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挫折だらけのひとりの女性を救った「アイドル・SMAPの存在意義」

SMAPと、とあるファンの物語 乗田綾子著
SMAPと、とあるファンの物語 乗田綾子著
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 2016年12月31日。除夜の鐘の始まりとともに、日本全国が嘆きの声に包まれた。国民的アイドルグループのSMAPが解散したのだ。

解散の日に至るまで、CD購買運動や大規模な署名運動など、社会現象を巻き起こし続けたSMAP。なぜひとつのアイドルグループが、それほど人々に愛され、28年もの長きにわたってエンターテイメントの第一線で活躍することができたのか? その理由をたどるように、SMAPの軌跡が語り手である「わたし」の人生とリンクしながら描かれていく。

SMAPは当初、とにかく運に恵まれなかった。「ポスト光GENJI」と目されながらシングルは売れず、歌番組は次々終了。コンサートでは雨やトラブルに見舞われ、万全のパフォーマンスで臨めない。そんな寒風吹きすさぶ「アイドル冬の時代」にありながら、SMAPは、「バラエティ班」「ドラマ班」に分かれてそれぞれの個性と才能を活かし、人気を獲得してきた。

一方、「わたし」は転校を繰り返し、居場所を見つけられないまま就職。しかしうつを患い、社会復帰にも時間がかかってしまう。そんな彼女を節目節目で救ったのが、SMAPやモーニング娘。といったアイドルの存在だ。小学6年生の頃初めてSMAPのコンサートに行き、メンバーが目を見て手を振ってくれた時の衝撃と感動が、紙面を震わせる勢いで伝わってくる。

本書の帯には、「学者や評論家では到達できなかった”アイドル文学”の金字塔」と書かれている。その通りだろう。しかしそれ以上に、本書はSMAPをはじめ、アイドルを見つめ続けてきたひとりの女性による回顧録であり、謝辞であり、はなむけであり、心を揺さぶるラブレターのように思える。なまはんかな愛情では、この本を執筆することはできないだろう。

正直に申し上げると、筆者はアイドルにちっとも詳しくない。SMAPについても、「ああ、TVでよく見る人気グループね」程度の、人並み……いや人以下の興味と知識しかなかった。だが、そんな門外漢でも本書を読むと、SMAPがいかにプロ意識を持って「アイドル」という仕事に挑んできたか、華やかなイメージの裏で、いかにメンバーやスタッフを大切にし、人間として成長を遂げてきたかが分かる。そしてファンが、彼らのそんな姿にどれだけ勇気づけられてきたかも。

本書を読了すると、TVの中のアイドルが、ぐっと身近に感じられるだろう。


出版社:双葉社
書名:SMAPと、とあるファンの物語
著者名:乗田綾子
定価(税込):1,620円
リンク先:http://www.futabasha.co.jp/booksdb/smp/book/bookview/978-4-575-31302-4.html?&mode=3


西日本新聞 読書案内編集部

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