愛って、にじみ出てくる感覚 映画「嘘を愛する女」ヒロイン 長沢まさみさん

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 5年も一緒に暮らしてきた恋人の素性が何もかも嘘(うそ)だったとしたら。公開中の映画「嘘を愛する女」のヒロインを繊細に演じた長沢まさみさん。恋愛物語を演じる上で大切にしていること、「飛ぶ鳥を落とす勢い」の共演者のこと、ゆったりと、ざっくばらんに語ってくれました。

 -くも膜下出血で倒れた恋人(高橋一生)が名前や職業、すべてを偽っていたことを知り、その「嘘」に葛藤しながらも真実を追うキャリアウーマン由加利を演じました。描きすぎず語りすぎず、余白がある丁寧なラブストーリーでした。

 ★長沢 何かが起こるようで何も起こらない、淡々としたカップルの日常の物語ですよね。最初に脚本を読んで、等身大にぴったりはまる作品だなって。決定稿はもっとそぎ落とされていて、多く語るのをやめた、って感じで。今どき珍しい作品だと思います。

 -「嘘」を探る過程、彼は意識不明のまま病院にいて、一人芝居のような状況で「愛」を見せていく演技が細やかでした。

 ★長沢 恋愛ものを10代から演じてきてるから、その経験が生きたのかな。ラブストーリーは相手を本気で好きになれないとだめだってつくづく思う。今回はとにかく高橋さんを好きになる。去年の「散歩する侵略者」も松田龍平さんを本当に好きになるぞって。そのやり方しか私はやれない。テレビで女優さんが「あのとき本当に好きでした」ってよく言いますけど、それは正解だなと年々思うようになりました。

 -本当に好きになる、って大変な仕事ですね。

 ★長沢 人を愛するって、にじみ出てくる感覚ですよね。愛っていうものは目に見えないし、言葉で言い表せない。空気感や温度を大切にしないとラブストーリーは完成しない気がします。

 -時の人、高橋一生さんと久々の共演でした。

 ★長沢 飛ぶ鳥を落とす勢いってああいう人のことですよね(笑)。

 -役者としての彼のすごさ、どんなところに感じます?

 ★長沢 なんか、(部屋の隅を指さしながら)「あ、いた!」みたいな感じですかね。

 -ん? え?

 ★長沢 場にいつの間にか居るすごさ。お芝居のテクニックもすごい人ですけど、その場に溶け込むのが上手。10年居たようななじみ方って、簡単には習得できない。私は昔から挙動不審って言われてきたし、緊張しいなんで。あと、親戚にいそうな感じ(笑)。すごいなあって思う俳優さんは親戚にいそうなんです。小栗旬君も妻夫木(聡)さんも。親近感、とはちょっと違う、なじみ感っていうのかな。

 -是枝裕和さんや黒沢清さんの映画での好演やミュージカルの主演など、最近は俳優としての幅が広がっている印象です。

 ★長沢 映画「岳‐ガク‐」(2011年)のころ、無理だなこの仕事は、って思ったこともあったんです。感覚的なことですけど。私、この世界には向いてないタイプなんですよ。性格的には。

 -でも粘ったんですね。

 ★長沢 仕事にしちゃったし、究めてもいないのに頑張らなきゃって。当時23歳くらい、同級生が社会に出るころで。これから社会人1年目か、私はけっこう疲れたなあって。でも「岳」をやりきって「モテキ」が続いて。「岳」で山に登って頑張った経験が生きてるのかな。まあ、人生はバイオリズムだと思ってるので。

 -波の繰り返し、ですね。

 ★長沢 波があるからこそその先が見えてくる。人気商売だし、どんなに良い芝居でも見てもらえないと意味がない。シビアな世界です。でも私は良い運と出合う確率が高いんです。

 -30代が始まりました。

 ★長沢 楽しいです、今。体も動くし、眠くないし。精神的にも落ち着いてる。20代って覚える時期だったんだって思います。

 -60歳の自分、想像できます?

 ★長沢 変わんないと思います。洋服と一緒で体は使えば古びるけど、感覚や精神は変わんないはず。ハタチになったときも30になったときも「あ、こんなもんか」って思ったから、たぶんそれが続いていくんだと思います。

 ▼ながさわ・まさみ 1987年6月3日生まれ。静岡県出身。2000年に「第5回東宝シンデレラ」でグランプリを受賞し、デビュー。映画の主な出演作に「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年)「モテキ」(11年)「銀魂」(17年)「散歩する侵略者」(同)など。4月からフジテレビ系の月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」に主演する。


=2018/01/21付 西日本新聞朝刊=

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