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じゃじゃ馬ヒロインが銀行を舞台に活躍する人気シリーズ、13年ぶりの新作

花咲舞が黙ってない 池井戸 潤著
花咲舞が黙ってない 池井戸 潤著
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 時はバブル崩壊後の日本。生き残りを賭けた合併交渉に揺れる東京第一銀行で、融資先の違法行為や暴力団とのつながりといった大スキャンダルが発覚する。このタイミングでの不祥事は命取りとばかりに隠ぺい工作に走る東京第一銀行上層部だったが、それにNОを唱える女子行員が現れた。その名は、花咲舞――。

 本書は、『不祥事』に続く「花咲舞」シリーズの連作短編集だ。「花咲舞」シリーズはドラマ化、コミカライズされた、池井戸潤氏の人気作品。ファンが待ち焦がれた13年ぶりの新作とあって、話題性も抜群だ。

 主人公の花咲舞は東京第一銀行の事務部臨店指導グループに所属する元・テラー(窓口担当者)。臨店指導グループとは、問題のある支店へ直接出向いて業務改善を指導する部署を指す。その業務内容に加え、他の部署に比べて閑職扱いされている臨店指導グループは煙たがられることも多い。そんな部署のじゃじゃ馬社員である舞は、書類の日付や通帳に記載された名前など、ほんの小さな謎から巧妙に隠された犯罪や組織の陰謀を明らかにする。突っ走る舞にのべつまくなし振り回される、上司兼相棒の相馬健とのやりとりも読んでいて楽しい。

 舞が行員や経営者を相手取り、「そんなの間違ってます!」と喝破する様には、ミステリー小説で名探偵が犯人をやり込めるような爽快感を覚える。とはいえ、大銀行の社員である以上、いかに真実を暴いたとて正義を貫けるわけではない。むしろ、上から隠ぺいを指示され、のまざるを得ないことがほとんどだ。そんな時、「オレたちは組織の歯車なんだよ」とクダを巻く相馬に対し、「だけど、歯車には歯車のプライドってものがあるんですよ」と言ってのける舞にハッとさせられる読者も多いのではないだろうか。組織の中で生きるが故の苦悩には、誰しも思い当たる節があるだろう。

 最後に、本書には隠れた見どころがもうひとつある。それは食事シーンだ。舞と相馬は臨店指導に赴いたついでに食事を楽しむことが多いが、その描写の上手いこと上手いこと。ビールにつくね、白魚……。どれもこれも美味しそうで、料理に舌鼓を打っている二人が羨ましくなる。食欲と読書欲の両方をかき立てる、極上のエンターテイメントを味わっていただきたい。


出版社:中央公論新社
書名:花咲舞が黙ってない
著者名:池井戸 潤
定価(税込):799円
税別価格:740円
リンク先:http://www.chuko.co.jp/special/hanasaki/

西日本新聞 読書案内編集部

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