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違う銀河がたくさんあることが分かった 今年初防衛を果たした 将棋の第75期名人 佐藤天彦さん

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 ニックネームは「貴族」。将棋界で最も歴史のあるタイトルを持つ佐藤天彦名人は棋界随一のおしゃれ。昔の“将棋指し”のイメージとはかけ離れているが、話す内容は至極真面目で将棋に向かう姿勢はまさに勝負師。福岡市出身の若きトップ棋士に、コンピューター将棋ソフトの驚異的な進化や、ファッションのことなど、もろもろのことを尋ねました。

 -今年、佐藤名人が電王戦で最強ソフト「ポナンザ」に2連敗する衝撃的な出来事がありました。一方で、名人戦7番勝負では初防衛を果たすことができた。

 ★佐藤 この1年、将棋の内容について新しいものを追究してきました。電王戦の影響もあったし、名人戦7番勝負では結果を出すことができたと思います。

 -電王戦の後、将棋の世界の変化を宇宙になぞらえましたね。

 ★佐藤 ええ。今まで太陽系くらいの広さで考えていたのが、もっと圧倒的に広い宇宙があることが分かったというような…。全然違う銀河がたくさんあることが分かったという感覚です。

 -人工知能(AI)によって、将棋そのものがさらに進化、深化していくのでしょうか。

 ★佐藤 コンピューターは人間の先入観みたいなものがなくて、まっさらな感覚でいろいろな手を示してくる。ここ1年くらいの間に、プロ棋士の戦法面での変化がかなり出てきています。

 -今ではプロ棋士がソフトを研究に使うのも当たり前だとか。

 ★佐藤 私も使っています。全く考えていなかった手を指摘されることもある。ただ、コンピューターを導入すれば強くなるかというと、そんなに単純ではない。将棋は多様化、複雑化の一途をたどっているのかもしれません。

 -藤井聡太四段の史上最年少プロデビューと29連勝の新記録達成も大きな話題になりました。

 ★佐藤 藤井四段はあの年齢(15歳)にしては将棋が非常にしっかりしている。29連勝は、運といえばそれまでですが、実力があってこそのことだと思います。

 -棋士仲間から付けられたニックネームが「貴族」。そう呼ばれるのは嫌じゃないですか。

 ★佐藤 いやいや、嫌じゃないです(笑)。こんなに世間に知られるとは思っていませんでしたが…。

 -どんなブランドが好き?

 ★佐藤 アン・ドゥムルメステールというベルギーのデザイナーが好きで、20代前半から買い始めて、全部で100点くらい持っています。

 -ファッションにこだわるのはなぜ?

 ★佐藤 ルネサンス風とか、ロココ調のものとか、ファッションに限らず、西洋の近世のものが好きなんです。

 -そういえばクラシック音楽も趣味だとか。

 ★佐藤 バロック音楽のバッハ、ヘンデルとか、フランスのラモーとか。その時代だけではなく、ベートーベン、ブラームス、マーラーとかも聴きますね。

 -将棋にどんなプラスの効果があるんでしょう。

 ★佐藤 気に入ったブランドの衣服を身に着けるのも、クラシック音楽を聴くのも、気持ちが落ち着いたり、盛り上がったりしますね。

 -福岡市の草ケ江小、城西中を卒業して、千葉県の高校に進学。小学5年でプロ棋士養成機関の奨励会に入ってからは将棋漬けの日々だったと思いますが、どんな少年時代だったんですか。

 ★佐藤 全く将棋中心でした。小学生の時も、放課後はそのまま近くにある将棋道場に通っていました。そこで出会った友達は今でも付き合いがあります。駄菓子屋に行ったり、近くの公園で遊んだりしたのも良い思い出です。

 -故郷・福岡が名人の基礎を築いてくれた?

 ★佐藤 福岡には良い所がいっぱいあるのに、将棋にのめり込んでいて、子どもの頃は行動範囲も限られているので何も知らなかったんです。プロ棋士になって福岡に帰る機会が増えて、見えていなかったものが見えるようになった。育ててくれた故郷に改めて感謝の気持ちが湧いています。

 ▼さとう・あまひこ 1988年1月16日福岡市生まれ。小学5年の時、プロ棋士養成機関の奨励会入り。2006年10月、四段プロデビュー。15年、順位戦A級に昇級、八段に昇段。王座戦と棋王戦の挑戦者になったが敗退。昨年、名人戦で羽生善治名人(当時)から自身初のタイトルを奪取。今年、稲葉陽八段の挑戦を退け初防衛した。


=2017/11/12付 西日本新聞朝刊=

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