西日本新聞電子版 1周年記念プレゼント

IQ161以上。戸籍を持たない天才少年の運命を鮮烈に描く物語

神の子(上) 薬丸岳著
神の子(上) 薬丸岳著
写真を見る
神の子(下)薬丸岳著
神の子(下)薬丸岳著
写真を見る

 戸籍を持たず、義務教育を受けることもなく一人で生きてきた少年。殺人事件を起こし少年院に送られた彼は、そこで「町田博史」という名前と戸籍を与えられる。入所時の知能検査でIQ161を超える頭脳の持ち主であることがわかった博史。親の保護を受けられずに育ち、並外れた頭脳だけを頼りに生きてきた少年は「生き残るためには手段を選ばない」と笑う。だが、運命は予想を超えて意外な方向に流れていく。

 コンピュータのごとく、一度読んだ書物を即座にインプットできる博史は、生きるために必要な知識を本から得てきた。他人に興味がなく、人のためには動かないという博史だったが、あることをきっかけに二人の少年とともに少年院を脱走する。しかしそこには思いもよらない結末が待ち受ける。少年院に入る前から博史の能力に気づいていた闇の組織を動かす謎の人物・室井が執拗なほどに博史を求め、彼の運命を翻弄していくのだ。

 少年犯罪の過去と巨大な闇の組織とのはざまで博史はどう生きていくのか。読み進めるほどに予想とは違う展開に転がり、ページを繰る手が止まらない。後半に登場するのは、博史の身元引受人となった町工場の母娘、御曹司でありながらコンプレックスを抱える為井、奇想天外な発明家の繁村といった、裏世界とは無縁の人たちである。大学生となった博史の新しい生活、学生たちと立ち上げる会社。誰の心も近づけようとしない博史が望むのは、闇のなかで生きることなのか、それとも・・・。そして、彼の能力を放ってはおかないもう一人の天才、室井の存在が立ちはだかり、さらに思いがけない展開へとつながっていく。

 少年院で博史の担当となった教官は、頭だけで生き残ると言う彼に、「生きるために何をするかを考えるのは頭だが、何のために生きるのかを決めるのはあくまでも心なのだ」と懸念を抱く。人の痛みも自分の痛みも理解できず、人として大切な感情が欠落している博史の「虚無」の心に変化は訪れるのか。

 本作は、戸籍を与えられなかった不遇な少年、犯罪組織といったやや重めの題材であるが、登場人物それぞれがじつに魅力的で、共感を覚えながら読み進んだ。博史と室井の天才同士の仕掛け合い、博史の冷ややかな言動の裏にある真意を読み取る楽しさで最後までぐいぐいと引き込まれる。圧巻のストーリー展開とともに、人の心を形づくるものとは何かを描いた本作の面白さをぜひ味わってほしい。


出版社:光文社
書名:神の子(上)、(下)
著者名:薬丸岳
定価(税込):各950円
税別価格:各880円
リンク先:http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334773915

西日本新聞 読書案内編集部

→電子版1周年記念!1万円分賞品券やQUOカードが当たる!!

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]