西日本新聞電子版 1周年記念プレゼント

江戸絵画に詳しくない人も実物が見たくなる美術館ガイド

作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇 金子信久著
作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇 金子信久著
写真を見る

 タイトルに「美術館ガイド」とあるが、その言葉からイメージされる同種の本とは趣がちがう。「あの名画に会える」とついているように、絵画の方が主役である。美術館については巻末にデータの一覧があって、開館時間や休館日が載っているだけだ。URLが記されているので、美術館の情報が知りたければ、そちらで間に合う。

 本書は「江戸絵画編」となっていて、画家単位で五十音順にずらっと絵がならべられている。したがって、
「テレビで見た伊藤若冲の絵、どこに行ったら、本物が見られるんだろう」
といったときに、役立つ本になっている。

 江戸絵画というと、近年ブームの若冲の細密な画や昔から有名な国芳のユーモラスな作品を思い浮かべる人が多いだろう。あるいは、広重や北斎などの浮世絵。だが、それ以外となると、受験勉強のときに名前だけ覚えて、どんな絵を描くかまではハッキリわかっていない人も多いにちがいない。ましてや、現代人になじみのない画家の作品となると尚更だ。

 そういう意味で、本書は美術館に行く前に、そもそも、江戸絵画をよく知らない読者が「名画に会える」本となっている。著者が「はじめに」でふれているように、江戸絵画というのは、近代西洋絵画の影響を受けていない絵だ。そういう観点で本書をながめるだけでもおもしろい。

 と言いつつ、最初に収められている亜欧堂田善は西洋絵画に学びはじめた時期の洋風画家なのだが、その「両国図」はトップバッターにふさわしいインパクトをもっている。中央に配置された力士は着物を着ていて、これから女を連れて舟遊びに出るところらしいのだが、化け物じみた表情をしている。両国橋を背景に描かれた人々の姿は風俗的に見ても興味深いし、なかには現代のマンガに出てきそうな顔もある。現代の両国橋の景色と比較しても楽しいだろう。

 また、解説文も充実している。当時は油絵の具をえごま油や唐辛子を用いて自作していたなど、雑学エピソードも満載だ。

 収録作品も工夫されていて、北斎なら取り上げられる機会が少ない肉筆画が紹介されている。「西瓜図」の布越しの西瓜を見れば、
「どうやって描かれているんだろう」
と美術館に出かけていって、実物を確かめてみたい気にもなる。


出版社:講談社
書名:作家別 あの名画に会える美術館ガイド 江戸絵画篇
著者名:金子信久
定価(税込):2,592円
リンク先:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062180535


西日本新聞 読書案内編集部

→電子版1周年記念!1万円分賞品券やQUOカードが当たる!!

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]