「キミスイ」作者の新作!「夜」と「昼」を往復しながら、本当の自分と出会う物語

よるのばけもの 住野よる著
よるのばけもの 住野よる著
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 『君の膵臓をたべたい』『また、同じ夢を見ていた』と、デビューから二作連続でベストセラーを叩き出した著者が放つ、大注目の三作目が本書だ。舞台は主人公「あっちー」が通う中学校。だが、話は「昼」だけではない。「夜」の学校生活も綴られている。ちょっと待て、「夜」の学校生活とは何だ?実は主人公は、夜になると「化け物」になるのだ。

 「夜」、主人公の体は全身が真っ黒になり、足が六つに、目玉は八つになる。しかも空を飛ぶことができ、大きさも自由自在に変えられる。

 まるで、カフカの『変身』だ。あの小説では主人公は毒虫に変身し、家族から忌み嫌われ、絶望の中で死んでいった。しかし、本作のあっちーは変わり果てた自分の姿を見たとき、初めは驚いたものの、慣れたら「ゲームのモンスターみたいなもんだ」と簡単に受け入れる。それどころか、飛行能力や変身能力を思う存分楽しむポジティブ思考。そして、朝を迎える頃には、自然と人間の姿に戻っている。おかげで、誰にも化け物になったことを知られることなく日常生活を送ることができている。

 ある日の夜、宿題を置き忘れたことを思い出し、化け物の姿で学校に忍び込むことに。誰もいない、と思っていた夜の教室。ところが、そこにはなぜかクラスメイトの「矢野さつき」がいたのだ。お互い、仰天するほどびっくり!ところが矢野は、化け物に向かって「あっちー、くんだよ、ね」と声をかける。「どうして、僕だと?」さらに驚く主人公。矢野は普通とはズレまくった不思議系女子。独特の感性が、非日常を受け入れてしまったようである。「このことは誰にも言わないから、また明日の夜も教室にきてよ」、そんな態度を取る矢野に仕方なく従うあっちー。化け物がしゅんとなる様子がおかしい。こうして二人の非日常の「夜」が始まった。

 そして、「昼」の日常生活。実は矢野はクラス全員からイジメの対象になっていた。当然、主人公も矢野とは話をしない。ただ、これは矢野がクラスメイトにひどい仕打ちをしたことが原因になっている。

 そして、また「夜」になり、化け物と女子の奇妙な交流が続く。「夜」と「昼」を繰り返す度に、主人公の心もいつしか変わっていく。「奇抜すぎるほど奇抜な設定」なのに、「身近すぎるほど身近なテーマ」は著者の本領発揮といったところ。本来混じり合うはずがないモノが、違和感なく同居している世界観に酔いしれてほしい。


出版社:双葉社
書名:よるのばけもの
著者名:住野よる
定価(税込):1,512円
税別価格:1,400円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-24007-8.html


西日本新聞 読書案内編集部

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