名将ノムさんが見抜いた、二刀流・大谷が“突き抜け”られた理由

『番狂わせの起こし方』野村克也著
『番狂わせの起こし方』野村克也著
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 野村克也といっても、若い人には少し伝わりにい名前になってしまったかもしれない。比較的新しい記憶としては、マー君こと田中将大投手がいた楽天イーグルスの監督か。スポーツ以外のテレビ番組でもたまに見かけるボヤいてばかりのおじいさん。

 しかし、その人生をふり返れば、貧しい母子家庭に育ち、親を楽させてやりたいとプロ野球選手を目指し、無名の高校からテスト生として南海ホークスに入団できたものの、レギュラーからは程遠い……というところからスタートした昭和の立身出世物語の主人公である。年間最多本塁打数も通算本塁打数も、王貞治が塗り替えるまで記録をもっていたのは野村なのだ。キャッチャーとしても優れ、王貞治を30打席連続でノーヒットに抑えている。そして、45歳まで現役だった。

 もっとも、のちに講演や執筆活動にひっぱりだことなったのは、監督としての実績も大きい。ヤクルト、阪神、楽天と就任時は弱小だったチームを優勝できるチームに変えていった。それまで根性論が支配的だった野球界にデータと理論を持ち込んだ立役者でもある。

 そうした数々の実績をもつ男が『BIG tomorrow』でサラリーマン向けに連載していた内容をまとめたのが本書『番狂わせの起こし方』だ。野球エリートではなかった小心者がどのようにして努力し、運をつかみ、策を弄し、結果を残してきたかが具体的に語られる。

 たとえば、ヤクルト監督時代の阪神戦。ピンチで当時大活躍していたオマリーを打者に迎えた野村監督はマウンドに向かった。

 「二十数年も監督をしてきたが、試合中、マウンドまで行ったことは二、三度しかない。その貴重な一回がこのときだった」

 その場でなんと言ったかは本文に書いてあるが、たいした内容ではない。にもかかわらず、オマリーは見逃しの三振におわった。それはなぜか? といったことが「法則」として書かれてあるのが本書のミソだ。

 リーダーとして部下をどう率いるかといったノウハウも豊富だが、スランプ脱出法など仕事でカベにブチ当たっている人や若い人にも読んでもらいたい助言がつまっている。野村流人生の指南書といっても過言ではない。


出版社:青春出版社
書名:番狂わせの起こし方
著者名:野村克也
定価(税込):972円
税別価格:900円
リンク先:http://www.seishun.co.jp/book/19833/

 西日本新聞 読書案内編集部

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