西日本新聞

千年書房・九州の100冊

[写真]一覧

藤原新也「少年の港」

海峡の街は揺りかごに似て

 1993年。私が門司支局に赴任したとき、北九州市・門司港の街は「死にかけて」いた。次々に解体される赤れんが造りの倉庫群、閉鎖されたままの旧門司税関、老舗デパート山城屋は経営破たん目前だった。かつて九州の玄関口として栄え、本州、そして遠く中国から雑多な人や物資が集まった港町の建物はことごとく寂れ、姿を消そうとしていた。<...

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一ノ瀬泰造「地雷を踏んだらサヨウナラ」

戦火の中で見つけた真実

085_01.jpg 佐賀県武雄市街地を一望する御船山のふもと、武雄川のそばに建つ小さな家を久しぶりに訪ねた。伝説的な報道写真家・一ノ瀬泰造の母、信子さん(85)は足がやや不自由な様子だったが、気丈な人らしく声はしっかりしていた。「お久しぶりですね」と向けてくれた笑顔も昔のまま。手には、見せて頂きたいとお願いしていた泰造のカメラがあ...

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ユージン・スミス アイリーン・スミス「水俣 MINAMATA」

世界へ向けた「告発の書」

 1971年9月7日朝、熊本県水俣市の駅に寝台列車から降り立った夫婦がいた。2人の視線の数十メートル先には、水俣病原因企業チッソの正門がどっしりと構えていた。世界的にも著名な写真家になっていたW・ユージン・スミスは52歳。10日ほど前に結婚したばかりのアイリーン・M・スミスは21歳。3年3カ月に及ぶ水俣での取材生活の幕開け...

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栗林慧「栗林慧全仕事」

 おそらく多くの読者が、どこかで一度は目にしたことがあるはずだ。虫の目線で見たような、迫力満点の虫の写真。通称「虫の目レンズ」で撮影された作品である。
 〈虫=小さな生物〉という固定観念を吹っ飛ばすように圧倒的な存在感を放つ昆虫たちは、まるで恐竜だ。見ているうちに、別世界に迷い込んだような不思議な気持ちになる。実際の虫の目に映る世界は、複眼の構造やその位置から、人間と比べてはるかに視野は広く...

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土門拳「筑豊のこどもたち」

 福岡県筑豊地方の大任町に生まれ育った帆足由紀(30)は一昨年、若手写真家の登竜門の一つとされる富士フォトサロン新人賞を手にした。受賞作は「風景―炭坑の町だった筑豊」。審査員の江成常夫(写真家、九州産業大学大学院教授)は「土門拳さんの名作『筑豊のこどもたち』とどこか通じるものを感じる」と評価した。
 思いがけず巨匠土門の名が出たことに、帆足は喜びの半面、戸惑った。土門のカメラがとらえた半世紀...

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