「ベールアームは世界を回る」を書いた 国吉昌秀さん
秘密の快楽、図鑑で公開

「このリールを前にビールを飲むのが最高の時間です」
真のコレクターは自分の収集品を絶対に公開しない。どの分野でも収集は秘密の快楽だ。コレクターのタブーを犯して本という形で公開した。「スピニングリールの歴史を世界的な視野でまとめた本がなかったから自分で書こうと思ったんです」
コレクターは優れた研究者でもある。カラー写真を豊富に使った、これまでにない「世界スピニングリール図鑑」ともいえる「大魚」を釣り上げたのだ。タイトルの「ベールアーム」はスピニングリールの特色のリール先端にある糸を巻き取る腕のような装置だ。
1950年、沖縄・那覇に生まれた。少年時代から釣りをしていたがリールに興味はなかった。大学卒業後、1級建築士として大手建設会社に就職。83年からのアメリカ・ロサンゼルス勤務が収集を始める契機になった。
「フリーマーケットのがらくたのなかにリールがあり、それを買い集めるうちに火がつきました。リールの機能美に、美しさに魅(ひ)かれました」
7年間の勤務で必死に英語力を磨き、その語学力が国際ネットオークションでの収集や資料調べに大活躍をする。
現在、釣り人が何げなく使っているスピニングリールは05年、イギリスの毛織物業社のイリングワースが発明した「イリングワースー1」。この原型から模倣や進化が生まれ、欧米、日本とスピニングリールは広がっていく。小さなリールだが、その進化、拡大、普及は近代工業史、経済史と重なり合う。その点をしっかりと詳述しているのも特徴だ。
「爆発的にリールが一般の釣り人に普及するのはやはり戦争の後で、そこには戦争の傷、疲れを癒やすものが釣りにあったと思います」
昨年、社を退職し、現在は韓国の建設会社の顧問としてソウルで勤務。休暇で福岡に帰ったときは釣りを楽しむ。「リールは傷がついたりするので使いません。タイの手釣りが一番好きです」
(編集委員・田代俊一郎)
(つり人社・2100円)
=2008/09/14付 西日本新聞朝刊=
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