。ちゃんと慣れているというか。まあ、危ない時は言いますけどね。「こういう風にやった方がいい」とか。自分は若いころからずっとアクションの経験があるので、殴っているように見えるためにはどうしたらいいか、習ったことを今でもやっているわけで、分かんない人にはそれを教えてあげている。

 -演じられた京極浩介は30年間眠っていた男です。

 ★唐沢 京極って絶対的なヒーローじゃないんですよ。どこか愛すべきところが残っている。世代としては実際の自分と同じ昭和の男ですからね。昭和のおっさんってチャーミングなのに出し方間違えるとうざいおやじになりさがるから(笑)。そこはさじ加減。押しつけると失敗するでしょ。若いやつにも笑ってもらうためにはさじ加減が必要です。

 -映画版のテーマは人工知能(AI)です。

 ★唐沢 実は怖いことなんですよね。なんか(AIは)人のためになるように見せかけて、実は人間は必要じゃないだろう、って方向にいきそうな雰囲気じゃない? 自分の過去も勝手に好きな思い出だけばっかりにできる。それを勘違いして事実だと思い込むやつが出てくる。何よりもコンピューターも完璧じゃないだろうから、セキュリティーを破ったやつが出てきた時が怖い。全てにおいてね。

 -犯人摘発数も多いが誤認逮捕も多い京極は「失敗があるからいい」ということを言います。

 ★唐沢 失敗がないと人間はどうしても成長しない。分かりやすく言うとスポーツ選手は負ける時は負けるじゃないですか。でも彼らは失敗したことからまた得るものがある。誰かに負けたことがある人間しかだめなんですよ、本当は。AIの指示によって失敗しないように人生を歩む。それではだめでしょ。

 ただ、このままばーっといったら戦争になりますよ、というのが分かればいいよね。まあ、使い方によるのかな。

 -テレビドラマは最終回に生放送を交え、映画では10パターンのエンディング映像をランダムで入れ替えながら上映。「ラストコップ」は登場人物だけでなく作品自体が型破りな物語ですね。

 ★唐沢 ドラマではあれだけ稽古したのに、本番で間違って(笑)。みんな絶望的になり、誰かになすりつけて終わっちゃいました。映画のエンドはどれもスタッフが命がけで作ったものです。それをお客さんからしたら1本しか見られない。違うものを見たければ、また映画館に行くしかない。ただ、10回足を運んで見たいやつはないかもしれない。あり地獄のような企画です(笑)。

 ▼からさわ・としあき 1963年6月3日生まれ、東京都出身。87年に舞台「ボーイズレビュー・ステイゴールド」でデビュー後、NHK大河ドラマ「利家とまつ」(2002年)、映画「20世紀少年」シリーズ(08、09年)など数々の作品に出演。「ラストコップ」は15年のテレビスペシャルをスタートに、ネットオリジナルドラマも作られた。


=2017/05/07付 西日本新聞朝刊=

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