西日本新聞

上級職採用ながら警察組織からはみ出した…

2011年06月19日 14:46
 上級職採用ながら警察組織からはみ出した、新宿署刑事鮫島の孤高の戦いを描く大沢在昌著「新宿鮫(しんじゅくざめ)」の最新刊「絆回廊」が出た。長編は10作目でシリーズは2ケタに。単行本は1990年の第1作から20余年続く。平均すると2年1作ペースだが、前作からは5年ぶりでファン待望の新作。

 本筋は紹介できないが、ほんのさわりを-。物語の終盤、あるヤクザが主人公の鮫島につぶやく。「誰だって、ケジメをつけて次にいきたい。その、次が、たとえ地獄だってな」。物語は、新宿を舞台に、犯罪グループ、父と子、上司と部下といった多層的な“父子”関係が、それぞれの絆と過去のケジメをもつれさせながら展開する。

 シリーズ小説には、魅力的な主人公のほかに脇役、あるいは敵役に個性的な人物が付きものだ。「新宿鮫」にも、主人公を支える上司やロック歌手の恋人、同じキャリア組ながら鮫島を憎む男、そして毎回登場する屈強な悪役がいる。今回は常連の一人に過酷な運命が待ち受ける。ちょっと泣けた。読者も長い付き合いなのだ。

 故・池波正太郎著「鬼平」シリーズの長編「五月闇」で常連の密偵もよく似た道をたどったのを思い出した。池波さんが「小説とはいえ登場人物の宿命は作者でもどうしようもないことがある」という発言をしていた。長いシリーズほどそんなことがあるんだろう。

 大沢さんもそんな思いをしただろうか。


=2011/06/19付 西日本新聞朝刊=


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